第74話 お化け屋敷ゲーム②

 ファイナルステージ


 『宝探し』


 もう最後かぁ…。このゲームはセミファイナルは無いのだなと思った。


 説明のアナウンスだ。

 『この部屋から脱出する鍵を探してください。鍵の形状は部屋のスクリーンに写してあります。』


 スクリーンを見ると大きく鍵が写し出されて、クルクル回っている。


 最後の仕上げは脱出ゲームか!


 部屋の中には小箱がたくさん散らばって置かれている。

 その中身を一つ一つ開けて確認する。


 第三ステージの『かくれんぼ』の時は、オバケが隠れていたけど、今回のは小箱に手を伸ばすと、邪魔するように四方八方から現れる。

 妖怪やオバケなど、オールスターな感じだ。

 手に血の雫がベタッと付くような映像もある。


 俺は慣れてきたけど、藍田は相変わらず怖がっている。


 小箱は、ハズレを開けるとびっくり箱になっていて中から何か飛び出す。


 オバケが出て、箱開けてと、その度に叫ぶ藍田はやっぱり面白い。


 ほとんど最後の箱くらいで、やっと鍵を見つけた。


 鍵を開けて部屋から脱出して、出口へ向かい外へ出る。

 藍田を見ると髪は乱れてボロボロになっている。

 出口に1番近いベンチに座って、気持ちを整える。


 俺:「なんか、怖かったね。」

 本当は、藍田に意識がいってたので、オバケの怖さはそんなに無かったけど、藍田寄りに合わせてみた。


 藍田:「ね!すっごく、すっごく、怖かった!もう二度と無理!

 あんなのさ、笑って出て来られる人が分からない。

 はー、本っ当に怖かった!」


 うん、本当に怖そうに見えた。


 俺:「ねえ、観覧車にでも乗らない?高いところ苦手?」

 藍田:「大丈夫。…うん、せっかくだから乗ろう!」


 歩き出しヨロヨロしてた藍田は、観覧車に着くころには普通に戻っていた。


 俺達は観覧車に乗り、向かい合って座る。


 俺:「ジェットコースターとかはどうする?乗る?」

 藍田:「いつもは乗るんだけとね、割と好きだから。でも今日はもう相当疲れたから乗る元気ない。」

 俺:「だよね。

 なんかさ、中学以来だけどさ、藍田ってそんなに変わってないよね。」

 藍田:「それはどういう意味?良い意味?悪い意味?」

 俺:「もちろん良い意味…かな?どうかな?」

 藍田:「えー、ちょっとぉ!」


 その後、ふっと会話が途切れてどうすればいいか分からず外を眺める。

 これまでも何回も会話が途切れる場面はあったけど、観覧車だと何故か焦る。

 何か会話…何か、えっと。


 俺:「あ、藍田ってさ、好きな人とかいるの?」

 藍田は、え⁉︎って顔をする。


 俺:「ごめん、突然だったな。」


 藍田:「ううん、別に。な、何で?」


 俺:「あ、いやー、特にアレなんだけど…、そ、そうそう、藍田ってカケルくんのこと好きなのかなーと思って。」


 藍田:「カケルくん?違うよ!何で私がカケルくん?」


 俺:「いやー、なんとなく。そっか、違うのか。そっか。」


 藍田:「本宮は?好きな人とか、いるの?」


 俺:「オレはー、あ」


 〝藍田が好きだ〟と言いかけて、ハッとした。

 もし、今ここで告白して振られたら…?

 まだカケルくんから出された課題が残ってる。手書きのレポートを2人で書かなきゃいけないのに、…気まずくなったら困るよね?


 俺:「っあー、そうだね、まぁ。

 あ、それよりさ、藍田って、中学のとき女子が好きって噂あったのって、何で?」


 藍田の顔が一瞬強張った。

 

 ヤッベ!俺、やっちゃった⁉︎

 焦って困って話題変えようとしてつい言ってしまった…。


 藍田はハーっと大きくため息をつく。


 藍田:「やっぱりその噂、皆に広がってたんだぁー。」

 藍田は両手で顔を隠してガックリする。


 俺:「ごめん!嫌なこと言って、ごめん。加藤はさ、違うって言ってたけど、大丈夫、オレ藍田がもしそうでも、全然平気。あの、偏見とか全く無いから。」


 藍田:「もちろん私だってそういう偏見持ってないけど、違うの、私はそうじゃないの。」


 俺:「違うの?」


 藍田:「うん、違う。

 あれね、誰かはちょっと言えないんだけど、私を好きだって言って告白してくれた男の子がいて、私は断ったんだけど、その男の子を好きな女の子が流した噂らしいの。」


 俺:「そうなの?何でそんな噂…?」


 藍田:「同じクラスの子が、噂話を張本人から聞いたって私に教えてくれたの。何でそんな噂?って聞いたら、〝私の好きな人を、すんごい酷い態度で振ったらしいの。きっと、男子に興味無いんだよ。多分、女子に興味ある人なんだ。じゃないと、普通そんな酷い扱いしないよ〟って言ったって。」


 俺:「そうなんだ。ちなみに、そんな酷い振り方だったの?」


 藍田:「うん、多分…。すみません。」


 いやー、それはいいけど、もしかして俺もこっぴどい振られ方しちゃうんだろうかと、思ってしまった。

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