第90話 ダレスVSペルセウス
「さあ行くよ!」
彼女は一気に距離を詰めて殴りかかろうとする。
「おせえよ」
拳が当たるかと思った瞬間、彼女はいきなり後ろにふっ飛ばされた。
「ぐ!? 」
「そら行くぞ!」
そう言うと、彼は一気に距離を詰める。それと同時に何かに腹を殴られたような痛みが襲い、またふっ飛ばされた。
「ぐう。ワープ系の魔術……ではないね。それだとふっ飛ばされてることに説明が行かない。一体どんなものなのかな?」
「わざわざ教える奴がいるかよ!」
彼は再び距離を詰める。彼女はカウンターを狙うように殴ろうとしたが、それよりもはやく、何かに殴られたような痛みが襲う。
「が!? なんだろ。この攻撃」
「そら。次々行くぞお!」
彼がそう言うと、彼女は何度も何かに殴られたような痛みが襲われ続ける。彼女は防御するために腹から腕を2本生やして防御に専念する。しかし、防御のためにどれだけ腕を動かしても、確実にお腹や顔などの急所にヒットし、ダメージを与えていた。それに加え、彼の方を見ても腕や足を動かしてるようには見えなかった。
(面白い攻撃じゃないか。気が付いたらいきなり殴られてるし、防御も回避も出来ない。さあどうしようかな)
「なに笑ってんだよ!」
彼がそう言うと、顎の部分を金づちか何かで殴られたような痛みが襲い、上空にふっ飛ばされる。彼が飛んで近づくと、そこからまた顔を殴られて叩き落とされてしまった。
「やるね。けど」
立ち上がろうとしたが、顎をやられたせいか、体に力が入らなかった。
「どうした? 気分でも悪くなったか?」
彼が近づくと、ダレスは何かに蹴とばされたような強い衝撃に襲われ、吹っ飛んでいった。
(この痛み。間違いなく蹴られたことによるもの。だが奴の足は動いて無かったはず。どういう仕組みなんだ。魔術で加速してるにしても、動きが捕らえられないというのはほとんどないはずだが)
彼女が考え込んでいると、彼はニヤニヤしながら話しかける。
「ずいぶん困った顔してるな。最初の余裕はどっかに消えたか?」
「そうみたいだね。ここまで強いとは思わなかったよ。でも、まだまだあ!」
彼女は距離を詰めて殴ろうとしたが、その腕に何らかの衝撃が襲い、その勢いが止まった。めげずに蹴ろうとするも、その足にも何らかの衝撃が襲ってきたことで止まってしまった。
「無駄だ。その程度の攻撃なんざ、どうとでもなるんだよ」
彼女は再びお腹、足、腕、顔に強い衝撃に襲われてふっ飛ばされてしまった。
(このままじゃ攻撃を受けるばかりか。なら!)
彼女は自身の両足の膝横に腕を1本ずつ生やし、高速であちこちを飛び回っていく。
「へえ。面白い女だな。そんな風に移動する奴は初めて見たよ」
彼は彼女の動きを見ることもなく、余裕の笑みを浮かべている。
(隙だらけ。何を考えてるか分からないけど、このまま行くしかない)
彼女は彼の背後を取って攻撃しようとした瞬間、またもや何かに殴られたような痛みが襲った。
「が!?」(どういうことだ。確実に取っていたはず。奴はこちらを見てすらいない。どうやって)
「凄いだろ。俺の魔術は」
彼が彼女の方を振り返ると、殴られたような痛みが何十回も襲い掛かり、そのまま地面を転がりながらあちこちをぶつけた。
「ぐ!? はぁ……はぁ……参ったね。ここまでダメージを貰うとは思わなかったよ。凄い魔術だ」
「理解できたか? この力こそが、俺が神の名を与えられた理由だ」
「確かに、ただの痛々しい男ってわけではないようだね。だが、負けるわけには行かない」
「気合入れてるとこ悪いが、お前じゃ俺に勝てねえよ!」
彼は再び距離を詰めようとする。ダレスは彼が自分の前に来ようとした瞬間、自身のお腹から手を2本列のように生やし、無理矢理距離を開けた。
「なに!?」
「これは……はあ!」
彼女はお腹に生えてた腕を消し、手のひらから腕を生やし、さらにその手から腕を生やして鞭のように振るった。
「くそ!」
彼はその攻撃を腕で防御し、距離を取る。
(さっきのような衝撃は来なかった。もしかしてこの魔術……少し試してみるか)
「ふん。舐めた事してくれるじゃねえか!」
彼が距離を詰めようとした瞬間、彼女は自身の両足の膝横から1本ずつ腕を生やし、高く跳躍した。
「逃がすか!」
彼が追いかけようとして跳躍しようとした瞬間。
「魔石解放!」
青い石が輝きを放ち、石から4個のガントレットが現れた。その内3つのガントレットは彼に落ちて行き、1つは彼女が掴んだ。彼はそれを避けた。ダレスはその避けた先に掴んだガントレットを投げつけた。
「ちっ。めんどくさいな」
彼に当たるかと思われた瞬間、ガントレットは何かに弾かれるように吹き飛んでいった。そして、ダレスはその一部始終をしっかりと観察していた。
「なるほどね。そういうことか。思ったよりも簡単そうだ」
彼女がそう言いながら笑うと、彼が強く睨み付ける。
「えらく余裕じゃねえか。対策でも見つかったか?」
「ああ。完璧な対策が見つかったよ。試しに攻撃してみると良い」
「言われなくてもやってやるよ!」
彼が近づいた瞬間、彼女は彼の顔を蹴り飛ばした。
「が!? これは」
「うん。対策成功。そーら!」
彼女はそのまま彼の顔を殴り飛ばした。
「てめえ。なんで俺よりも先に攻撃を当てられた」
「君の魔術。てっきり加速系の魔術かと思ったけどそうじゃない。君の魔術は攻撃を必ず当てるって感じのものだろ。ガントレットを弾いた瞬間、君の腕が少しだけ動いたのが見えたし、ガントレットを弾いた前後で、腕の位置がほんの少しだけ違っていた。それだけなら、君の攻撃が半端なく速いことで説明が着くかもしれない。だが、君の攻撃はどれだけ防御してもそれを通り抜けた。なら、君の魔術は加速系ではなく、絶対命中みたいなものだと判断したけど、当たりだったみたいだね」
「やるじゃねえか。この短時間で俺の魔術を見抜くとはな。だが、その程度じゃまだまだだ!」
彼が再び距離を詰めると、その瞬間に顎を蹴られた。
「ぎゃ!?」
「顔を殴りまくったお返しだよ!」
そのまま彼の顔を蹴り、さらに腹を殴って大きくふっ飛ばした。彼は受け身を取ることも出来ずにふっ飛ばされ、地面をゴロゴロと転がっていった。
「そしてもう1つ。君の魔術は発動する時、腕か足のどちらかがぴくりと動く。それを理解出来れば、攻撃させる余裕は与えないよ。さあ。もっと君の力を見せてみなよ。神の名を与えられた奴だ。この程度で終わる奴じゃないだろ」
彼は立ち上がると、口の中に溜まった血を吐き出した。
「やっぱ面白い女だな。ますます物にしたくなった。出来れば五体満足で捕らえたかったが、本気でやるか。
破壊を破壊して破壊せよ。我こそは力の悪魔。全てを破壊し、ねじ伏せる。存分に泣け。喚け。絶望しろ!」
彼の赤い目が輝きを放ち、両手にヒビのような模様が入る。それは腕まで広がっていき、彼の背中から1対2枚の黒い天使のような翼が生えた。
「そのヒビ模様は……カイツと同じ。それに、その黒い翼は」
「模様がカイツと同じ? ああ。そういえばあいつ、これのオリジナルを使えるんだったな。ほんと、なんであんな奴がミカエルに選ばれたのかね。無能の劣等種だったくせによ」
「? なんの話だ」
「気にする必要はねえ。どうせ分からないだろうし、お前はここで終わるかもしれないんだからな」
彼がそう言った瞬間、彼は一瞬で距離を詰めた。そのスピードはさっきとは比べ物にならず、気が付いたらその場にいた。そのせいで、彼女も反応が遅れてしまった。
「しまっ――!」
「おせえよ!」
彼の腕がほんの少しだけ動いた瞬間、何百発もの打撃を入れられたような衝撃が襲い掛かる。パワーも何倍にも上昇しており、尋常ではない痛みが彼女を襲う。
「あが!?」
「あらよっと!」
彼がそう言うと、横腹を蹴られたような衝撃が襲い、水槽に叩きつけられた。
「ぐあ……はぁ……はぁ……これは凄いね。ここまでパワーアップするとは思いもしなかったよ」
彼女は楽しそうな笑みを浮かべており、敵がパワーアップしたことを心底喜んでいた。
「この状況で笑うか。ほんとに面白い女だぜ。もっと笑わせてやるから、簡単に死んでくれるなよ」
「それは嬉しいね。死なないように頑張るから、もっと君の力を見せてくれ!」
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