第27話 相乗相剋




「えーと。では、この世界での『魔法の概要がいねん』を、なるべく簡素に御説明させて頂きます。



一般庶民レベルでは『天と地からの恵秋の収穫物みを、食事しょくじ』して、食物から魔素まそを受け取ります。

そして、睡眠を経て魔力が回復致します。

庶民で使えるのは、シンプルな魔法陣の生活魔法せいかつまほうレベルが限界ですね。

簡素かんそで覚えやすい術式じゅつしきですし。

けの火種ひだねを、極小ごくしょう火魔法で点火したり、

洗浄魔法せんじょうまほうで身綺麗にしたり等、出来るのです。


「おおお♪」


たけしは、キラキラした笑顔を見せる。


「生活魔法!最高です!

そう言う身近な魔法を、知りたいです!

今の私が、野営やえいするとなると......

覚えたての龍神ブレスを極小に絞って、

けるでしょうね」


「あー」セルガも『ありえそう』と、苦笑いしてしまう。


「うけたまわりました。後ほどお伝えしますね♪

あと、疑問ぎもん御座ございいましたら、

何時いつでも御質問ごしつもん下さいませ」



セルガさんは、キリッとした表情となる。

後輩神官などへの、指導しどうモードに入った様子だ。



ざっくりと、属性魔素ぞくせいまその種類は、

天・人・地てん・じん・ち』と、

木火土金水もくかどこんすい五行ごぎょう』のはたらき、

分類されます。


また『陰陽いんよう』と言う、強弱きょうじゃく押引おしひき表裏ひょうり本音ほんね建前たてまえetc......

と言いあらわせる概念がいねんも、覚えて下さい。


われわれが日々ひびさずけられている、いのちめぐみみ出され、はぐくまれるいとなみは、

これらの属性魔素の相乗相克そうじょうそうこくはたらきから、み出されています。


つまり、その相乗相剋そうじょうそうこくはたらきを、理解りかいできないと、

それぞれの属性魔素ぞくせいまそは『魔術・魔法』として『抽出ちゅうしゅつ』されず、動いてくれません。


解説かいせつ便宜上べんぎじょうとして、魔法を使う人族魔法使いの視点から、

それぞれの属性魔素ぞくせいまその、相関関係そうかんかんけい御説明ごせつめいいたします。


ですので、この大地で『生きとし生けるもの』はすべて、

魔法攻撃魔法仕掛しかけてくる可能性がる』を、決してお忘れなきよう。


分類します


天は神であり、天使さまであり、太陽の恵たいようのめぐみであります。

天より、りてさずかります。

天は聖なるもので、聖属性せいぞくせい魔素です。


地=土で、我らが立つ大地です。人を、支えてくれます。

地と土は同じ土魔素つちまそと、定義ていぎ認識にんしきされています。



『人』魔素は、魔法魔術を使う『人』の視点として、

魔法使い個人の体内で発生し保有する魔素です。


聖魔法は、天ー魔法使いー地の縦軸たてじくで働きます。


天から降りてきた聖魔素を、魔法使いが立つ大地で受け止め、

人魔素で組んだ魔法陣マジック・サークルに走らせる事で、聖魔法が発生させられます。



木火土金水もくかどこんすい』の属性魔法は、

春夏秋冬の『四季の恵しきのめぐみ』として、

うつわりが、表現されます。


大地土属性魔素の上に、太陽がふりそそぎ。

四季により太陽が強弱し、

春夏秋冬それぞれの属性魔素が、

大地土属性魔素の上で、発生するとされています。


木属性魔素=春 芽が大地から発し

火属性魔素=夏 芽が生育し花が咲き乱れ

金属性魔素=秋 花からたねなどの収穫物しゅうかくぶつ結実けつじつみの

水属性魔素=冬 種として大地に眠ります。


『地』大地の上に立つ『人(自分)』が、

『天(太陽)』の『一日の朝昼夕夜』『一年での春夏秋冬』と言う

刻々と『移り変わる四季のめぐみ』を、受けている訳です。


大地に立つる魔法使いを基軸に、各属性魔素の横軸よこじくの働きを受けます。


木火土金水それぞれは、絶え間ない四季の移り変わりの中から発生して来ますので、

互いに影響を受け、かつ与えながらはたらいております。


相乗相剋の関係と、呼んでおります。


この相乗相克と言う、相関関係の働きを分解し、再編して組み上げたのが、

魔法陣マジック・サークルです。


ですので、どんな状況下でも各属性魔素ぞくせいまその働きを、

『鮮明にイメージ』出来なくては、魔法は発動出来ません。


相乗そうじょうはたら


木は水にはぐくまれ

火は木が燃えてまれ

土は木が燃え尽きてまれ

金は土中から金属類を産出さんしゅつ

水は金属の表面にしょうずる



相克そうこくはたら


木は土の養分ようぶんをうばう

火は金属をかす

土は水をよご

金は木を

水は火を



ここで、着目して頂きたいのが、


世の命のまれとはぐくみは、


相乗そうじょうと言う『促進そくしん』のはたらき。

相克そうこくと言う『め』のはたらき。


相反あいはんするはたらきが、『陰陽』の概念の通りに、ぶつかり合います。


するとどの属性も、強すぎない弱すぎない『中庸ちゅうよう』と言う『状況じょうきょう』が発生します。


ちょうど良いいとなみが、延々えんえんり返され、めぐってくのです。



そこで魔法陣マジック・サークルとは、

それぞれの属性魔素ぞくせいまそはたらき『のみ』を引っ張り出します。

その引っ張り出した魔素を、集約しゅうやくし、

強く『促進そくしん』させると、その属性魔法として発動はつどう致します。


もちろん『め』も、しっかりまれておりますよ。

魔法発動の度に、どこまでも暴走していたら、使えないですから。



『......マスター。お話途中で申し訳ありませン。

マダマダ長いお話と、なりそうですし、

何かつままれながらのお話は如何いかがでしょうカ?

お昼時でもありますし』



きゅるる〜



隼の進言との絶妙なタイミングで、

セルガさんから、かわいい『腹の虫』が聴こえる。


「! セルガさん。そう言えば、御食事は?」


御気遣おきづかいありがとうございます。

実は、召喚しょうかん儀式ぎしきで、ここ十日ほど食して居りません」

彼女は少し頬を赤くして、打ち明ける。


「それでは消化の良い物が、宜しいですかね」


「そうですね、汁物しるもの系を頂ければ……

儀式中は半眠半覚はんみんはんかく状態なので、

飲食出来無いのです」


「ディグリーさんが、激怒げきおこりでしたね

『通常は神官位が数人で行う儀式だ』と

たましいが飛ばされて、亡くなる前例』もあると」

たけしはふと、自分も似た状況におちいった記憶を連想し、思い出す。


セルガさんは、淋しげに微笑みながら、ややうつむく。


御義姉様おねえさま……」


コトン


しんみりし始めたセルガの前に、

海外SF宇宙船物ドラマの食堂等で見られる『複製レプリケーション』で、

あたたかい良い香りをただよわせる大き目のマグカップを『複製レプリケーション』して、出す。


出したのは、以前たけし自身が調理ちょうりした、

コンソメスープのデータが、元だ。


「わ! なんて食欲しょくよくり立てる、暴力的ぼうりょくてきに良いかおり!」


スプーンも、差し出す。


「熱いので、少しずつすくって食べて下さい」


「ありがとうございます!」


セルガさんは、マグの中を覗き込む。


「わぁ! マグの底が見える程、んだスープなんて初めてですは」


琥珀色こはくいろんだスープを一匙ひとさじすくい、

注意された通りゆっくり口に含む。


「あああああああ~ 『五臓六腑ごぞうろっぷみ渡る』て、この事か~」


満面の笑みで、美味しさを叫ぶ。


「どれどれ」

『ほほう』


ニーグもワードマンさんも、マグの中をのぞき込む。


「はいはい。御二人もどうぞ」


コトン

コトン


二人の前にもマグを出し、スプーンを手渡す。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る