第3話変な師匠
「お、来たか姫さん……とそれから城門前で会った小僧」
俺らはさっきいた場所から移動して変なオッサンことミレニアの師匠前まで移動していた。
俺たちはオッサンに「まぁ、座れ」と言われ俺の隣にミレニアそしてその対面にオッサンという形で座っている。
移動している最中客の視線が痛いほど刺さったがこの際完全に気にしないことにする。
それよりもこのオッサン今ミレニアのことを姫さんって呼ばなかったか?
貴族かなんかと思っていたがまさかこの国の姫?
いやまさかなお姫様がわざわざ城門前まで来て検問に引っかかった怪しい奴なんて助けるわけがないだろ普通。
まぁ、貴族の場合でも十分あり得ない話だけども。
「あれ?ノイって師匠と知り合いなの?」
ミレニアは不思議そうな顔をして俺に向かって問いかけてきた。
「いや、城門前で少し話しただけで知り合いって間柄じゃねぇよ」
それに急にオッサンが話を切り上げてどっか行ったからそんなに長く話せなかったしな。
「ふぅんそうなんだ、それで師匠どうして私たちを呼んだんですか?」
ミレニアはしかめっ面をしながら自分の師匠に問いかけた。
「いやなに姫さんがついさっき出会ったそこの小僧と一緒にこんなところに来たもんだから気になってな」
「気になってな……じゃないですよ!大体また部下の人達を置いてきて一人で帰ってきましたよね」
オッサンにそう言われミレニアはテーブルを両手で思いっきり叩き付けて勢い良く立ち上がった。
ミレニアはまだ言いたいことがあるのかオッサンに食って掛かっている。
弟子が師匠をしかっている……普通逆だろそこは。
それにしてもこのオッサン、部下を置いて一人で帰ってくるなんて何考えてんだ?
……そういえばオッサンが城門前で部下がどうのこうのって言ってたような。
確かオッサンが城門を飛び越えた後馬に乗った騎士みたいな連中が王都の方に走り去って言ったが、もしかしてあれがこのオッサンの部下?
まぁ、オッサンの部下のことなんて別にどうでもいいか。
多少は同情するが、それだけだしな。
それより。
「おい、ミレニアいつまでそのオッサンしかってんだよ」
このまま放っておくと永遠に続きそうだしそろそろ止めておいた方がいいだろう。
いい加減腹が減ってしょうがないからな、早く飯にありつきたい。
「あぁごめんノイ、日ごろのうっぷんがつい吹き出しちゃって」
余程ストレスが溜まっていたんだろうミレニアの顔がさっきより疲れた顔になっていた。
まぁ、日頃この自由奔放なオッサンと過ごしていたらうっぷんも溜まるだろうな。
分からなくはない。
「おい小僧、だれがオッサンだ。俺はまだ33だ、お兄さんと呼べ」
そんなことを考えていたらオッサンが変なことをのたまってきた。
なんだよお兄さんって。
「いや、33はオッサンだろ」
それにその厳つい顔でお兄さんは無理がある。
「ん?そういえば小僧、最初に会った時は敬語使ってたよな?」
俺の言葉遣いが気になったのかオッサンが問いかけてくる。
あ~確かに言われてみればいつの間にかオッサンに対して敬語が抜けてるな
「だってあんたミレニアの師匠だろ?だから敬語はもういいかなって」
そう言うとオッサンは困惑した顔で、
「何だ?その変な理屈」
自分でも変だとは思うんだが、ミレニアの師匠だしこれぐらいじゃ怒らないだろうと思って自然と敬語が抜けたんだろう。
「そういえば二人共まだ自己紹介もしてないでしょ?だから自己紹介しましょう?」
そんなことを考えていると急にミレニアがオッサンとの会話に割り込んできた。
「なんだよいきなり」
確かにそんなことしてないが……。
こいつ話聞いてなかったのか?
今までの会話で自己紹介する雰囲気じゃなかっただろ。
「だって二人共お互いのことを小僧とかオッサンとしか言い合ってないじゃない。ちゃんと名前で言い合った方が早く仲良くなれるわよ!」
そういわれて俺とオッサンは互いに見あいながらミレニアに聞こえないよう声を抑えて話し合う。
「なぁオッサン、ミレニアっていつもあんな感じなのか?」
「確かにいつもあんな感じだが今日はいつにもましてひどいな」
オイオイいつもあんな感じでしかも今日はいつにもましてひどいとかこれからこいつに連れ回されるってのに勘弁してくれ……。
「さっきから二人で話してるけど何を話してるの?」
俺がどうしようもない現実に頭を抱えているとミレニアがのんきな声で話しかけてきた。
のんきそうな顔しやがって誰のせいで頭を抱えていると思ってるんだ全く。
はぁそれをミレニアに言ったってどうしようもないしもういいか。
「いや、何でもねぇよ。それで自己紹介だっけか、俺はノイだよろしく」
今度は悟られないようにオッサンの目を真っすぐ見て言った。
このオッサンに見抜かれることは多分無いだろうが警戒しておくに越したことはないだろう。
するとミレニアは俺の自己紹介に不満なのか明らかに不満だと分かる顔で、
「また名前だけしか言わないつもりなの?」
「別にいいだろ俺のことなんて、それでオッサン名前なんて言うんだよ」
俺はこれ以上ミレニアが駄々をこねる前にオッサンに問いかけた。
するとオッサン顔をにやつかせながら自己紹介を始めた。
「フフフ……小僧知りたいか俺のこと「あ、じゃぁやっぱりいいd……」聞いて驚け俺の名はジャスカス・ローランこの国の近衛騎士団団長兼メルセトナス騎士団総団長をやっている」
俺は思わず二秒ほど呆けてしまった。
このオッサンが総団長!?
何かの冗談だろう、間違いなく。
オッサンのぬかしたことが本当のことなのか確認するためにミレニアに聞いてみることにする。
「なぁ、このオッサンの言ってる事って本当のことなのか?」
「あはは……まぁそう思ってもしょうがないよね。だけど本当のことだよ」
マジか……本当にこのオッサン改めジャスカスは総団長だった。
だとしたら人選ミスだろこれ。
そんなことを考えているとオッサンが俺を疑うような顔で、
「今失礼なこと考えてなかったか?」
「そんなこと考えてねぇよ。ただ人選ミスだなって考えていただけで」
「オォイ!バッチリ失礼なこと考えてるじゃねぇか!否定したんなら最後まで貫き通せ!」
おっといけない思はず本音が漏れてしまった。
そんなどうでもいいことを考えていると突然入口の扉が勢いよく開かれ一人の女性が入ってきた。
入ってきた女性は室内を見渡してこちらの方を向くとこちらに向かって歩いてきた
ていうかこの女性よく見たら城門前で見た馬に乗った騎士たちの先頭を走ってた人だ。
「これはミレニア姫殿下御前失礼します」
女性は俺たちの前まで来るとミレニアに向けて首を垂れた。
またミレニアに向かって姫という単語が出てきた。
まさか本当に姫……?
「別に私達のことは気にしなくていいわよ」
そうミレニアは女性に向けて笑顔で答えた。
「それでは失礼して……捜しましたよ!ジャスカス団長!」
少し怒っているのだろうか声音に怒気が含まれていた。
ちなみに怒られている当の本人はこの女性が入ってきた途端に挙動不審になっていた。
まるで悪戯がバレた子供だ。
ハッキリ言ってダサかった。
「な……なんでここが分かった……?」
ダサい団長は明らかに動揺した声で女性に問いかけた。
「なんでじゃないですよ!団長が私達を置いて帰ってくるとき決まってここに来るじゃないですか!」
そう言われてジャスカスは、あ……そうだったみたいな感じのハッとした表情をしていた。
……このオッサン本当にバカだろ
「ほら団長今回の任務の報告書書かないといけないんですから戻りますよ」
そう言うと女性はジャスカスを引きずりながら入口の方へ歩いていく。
「嫌だ!書類仕事なんてしたくねぇ!姫さん助けてくれ!」
オッサンは性懲りもなく足掻いていたがやがて二人の姿は見えなくなっていた。
「お前の師匠変わってるな」
「確かに変わってるけどいい人だよ」
まぁ雰囲気で何となく分かってはいるんだけどな。
あ、そうださっきの会話でどうしても聞かなきゃいけないことができたんだった。
「なぁ、ミレニア聞きたいことがあるんだが」
「答えてもいいんだけどまずは食べ終わってからにしよ?」
そう言ってミレニアはメニュー表と思われるものを手に取った。
「今更だけどノイってお金は大丈夫なの?」
「本当に今更だな。まぁ最近纏った金が手に入ったから大丈夫だ」
あの依頼は本当に報酬金が美味しかった。
しかも助けた人からお礼の金も貰えたしな。
だから今の俺の懐事情はかなり温かいのだ。
さてと俺も何か頼むか。
メニュー表を手に取ってどんな料理があるのか確認していく。
そして料理の値段がふと目に入った。
「……て、たけぇ!」
なんだこれ高すぎるだろ!?
「ノイごめんね?」
謝るなら奢らせるなよ……。
この後俺は泣く泣く二人分の料金を払った。
俺たちは食べ終わった後エルネスト通りに戻っていた。
「なぁミレニアさっき聞こうとしたこと聞いていいか?」
「私のお気に入りの場所があるんだけどそこに行ってお話しよ?」
そう言いミレニアは俺の手を取ってどこかえ走り出した。
「え!?ちょっおい!」
いきなりなんなんだ一体。
俺の動揺を無視してミレニアはどこかえ突き進む。
これは何言っても無駄だな。
大人しくついていくことにしよう。
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俺達は今大きな時計塔の目の前に来ていた。
これってあれだよな王都の有名な刻印魔術で出来ているっていう時計塔。
ここがミレニアのお気に入りの場所?
そんなことを考えているとミレニアは俺の手を放して時計塔の中に入っていく。
「おい、ここ入って大丈夫なのかよ」
こういう特別な場所って普通は入っちゃいけないんじゃないか?
「うん普通は入っちゃダメなんだけど、私といれば大丈夫だから」
「ふーん、じゃ遠慮なく入るぞ」
そう言って俺は時計塔の中に入っていく。
中は特段変わった装飾はなく螺旋階段が上へ上へと続いている。
その螺旋階段をミレニアと俺は進んでいく。
一番上に着くと、そこには王都の綺麗な街並みが目に飛び込んできた。
なるほどなミレニアがここの場所を気に入るのがよくわかる
それほどまでにきれいな景色だ。
ミレニアが何を思ってここに連れてきたのか分からないが、さっきから気になっていたことを聞いてみよう。
「なぁ、ミレニアあんたって何者だ?」
そう言うとミレニアは微笑んで、
「さすがに隠し切れないか~」
ということはやっぱりミレニアは……。
「じゃぁ改めて自己紹介するね。私の名前はミレニア・ヴァン・ロード・メルセトナス。この国の第一王女よ」
ゆっくりと自分の姓を口にした。
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