第12話 女子会

遥とロバートが男同士語り合っている中、先にお風呂に入ったルナとマイヤは気持ち良さそうに湯船に浸かっていた。


二人では多少手狭に感じるとは言っても、この家の風呂はそこそこ広いので二人くらいなら入ってもなんの問題もないのでゆっくりと肩まで浸かって、ため息ついた。


「気持ちいいですね……」

「はい……」


チラリとマイヤは隣のルナに視線を向ける。


真っ白な肌と銀色の髪が湯船に反射して綺麗に輝いてみえる。


同性であるマイヤですらそう感じる程にルナという存在は圧倒的に綺麗だった。


「それにしても……遥さんがあんな顔をしてるの初めてみましたよ」

「あんな顔?」


どの表情だろうとルナは考えるが、真っ先に思い付くのは遥の優しげな微笑みで、その表情を思い出すとルナの頬は自然と緩んだ。


そんなルナの様子を微笑ましげに見つめてマイヤは言った。


「遥さんとは我が主のロバート様と同じく友人としてそれなりに接してきましたが……彼があそこまで女性を優しく見つめるのは初めてみました」

「そう……なんですか?」


いまいち自覚のないルナにマイヤは苦笑気味に言った。


「遥さんはわりと誰にでも親しげに話しかけますが、どこか他人との間に距離をとってるようなんです。親しげに見えても一定の距離を保つ……実際、彼が本当に信頼している人間はかなり少ないんですよ。そんな中であなたのことは無条件に信頼しているようなので、本当に驚きました」


そのマイヤの言葉にいまひとつピンとこないルナ。


ルナからしてみれば遥はいつでも優しくて、温かい存在なので、正直今の話を聞いてもどういうことなのかさっぱりわからなかった。


「まあ、恋は人を変えるといいますが……きっと、あなたに会ったことで遥さんはそうなったのでしょう」

「そうだと嬉しいです……」


ルナとしては遥に何も出来てないと思っているので、遥がルナのお陰で変わったと言われればなんとなく嬉しかった。


そんなルナにマイヤは優しく言った。


「まあ、私も遥さんには感謝しているので、友人としてはあなたという方に感謝しているんです」

「感謝ですか?」

「ええ。私と主は遥さんに助けて貰いました。そして……遥さんは私の願いを叶えて下さったのです」

「願い?」

「ええ。私は我が主――ロバート様に恋慕しています」


その言葉にルナは自然と顔を赤くした。


初々しい反応のルナにマイヤは微笑みながら思い出すように言った。


「私と主では身分の差が大きいので、叶わぬ想いだと思っておりました。そんな想いを叶えてくれたのが遥さんなのです」


当時、身分の差からすれ違いをおこしていたマイヤとロバート。


マイヤはロバートに主として、また、異性として恋心を抱いており、ロバートも憎からずそのような感情を持っていたが互いにそれを言えるわけもなく――そんなすれ違いを取り持って、尚且つ助けてくれたのが遥だった。


遥という存在はどの国からしても決して小さくない存在であった。


たった一人で魔の森の魔物を瞬殺できる遥は、存在だけでも時代が時代なら魔王と呼ばれそうな存在なのだが、そんな遥を敵に回すほど頭のネジが飛んでない現国王達は、遥と少なからず縁を持っておきたいと思っており、またそんな遥に友人と呼ばれる者には外交官として特殊な地位と名誉が与えられるほどに影響力があるのだ。


つまり、遥のお陰でマイヤはそれなりの地位を獲得しており、また、第二王子のロバートと肩を共に並べるのは彼女のような強い女性のみと遥が国王に言ったことによりマイヤとロバートは正式な形で主従と婚約者という形を得られたのだ。


だからこそマイヤとロバートは遥に友人として感謝の気持ちが強いのだ。


そんな話をマイヤから聞いたルナは嬉しそうに微笑んだ。


(やっぱり……遥は優しくて格好いい)


内心でそう思ったルナを見てマイヤは息を吐きながら言った。


「だからこそ、そんな友人があなたのような素敵な女性と夫婦になれたことには心から祝福します」

「そんな……私は遥に助けてもらってばかりで、何も返せてませんから」

「返す必要はありませんよ」


それは一体……という風に首を傾げるルナにマイヤは笑顔で言った。


「好きな人への愛情は無理に返す必要はありませんよ。むしろ受け取って次のステップに進む糧にすればいい。それに……あなたは遥さんの妻なんです。だから堂々と遥さんに甘えればいいんですよ」

「……でも、そんな一方的に寄りかかって、迷惑じゃ……」

「遥さんは一度でもそんなことをいいましたか?」

「それは……」


確かに遥にはそんなことは言われてないが……


「でも、私は……」

「遥さんのあそこまで幸せそうな表情を私は今まで見たことがありません。あなたは遥さんにとってきっと特別な存在。だからこそ、もっと甘えてもいいのですよ。きっとそれが……遥さんの幸せにも繋がりますから」

「マイヤさん……ありがとうございます」


そのマイヤの言葉に少なからず心が軽くなるルナ。


それから二人は互いの想い人に関して恥ずかしがりながらもノロケたのは、説明するまでもないだろう。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る