第28話 多彩を楽しむ





コトン


龍神ニーグは、スプーンをテーブルに置き、右手にマグを持ったかと思うと、

そのままグィーッと、熱々コンソメスープを、一気に飲む。

まぁ高温ブレス吐くくらいだから、猫舌ではないだろう。


「美味い! …… 複雑な味だが…… 美味い!

何であろう? 回復ポーションを飲んだ様に、

力がみなぎるの」


「本当ですね…… やさしい魔素が充実して居ます。

また、確かに複雑に美味い。色んな具材が入って居るのかな?」

ワードマンさんは、セルガさんと同じ様に、スプーンでチビチビ飲んで行く。


「あぁ♪ 身体が暖まります~。

魔力もかなり、回復して来た見たいです~」

至福な笑顔に成り、セルガさんの顔色も良く成って来る。


「隼、断食開けに、何かお出し出来る?」

『軽く、プチケーキのアラカルトは如何いかがでス?』

「イイね。出してくれ」

『アイサ』


ティーセットの乗ったテーブルの上に、

色とりどりのプチケーキを乗せたイングリッシュ風の

アフタヌーンティースタンドが、淡い光の中から現れる。


「…… 先程から気に成ってはいたが、この声の主は誰かな?」


「あぁ、AIの『はやぶさ』です。

『ユグドラシルの魔力生体エネルギー』を制御し、

パワーに転換制御したり、

フォトン・ソード聖光剣等の武器管制をする

......私が組み上げた『使い魔つかいま』の様なもの?」


「そこは疑問形なのですか?」

ワードマンが面白そうに突っ込んでくる。


「はい。まだこちらの語彙ごいに慣れてなくて。

ギェンガー巨大魔人にも『わからぬ!』と、突っ込まれましてね」(苦笑)


「…… えー、あい? とな?」

ニーグは、隼の存在に興味が出た様だ。


「えーと…… 私が学んだ『科学技術』で組み上げた、『人造の執事マンメイド・バトラー』と申しますか......

そうだ隼、新たに御茶をいれてくれるかな」


『喜んデ』


ヴーン


バトラー執事・モードのドロイドが一体、現れる。


『失礼致します』


身体素材は見る限り『人形ドール』なのだが、

仕草が完璧な『執事』の所作をする。


隼は、人形の手で、優しく白色のポットに触れる。


キューン コポコポコポ


茶葉をケースから人数分すくい、急須に入れる。

コポコポコポ

暖かな湯気と共に、急須に湯を注ぐ。


「あれ、かまどは?

いつの間にポットに湯が湧きましたか? 」

ワードマンさんは、室内にかまどらしき物を探そうと、辺りを見渡す。


「このポットハ、造水急速湯沸ぞうすいきゅうそくゆわかしかし機能付きでス。

数秒で沸きまス」


造水ぞうすい!?。水もポットがつくれるのか!?

造水魔法ウォーター・クリエイトは、生活魔法にしては、複雑じゃからの......

ふむぅ『かがくぎじゅつ』とやらは、合理的に便利じゃ」


『恐れ入りまス』

隼は執事らしくうなづき、ゆっくりティーポットを傾ける。


四つのカップに順番に、紅茶を注いで行く。


「まぁー。なんて良い香り……」

セルガさんは目を瞑り、豊かな茶葉の香りを深く吸い込む。


「どうゾ。熱いので御気おきけテ」


「うむ。相伴しょうばんにあずかる」

「感謝します。顕現けんげんの良いところは、飲食を楽しめる事ですね」

「いただきます~」


三人は、ゆっくり、音を立てずに茶をたしなむ。

「うまい!先ほどの茶葉とは異なる、何と言うふくよかな味わいだ」

「鼻を抜けるこの茶葉香りが、ゆたかですな」

「立てたお茶の味わいもそうですが、

温度も絶妙に飲み頃ですはね。あぁ、お腹が暖かい」


「ありがとうございまス」

隼は、うやうやしく頭を下げる。


「ふうむ......中に生身の人族が入って居るのではないのか?見事な点前てまえである」


恐縮きょうしゅくです。猛様の世界地球での作法ですが、お気に入りして頂けたのなら、幸いです」

頭を下げる。


「では、こちらの御茶受けもどうぞ。

プチケーキのアラカルトです。御自由に、味を御試し下さい」

三人の前のティー・スタンドには、六個のマカロン程の大きさのプチケーキが乗っている。

色取り取りで、見た目にも楽しい。


「どれどれ」

「ほほう。目でも楽しいですな」

「かわいい~」


パクリ


「うまいのう〜。なるほど。タケシの世界は、多彩たさいを楽しむ文化なのじゃな」


パクリ


「本当ですね。それぞれの味が、絶妙ぜつみょうに美味い。腕の良い職人の『切磋琢磨せっさたくま』を感じます」


パクリ


「おいしい~」


パクリ


「タケシ。この…… 『きいろい』のは良いな。

御代おかわりを所望しょもう出来るかの?」


「大き目のが有りますよ。召し上がりますか?」


是非ぜひに!」


「では、こちらを」

直径二十センチ以上はある、ホールのチーズケーキを出す。


「おう。ありがたい」


龍神ニーグは、右手だけでホールをつまみ上げ、

大口で、豪快ごうかいに食べ始める。


パクパク

モシャモシャ


「うまいのう~ 至福じゃ」

ニーグは、至福の笑顔をする。


「はぁ〜、美味しかったですぅ......」

あれ?セルガさんいつの間にか完食を?

......食べ終わってしまい、とても残念そうだ。


しかし、彼女は残りの茶を、ゆっくりと飲み干す。


「ふぅ〜。落ち着きましたは」


「えーと。オカワリはどうしましょうか?」


「いえ。御陰様おかげさまでだいぶ落ち着きましたは。

それに、まだお伝えせねばならないことは多いです。

もう少し、御付き合い願いますは」


セルガさんは、顔色が良くなった美姫ヒロインの、

攻撃力高い魅了される、美しい微笑みを浮かべる。




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