第10話 人外さん
(
ユグドラシル・ネットワークとの、
現在の接続状態は?)
(はイ……正常です。
通常通りの
『侍』スーツの光子エネルギー制御回路『サウザン・ハンズ・システム』に、
たえず流れ込んで来ていまス。
ので、エネルギー切れの恐れはありませン…… しかシ……)
(うん?)
(現在、
『ユグドラシル・エナジー・ポイント』ハ、
初めての『接続ポイント』でス)
(そうか~。じゃぁ地球圏の『侍』クラウドと、
接続出来るかは、今の所分からないな)
(はイ。
ですが幸いにモ、セルガさんの
『
過去ログが全て、記録出来ていまス。
『逆探知』のための御時間いただけれバ、
元の世界の
(...... わかった。その様に
まずは
近くに水場はあるかな?)
高度4000メートルからの
『
抱いている
飛ばされていた
低体温症、一歩前だ。
(真下ニ、ありそうですヨ)
確かに一千メートル真下に、小さな
小さな泉の様だ。
よし。
ふわり
静かに着地した
これは、これは。
周りは深い木々に囲まれて、
少し高台にある様で、教会敷地や隣の美しい湖方向に、森が切れていて、見晴らしは素晴らしい。
もしかして、少し昔の王族とか貴族等、位の高い人物の
あ。遠くに
そこに
……バスター・ミサイルの爆発力まで、転移しちゃったか。
歩道脇の、やはり苔むした長方形の
(ここに
ぱたぱたぱたぱた
石台の上に、マットレスが勝手に広がって行き、シングルベッドになる。
セルガをそっと、シングルベッドに横たえる。
見事なノーブラ双丘は、
ふわり
柔らかで暖かそうな布団が現れ、彼女を覆う。
(モノクル)
顔を覆うフェイスシールドが、左目だけ覆うモノクルにモーフィングする。
裸眼になった右目で、セルガさんの顔を
(
左目のモノクルの奥に、緑の瞬きが起こる。
彼だけに見える視界に、AR表情が立ち上がり、
セルガさんの
(……スキャン終了。
生物学的ニ、地球上の
標準的人類の
セルガさんの
ただ体温が低いでス。
(個人情報とか診療経歴は?)
(セルガ・W・トレアドール。十六歳。女性。
ヴォーグ教のタイ・クォーン公都教会・神官長……でス。
『この世界のユグドラシル・ネットワーク』での
『検索エンジン』が不明なのデ、表面的な内容しか引っ掛かりませン。
そもそモこちらでは、パソコンとかネット・サーバーとかWebサイトとか
『
(そうだよなー。困ったなー)
この世界の
(とりあえず布団の温度を、
……後、出来る事は……『この世界の水分』を、飲ませた方が良いか。
ちょろちょろちょろ
水音の方を振り返る。
ベンチから五歩先の、赤茶色の干しレンガを積み上げられた壁に、
白い
獅子頭に近付き、『
じょぼじょぼ
(水質は?)
(
じょぼじょぼ
吸い口に水を流し込む。
手に当たる流水は、ほどよく冷たくて、心地良い。
水の
偶然性が高いとは言え、
慌てずに、この地の生活様式などを把握した方が良いだろう。
まったく...... セルガさんは、『天然に周囲を巻き込む型ドジっ子』に違いない。
まったく悪意が無いから、まったく読めない。
もっとも地球でも仕事柄、赴任先で他人の
それほど焦燥感は感じない。
しかし。
…… 転移過去ログがあるとは言え、
…… いつ、戻れるのやら。
困ったな
…… 戻れるとして、
はぁ
…… また、『約束』を守れそうに無いか……
猛的に、約束破りが一番、罪悪感が
…… 現実問題、しばらく『戻れない』を前提として…… どう行動する?
…… セルガさんの要請どうり『勇者』をするのか?
思わず苦笑する。
勇者て!
『
…… ふむ。勇者と言えば、ある意味『
『仲介役』であり『断罪者』だよなあ。
……
『侍』が要請を受ける判断材料の一つとして、
『セルガさんの真剣な心意気』を感じられるのなら、
彼女の要請を受けるのは、
えーと……
地球で途中のミッションや、色んなリマインダーは、
地球の他の『
でもなぁ~。
ミッション途中で、『
なぜなら、この異世界の文明は、中世ヨーロッパレベルの様だ。
剣ひとつで成り上がる英雄達が
足の引っ張り合いにならないように、
つまり、
また、仮に王制などを中心にした安定政権だとする。
俺が介入して『安定させていたタガ』が外れて、戦国時代に戻ってしまったら?
『侍』を兵器に例えるならば、『
たとえ小国でも『核』武装すれば、周囲国家を恫喝し、従わせる事をも出来る。
実際に『核』ミサイルを敵国の首都圏に打ち込めば、国家機能は簡単に奪える。
…… そんな前例は、地球の歴史上掃いて捨てるほど存在する。
『
『侍』の利点は放射能を巻き散らかさず、
外科手術の執刀医の如く、敵の軍隊や国の中枢部のみを狙い、
最小限の被害で敵国を制圧出来る事だろうな。
どう有れ、セルガさんが『命がけの勇者召喚』を行なった理由と、
この世界の状況や情勢を、聞き取らないと。
当面の身の振り方を判断するのは、それからで良いかな。
じょぼじょぼ
吸い口を持つ左手にかかる水が、無限に流れて
取り留めない思考から覚めた猛は、吸い口を流水から引き、蓋を締める。
ぱっぱと
!
寝ているセルガさんの頭側から、彼女を見下ろす体制で、
セルガさんと同様なデザインの神官服を着ている、
金髪碧眼イケメン男性が、静かに立っている。
背丈もあり筋骨たくましく、どこかの武将と言われても納得する。
誰? いつの間に? 近付く気配も無かったぞ!。
思わず『ガン見』してしまう。
ふと、そのイケメンは、猛の裸眼な右目の
……
イケメンは、パチパチと瞬きし、
彼は、自分の右手をゆっくりあげ、人差し指で、自分を指し示す。
?
猛も、やや
『……驚きました。私が見えるのですね』
「は? ……はい。見えますよ」
そんなにハッキリ・クッキリと、そこに実在してるじゃん。どゆこと?
(マスター。私のセンサーに彼ハ、
強い『生体エネルギー
つまリ、
(マジか)
サスガは異世界。
自分の世界の常識と『どれだけかけ離れているのか?』を思い、すこし
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