第7話 お料理
「ど、どうかな?」
家に戻ってから遥が出掛ける前に、最速で準備したエプロンを着てルナが感想を聞いてくる。
「すっごい似合ってるよ。流石俺の奥さんだ」
「そ、そうかな」
えへへという感じに照れるルナに――遥は心底悶えてしまっていた。
(家の嫁が世界一可愛い件について!!)
どこぞのラノベタイトルのような感想。
フリルのついた可愛らしいエプロンがルナと見事にマッチして至高の組み合わせへと進化を遂げる。
銀髪の超絶美少女の嫁がエプロンを着けているという事実に遥は感動すら覚えていた。
「それにしても……お料理するのにこんなに可愛いの着ちゃっていいのかな?」
遥に褒めれて少し照れながらもルナは自身の身につけた可愛らしいエプロンを眺めてそう疑問を口にする。
正直、貴族として生活していたルナにしてみれば料理を作るというの自体が初めての体験なのでなんとも言えないが……それでもこんなにお洒落な格好でみんな料理をするのかと疑問を抱いた。
まあ、もちろんこの世界にこんな可愛らしいエプロンはないので遥お手製のそれは明らかにこの世界の人間から見たら不思議なのだろうが……もちろんそんな野暮なことを言う遥ではない。
「料理を作るにはこれが一番いいんだよ。汚れても洗いやすい繊維だし、何より可愛いから汚したくないって気持ちで料理にも集中できるんだよ」
「そうなんだ……」
エプロンのフリフリの部分をちょっと摘まんでは首を傾げるルナ……そんなルナに圧倒的なときめきを感じなからも遥は精一杯平常心を保つように言った。
「それじゃあ、簡単なのから教えるけど……その前にまずは手を洗おうか」
「うん」
遥にそう言われてから水道で手を洗うが――はじめはこの水道というものもルナにしてみれば驚きの道具だった。
本来は水場や井戸からしか手に入らない水が蛇口を捻るだけで簡単に出てくるというのはルナの常識にはないので、正直かなり困惑したが……遥いわくこれが一般的な地域もあるということなのであまり細かいところは突っ込まないでおく。
ルナが手を洗い終わると、遥はまずルナに簡単な調理の手伝いとして野菜を洗ってもらうことにした。
本当はあまり水場の仕事で手を荒れさせたくないので少し悩んだのだが、まあ、そこは遥のチートで美肌系のクリームを作れば問題ないだろうと思いそこから初めてもらう。
「えっと……これくらいで大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ綺麗にできてる」
ポンポンと優しくルナの頭を撫でる遥……なお、ルナは恥ずかしそうにしながらも抵抗はせずに大人しく撫でられていた。
途中で気持ち良さそうに顔を緩めてそれが遥の理性にダイレクトアタックしたりしたが、遥はありったけの理性を総動員してなんとか踏みとどまった。
「じゃあ、とりあえず簡単に包丁を使ってみようか。危ないから気をつけてね」
「う、うん……」
遥から包丁を渡されて恐る恐るそれで野菜を切っていく。
「包丁で切るときは野菜を抑える手は猫の手にするといいよ」
「猫の手?」
「うん。えっと……こんな感じで指を曲げて」
「こ、こう……?」
遥の動きを真似てルナは猫の手をつくる……それを見て遥はふと思ったことを口にしていた。
「ねぇルナ……そのままもう片方も同じようにしてみてくれる?」
「え?う、うん……」
訳がわからないが言われた通りに両手を猫の手にするルナ――それを見て最後に遥は笑顔で言った。
「そこで、にゃんにゃん♪って言ってみてくれる?」
「……それって料理に関係あるの?」
「ないよ。だけど……ルナがやると可愛いかなって思ってさ……ダメかな?」
遥がそう上目遣いでお願いするとルナはしばらく何やら葛藤してから恥ずかしそうに言った。
「に、にゃん、にゃん……」
……な、なんだこのツン猫がデレたときのような達成感とーーー圧倒的な可愛いさ!
まさか素直にやってくれるとは思わず遥は心から感涙しながらも笑顔で言った。
「うん。やっぱりルナがやると可愛いね」
「……!も、もう……続き教えてよ」
恥ずかしそうにそういうルナ。
その反応がまた可愛いからこそ連鎖的に遥は心から悶えつつも、なんとか理性との戦いに勝利を納めてから続きを教える。
他人に料理を教えるなんて経験は初めてで遥としても楽しくはあるが――何よりもルナが嬉しそうに色々聞いてくるのが遥としてはたまらなく幸せに感じた。
覚えのいい上に器用で要領がいいルナは遥が教えたことをわりとあっさりとマスターしていくので、このまま行けば遥より確実に料理の腕が上がることは間違いないと確信できた。
まあそれに、銀髪美少女の嫁が自分のために料理を習う――男ならこれに喜ばないやつはいないだろうと思うほどだ。
「遥……これで大丈夫?」
野菜を炒めながら、焦げないようにかき回しつつそう聞いてくるルナ……本当にこの子はなんでもすぐ覚えるなと思いつつ遥は笑顔で頷いていた。
「うん、かなりいいね。やっぱりルナは凄いよ」
「そ、そうかな?」
「うん。流石は俺の嫁……これならあっという間に俺より料理が上手くなるだろうね」
心からそう言ってくれてるのがわかってルナとしては凄く嬉しくなった。
貴族として王妃の教育などをしていたときは何をしても出来て当然、誉められることなどなかったルナにとって、お世辞でもなく素直に誉めてくれる遥の存在は何よりも嬉しいもので……尚且つ、嫁と言われるたびに自分が遥のお嫁さんになれたのだと思えて……嬉しくなった。
そんな風に仲良く二人で台所に立って調理していると――ふと、遥は思ったことを口にしていた。
「今の俺達ってどこからどう見てもラブラブな新婚さんだよな……」
「ふ、ふぇ……!し、新婚って……」
その言葉に驚いてお玉を落としそうになるが……遥はそれを華麗にキャッチすると苦笑して言った。
「ごめんごめん……なんとなく言いたくなってさ。まあ、事実俺の嫁になったんだから間違ってないだろうけどね」
「う、うん……」
照れりとしながら「お嫁さんかぁ……えへへ」と呟くルナを見て、もはやこの嫁の可愛いさに一生勝てないだろうと確信する遥だった。
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