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鬱屈とする梅雨も、そろそろ折り返した頃合い。

僕の人生初のキスを、不意打ちに奪ってからも…

アイツは何ら変わらず接して来た。




毎日のように朝迎えに来ては、一緒に登校し。

昼休みになれば、あの場所で共に昼食をとるのが日常になり。


弁当も多めに作って…。

美味しそうに顔を綻ばせるアイツを見るのが、


僕の密かな楽しみにも…なっていた。







放課後は決まって図書室でまったりし。


というもの…

ここに誰も居ないときは、甘えるように…キスをせがまれるようになってしまったけど。





素直じゃない僕は、

自ら求める事が出来ないから。


求められる分には…

密かに心地良いとさえ思うほどになっていた。







「そろそろ帰るか…。」


今日は買い物があったから。

いつもより早く切り上げ、席を立つ。


何をするでもなく、ただ僕をぼんやり見ていた芝崎も、当たり前のようにくっついてきた。






制服も夏服へと変わり。

夏直前とはいえ、梅雨もまだまだ居残る季節ではあったけれど。


今日はいつもより雨も小降りで、

嫌な湿気も少なく幾分過ごし易くは感じた。






「相合い傘、する~?」


玄関まで来ると、芝崎がアホなことを言い出したから。構わず傘を差して、先を行く。



こんな遣り取りも、

なんだかもう、慣れてしまった。








買い出しをするために、いつもと違って行きつけのスーパーがある通りをふたりで歩く。


これも既に、日常的な光景。




そうして買い物を済ませると、

決まって芝崎は荷物持ちを買って出てくれる。


それはそれで有り難いのだが…






「ほら、先輩そっちも貸して?」


いくら僕が華奢で軟弱でも、女の子じゃないんだから。





「いい…どうせ片手しか使えないだろ。」


一応、好かれているからなのか…

コイツはすぐに僕を甘やかそうとする。


あまりにも大事に扱われるものだから。



ちょっと、困る…。






「ダイジョーブ!!オレ頑丈ッスから~!」


らしくないと思いながらも。

こんな風に優しくされると、つい甘えたくなる。


求められると、欲しくなる。

あのキスから…僕は何処かおかしいのだ。




芝崎には反射的に、冷たい態度を取ってしまうけど。

それでもコイツが離れていかない事に、


安堵する自分がいて…。






芝崎が求める答えには、ならないかもしれないが。

これは…人見知りな僕にとっては、驚くべき進歩。



それでも一歩踏み出せない場所にいるのは。



自分が傷つかない為の、…なのだろう。







僕達は普通じゃない。

この関係だって、いつ壊れるかも解らないのだから。


溺れないように、

崖っぷちでしがみつくしかないんだ…。

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