佑の秘密
第57話 イノマスト
「いらっしゃいませ、
お待ちしておりました。」
あのキャンプから1週間経ち、佑は他3人の男性と共に、
佑達は、溜乃の会社『イノマスト』の重役原口と、営業の草川に出迎えられ、会議室へと通される。
佑は溜乃の会社の人に会うのは初めてで、名刺を渡される。
佑も慣れた感じで名刺を出し、名刺交換をする。
『戸茂手グループ
Towmo Dell
取締役 戸茂手 佑』
これが佑の名刺だ。
戸茂手グループは、食品やホテルや不動産など、幅広くいろんな事業を手掛けているグループ企業で、『Towmo Dell《トーモデル》』はその内の会社の1つだ。
佑は戸茂手グループの創業者の子孫で、大学生ながら重役をしている。
まあ、重役といっても平取という肩書きだが、学生なので十分なものだ。
“名前だけ”とやっかむ人もいるが、親が決めたことだし、と佑は気にしていない。
会社の書類には目を通し、重要な会議にも出席している。
今できることはきちんとやっているつもりだ。
ただ、大聖とアユタ達、大学仲間には、大きな会社の清掃のバイトをしていると言ってあり、このことは内緒にしている。
佑と一緒に来た他の3人は、同じくTowmo Dellの営業1人、名前は山田と、システム開発2人、鈴木と佐藤だ。
佑:「今日急に伺ったのは、弊社で出資しているゲームについてです。」
原口:「はい、失礼ですが、どのゲームについてでしょうか?
いろいろなゲームに出資していただいておりますので…。」
佑:「半年ほど前、予定していたゲームの代替えで御社がご提案されたものです。2ヶ月ほど前にリリースされましたかね?
携帯の無料ゲームです。」
原口:「あ、あのゲームでございますね。何かありましたか?」
山田:「戸茂手に変わりまして、私が発言させていただきますが、最初に企画書とプロモーションを見せていただいたのと、完成品として見せていただいたもの、また実際にリリースされたのではそれぞれ違う気がするんです。
こんな事言いたくないのですが、あんまり評判もよろしくないようで…。」
原口:「それは大変申し訳ございません。いろいろ手直しはしているのですが…。」
山田:「完成品は一部見せていただきましたが、ほとんどプロモーションと同じ部分だったかと思います。
なので、それで良いと思いましたが、リリースされたのはなんか思ってたイメージと離れているようなんです。
このままだと、今後の出資の見直しをせざるを得ないかなと社内で検討しております。」
原口:「あのプロモーションに沿って、そのまま作成しましたので、最初のイメージ通りだとは思いますが…。」
山田:「それでですね、最初に見せていただいた企画書とプロモーションをもう一度確認させていただきたいのです。
事前にお話ししなかったのは、申し訳ありませんが、ご対応していただけますか?」
原口:「かしこまりました。ただ、急なことですので、担当者に確認しますが、準備に時間がかかるかと思いますがよろしいでしょうか?」
山田:「そうですね…。急に言っておいて申し訳ありませんが、あまり時間もなく…。なるべく早くでお願いします。」
佑:「あと、別件なんですが、ちょっと確認したい案件がありまして、できれば企画書の元データをパソコンで確認させていただきたいのですが、可能でしょうか?」
原口:「データでですか?かしこまりました。ではしばらくこちらでお待ち下さい。」
イノマストの原口と草川は、会議室から出て、急いで担当者のところへ向かう。
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