第26話 メリナとの再会 からの決闘!?

 メリナ、リナーテの2人がパーティーから脱退し、アレウスは死にたくなっていた。怪我の治療を終えた彼は、ゾンビのように裏路地を歩いている。


「なんで……どうしてこんなことに」


 元々は彼がカイツを追放したことから始まり、リナーテたちに嫌われ、ついには1人ぼっちになってしまった。


「もう1度やりなおしてえなあ……そうすれば……女たちも沢山寄ってきて」


 まるでうわごとのように呟きながら歩く彼に、近づく影が1つ。


「ならばその願い。叶えてあげるのだ」


 彼が振り向くと、黒いフードを被った小さな人がいた。声は少女のような雰囲気があるが、どこか少年らしさも感じる不思議な声をしていた。


「あんたは?」

「僕? そうだねえ。僕のことは、モルぺウスと呼んでほしいのだ」

「モルぺウス……で? 願いを叶えるってどういうことだ」

「言葉通りの意味。あんたに、願いを叶えるための力をあげるのだ」


 そう言ってフードの人物は右手を突き出す。その手のひらには、天使のような羽の模様が2対4枚描かれていた。








 メリナがどんな人物かというと、穏やかで心優しい人物という評価だ。俺がアレウスのパーティーにいた頃、彼女はいつも俺やパーティーを助けてくれた。アレウスとリナーテが喧嘩をしていた時は


『だから! お前は援護に徹した方が良いって言ってんでしょ! 攻撃役は私とカイツに任せた方が良いのよ!』

『そういうわけにいくか! 守られてる立場なんてかっこわるいだろ! 援護とか役に立たなさそうなものじゃなく、俺も戦いたいんだよ!』

『あんたみたいな雑魚が戦っても迷惑なの! 大人しく引っ込んでろボケカスが!』


 2人が喧嘩し、収集が着かなくなると思われた時、彼女がクッキーが沢山入った皿を持ってやってきた。


『こーら。喧嘩はやめ』

『だってメリナ! この馬鹿アレウスが分からず屋で』

『リナーテ様。人のことを馬鹿やカスなどと言ってはいけません。それに、彼に補助に回ってほしいのなら、ちゃんとそうしてほしい理由を言って、納得させるべきです。感情的になってはいけません』

『……はい。ごめんなさい』

『アレウス様もですよ。守られてる立場がかっこ悪いと思う気持ちは分かります。しかし、戦いでかっこやそんなものを気にしていては、すぐに死んでしまいます。戦いに必要なのは、泥にまみれ、何があっても勝つことをや生きることを諦めない事です。技術や力も必要ですが、一番大切なのは諦めないことをやめない事です。それに、戦いには役割があるのです。人を援護する。これだって立派な役割です。なにもかっこわるいものではありません。私は回復役で戦うことが多いですが、私はかっこわるいですか?』

『いや……メリナはかっこいいと思うよ』

『なら、あなただってきっとかっこよくなれます。援護する者同士、一緒に頑張りましょう』

『……分かったよ。俺も援護役として頑張る』


 彼女がすべて丸く収め、パーティーにとって一番良い方法を取ることが出来るようになった。彼女は俺たちパーティーの緩衝材であり、いつも俺たちを助けてくれた。今のウェスト支部でも、きっと同じように人を助けてくれていることだろう。






 リナーテのいる部屋を出て、俺たちはまた大広間に戻った。リナーテはそのまま3と書かれた扉に進んだ。扉には使用中と書かれた木の札がかけられている。下には使用している人の名前が書かれており、そこにメリナの名前があった。


「うん。やっぱりこの時間はここにいたね。カイツ、心の準備はOK?」

「心の準備って……そんなにすごい変化なのか?」

「ちょっとビビるくらいにね。じゃあ開けるよ」


 彼女が扉を開けると、そこは酷い状況だった。何十人もの男が地に倒れており、1人の女性が、2人の男の首を絞め上げていた。そこに立っていたのは、茶髪のスタイルが良い女性。だが


「これで分かったか? てめえらカスどもがいくら足掻こうが、このわたし様には勝てないんだよ。覚えておけ。クソカスどもが!」


 髪をオールバックにし、服はなぜか袖やズボンがズタズタになっていた。口調は悪いどころのレベルではなく、穏やかさのおの字も感じられない。幻覚でも見せられてるような気分だ。目の前の光景は、本当に現実の光景なのだろうか。


「リナーテ。あれは……誰ナさん?」

「メリナよ。穏やかで心優しい人だったメリナ」

「いや、あれはどう見てもメリナじゃないだろ。何かがあってキャラが変わってるにしても、あれは変わってるとかいうレベルじゃなくて別人だろ。そっくりさんか双子の姉妹と言われたほうがまだ納得がいく」

「いやー。彼女がああなった経緯は、聞くも涙語るも涙の物語が」

「うるせえぞクソ外野どもおおおおおおお!!!」


 リナーテと話をしてると、メリナが首を掴んでた男をぶん投げて来た。


「あん? おいおいおいおい! これはどういうことだリナーテええええ!!」

「え? どういうことって?」

「そこのぱちもんカイツだよおおお! 見た目はそっくりだが、魔力やオーラが全然違うじゃねえかよおおお!」


 魔力やオーラが違うって。もしかして、六聖天の力を使えない影響なのか? だからってぱちもん扱いは酷いと思うが。


「いや。何言ってるのさ。確かにちょっと弱っちいオーラになってるけど、彼はカイツだよ」

「そうだ! メリナ。俺は本物のカイツ・ケラウノスだ」

「うるせえぞクソカスどもおおお!」


 彼女は聞く耳持たず、もう一人の掴んでいた男をぶん投げて来たので、それを躱した。まずいな。頭に血が上ってるみたいだし、話で解決するのは難しそうだぞ。


「カイツが、カイツがそんなよわっちいオーラのクソカス野郎なわけねえだろおおお! そもそもあいつは、私が危ないときも守ってくれず、他の支部にいたじゃねえか。こんなところにいるはずがねえんだよ!」

「いやー。参ったね。彼女、完全に聞く耳持たずだし、どうしよ……!」


 あ。今ろくでもない事思いついたな。リナーテの顔が明らかに悪人面してる。


「そうなのよー。こいつってばカイツの名を騙る極悪人でねー。あんたに裁いてもらおうと思ったのよ」

「!? リナーテ。何を言ってーむぐぐ」


 アリアの口をふさぎ、リナーテは扉の前にダッシュしていくが、彼女が扉を開けるより先に、その腕を掴んだ。


「おいリナーテ! 一体どういうつもりだ!」

「いやさあ。あそこまで頭に血が上ってる奴だと話は通じないからさ。実力行使でお願い。私がするよりは、カイツがした方が説得力ありそうだし」

「……本音は?」

「なんか面白そうだから。あ、安心して。この場所なら、どれだけ大怪我しても大丈夫だから!」


 そう言って彼女は扉の先に逃げて行った。


「……あの性悪女がああああああああ!!!」


 ここを出たら真っ先にぶん殴る。


「おい。こっちを向け。ぱちもんカス野郎が」


 メリナのいる方を振り向くと、明らかにキレており、今にも殺しに来そうな雰囲気があった。


「百万回殺してやるから覚悟しろ。ここでなら、何億回殺しても問題ないからなあ!」


 参ったな。六聖天の力を使えない状態で、どこまでやれるか。


「それでも……やるしかないな」


 今逃げ出したらもっと面倒なことになりそうだしな。せっかくの再会だというのに、どうしてこうなってしまったんだ。

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