第23話ダンジョン閉鎖とクラス対抗戦

【ダンジョン閉鎖とクラス対抗戦】


「昼休みにも言ったが、当局から正式に厳戒令が出た。


 15階層より下の階層は国防軍の調査が終了するまで立ち入り禁止となったので、探求高校では昼に連絡した通り11階層以下は閉鎖され、立ち入り禁止となった。


 夏休み中はなるべくそれぞれ各自、地上で訓練するように、また、そういう事もあり、急遽夏休み明けにクラス対抗戦を行う事になったから、夏休み中はさぼらずしっかり訓練すること、さぼっていたらばれるぞ、いいな。


 具体的には今のパーティー単位でわれわれDクラスはCクラスと模擬格闘戦を行う、詳細は後で連絡するから、以上」


 それを聞いた皆はざわざわ


 とりあえず、そのまま4人で固まって、ミーティングなんだけど、今日はそれどころではなく 


「Cクラスと対戦なんだって・・・・・私達Dクラスってレベルが最低だから・・・・・・」


「勝てないよ、Cクラスだもの」 

「ああ、どうせCクラスを勝たせて自信を付けさせたいんだろうな」

「こんな事があるのか」

「うん」

 まずい、俺は学校内の情報がこのパーティー以外ほとんどない。


 このパーティメンバー以外とはほとんど口をきいた事もなく、皆と練習する以外は真直ぐに帰って、ゆうとさゆりさんと一緒だったし、特に最近は須藤さんと会うようになってからそっちも忙しくって、学校の事はまったく気にしていなかった。


 ましてや他のクラスの情報なんて・・・・・・しかし、対人戦は対モンスター戦とは違うよな~、

 さぼり防止対策なんだろうけど伊達君の言う事も一理あるかも

 皆、Cクラスとの対抗戦で意気消沈している。


 ここはなんとか盛り上げなきゃ

「それじゃあ夏休みは特訓だね」

「え? 高谷君、ひょっとして勝つ気?」

「もちろん」

「でも相手はCクラスだよ」

「うん、だってAクラスじゃないんだよね」

「そうだけど」

「大丈夫だよ、Dクラス全員がCクラス相手に全勝できないかもしれないけど、俺達のパーティーだけなら、夏休みに特訓すればCクラスの何組かには勝てると思うよ、ね」

「でも・・・・・・」

「夏休みだったら、時々さゆりさんにも見てもらえそうだし、ゆうも協力してくれるし」

「確かにあの2人だったら・・・・・・でもいいのかな~」

「Cクラスだって、きっとそういう対策すると思うよ、だって彼らは絶対俺達に負けられないだろ?」

「そっか、そうだよねCクラスがDクラスに負けたら、大変なことになっちゃうよね」

「そうだよ、俺達にはさゆりさんがついている。

 ゆうだって、レベル教えてくれないけど、どう考えても普通じゃないよね、かなりレベル高いと思うんだよ」

 ハハハ俺もなんだけど言えないし、まあそう言っておけば皆もやる気出すよね

「うん」

「じゃあ少しずつだけど準備しようよ」

「うん」

「あのー、実は、俺、クラスの皆とほとんど話したことないんだ」

「うん、わかる、高谷君って私達と練習する以外、すぐに帰っちゃうよね」

「そうなんだよ、だからクラスの人達って話したこともないし、他のパーティーとかも、全然知らなくって」

「ハハハ、それってぼっちに近いじゃん」

「…うん…」

「でも、高谷君がぼっちってなんか変」

「ほんと、あんなにすごい人達が知り合いにいるのにクラスではぼっちって、変わってるね」

「まあ、高谷君はあれだけの人達と知り合いだから、そっちが忙しいんだろうな」

「ああ そんな感じかな、で、Dクラスの情報とCクラスの情報なんだけど、Dクラスのパーティーって他の皆はどれくらいの強さなんだろう?」

「そういえば、私達もあんまり知らないかも」

「うん、私たちも訓練ばっかりであまり皆とかかわってこなかったね」

「うん、でも高谷君ほどじゃないけどね」

「すみません」

「いや、いいんだ、さゆりさんやゆうこさんを紹介してくれて、おまけに皆でダンジョンに入る事までしてくれたんだから、感謝してるんだ」

「そういってくれると助かる 」

「ところで、Dクラスで誰が一番強いんだろう?」3人が考えながら、大谷さんが

「姫野君達かな~ 」

「強そうなパーティー?」

「うん、確か8階層まで行った、って言ってた」

「それって俺達と同じってこと? 」

「うん、でも、ほら、私達って高谷君がいるし、さゆりさん達に10階層まで連れて行ってもらったから」

「いや、俺がいても、実際に倒したのはパーティーの皆だよ」

「でも・・・・」

「それは、俺がアサシンとして、パーティーに貢献したからだろ? 皆もちゃんと自分の役割どおりモンスターを倒したじゃない」

「うん、そうだけど」

「そうか、他のパーティーにはアサシンがいないから、って事?」

「うん」 

「でも、その代わりに前衛が2人とか、ウィザードがいるとか、そんな構成じゃない?」

「そうかも」

「じゃあ、今度調べて教えてよ」

「「うん」」

「それと、一番大事なのはCクラス情報だよね」

「そうよね、敵の情報は大切だよね」

「調べられるかな?」

「なんとかやってみるね」

「ありがとう、それじゃあ俺は、さゆりさんとゆうに夏休みの特訓のお願いしてみるよ」

「「お願いします」」

「じゅあ、さっそく帰って話してみるね」

「うん」

「じゃあ」

「「また明日」」

 そう言って、さっさと家に帰った


 //////////////////

 家に近づくにつれ、なんかすごくいやな予感が

 家に帰ると、ゆうだけじゃなくさゆりさんまでリビングで陽と話していたんだけど

 3人で『変態袋マン』の話か?・・・・・・


 探求高校生は戒厳令で10階層までだから陽はしばらくダンジョンに入れないので、その不満を言っていたらしく、それじゃあ、さゆりさんが訓練に付き合うとかで、滅茶苦茶喜んでいた。


 俺が帰ってきたので3人で俺の部屋に、陽は満足して自分の部屋に。


 部屋に入るなりゆうが

『変態袋マン』ボソっと、でもしっかり聞こえるように


 ちょっと間をおいて、さゆりさんが爆笑、つられてゆうまで爆笑、しばらく笑いが止まらず、俺はイヤ~な気分


 2人とも涙をながしながら


「まあ、そんなにイヤな顔をするな、身元がばれなかったんだし、あの変態マンが高谷だとは誰も気が付かないんだから、しかしコンビニ袋マンじゃなくて変態って、ププッ」

「そうよ、かっくんが変態だなんて誰もわからないって」

「ゆう、その言い方、おかしい、俺は変態じゃない、変態袋マンだ」

「そうね、変態じゃないわよね、かっくんは変態袋マンよね」

「そう」

「うん」

「えっ? いや、違う、俺は・・・」

「ハハハ、ごめんごめん」

「もう」


 そんなバカな話で今日1日は終わってしまった。

 次の日 さゆりさんから招集がかかり、3人で虎ノ門へ

 いつもの協会応接室。


 部屋にはいるなり、須藤さんは俺にむかって

「よう、変態袋マン」

「須藤さん、それはないでしょ」

「まあまあ、すごい活躍じゃないか、それと変態に付添う美人さん達も」

「「「須藤さん!」」」

「まあまあ、協会本部にこの変態と美女はもう1組の調査員だと報告しておいたから大丈夫だ。 まあ その~世間的にな、変態が所属している団体ってのが、良い印象はなくて、非公式という事になったけどな、でも、ちゃんと報奨金は出るぞ、それと装備品も最優先で支給するという確約も取った、悪い事ばかりじゃないだろ?」

「はあ」

 2人は黙って俺を見ている

「それと、協会の調査員でレベル60代の者を3人、15階層以下の深層を調査するという事になった」

「でも 国防軍が入るんじゃないんですか?」

「ああ、国防軍もそのうち入るが、彼らは地方のダンジョンの調査もあって随分先になる。まあ人手不足という事だ。だから続けて素材の狩り取りをお願いしたい」

「そういう事ですね」

「ああ、そういう事だ」

「はあ」

「そう、溜息ばかりつかないで、なっ、そうそう焼肉は好きか?」

「はあ」

「ぞぞえん、予約しておいたから、これから行くぞ?


「「はい」」「はあ」さゆりさんとゆうは元気だよなー


 須藤さんは終始ニコニコ顔で 4人でタクシーに乗って予約してあった “ぞぞえん” の それも個室に

「ほら、好きなだけ食べろ」

 そう言ってどんどん肉を焼いては勝手に俺の皿に載せる。


 俺も肉がおいしいからどんどん食べているうちに、なんかどうでも良くなって、食べ終わる頃は俺も満足


「君たちが助けた連中は、探求高校の1年のエースなんだろ?」

「はあ」

「Dクラスの高谷君に助けられたなんて知ったら、奴らの面目丸つぶれだろうし、Dクラスの生徒がエースより強いなんて知られたら探求高校も立場はないな」

「はい」

「しょうがないんじゃないか?」

「はあ」

「それでも、人命救助はすごい功績なんだぞ、おまけに探求高校の1年のエースを助けたんだから」

「水面下で探求高校から冒険者協会へ感謝の意がきていたそうだ」

「はあ」

「協会も鼻高々なんだよ、まあ、ただ、その恰好がな・・・」

「はあ」話を聞けば聞くほど、落ち込んでいく俺に

「いいじゃないか、君達のレベル、強さが別の形だけど、表に出て評価されたんだから」

「はあ」

「これからもよろしくな」

「「はい」」「はあ」

 そう言って手を差し伸べ

 さゆりさんとゆうはがっちり握手、それから俺にも手を差し伸べたので一応握手して今日はお開きに。


 帰りながら、本当は昨日話すつもりだった、夏休み明けのイベントについてさゆりさんとゆうに話すと

「そうか、そんなイベントがあるのか」

「はい、皆不安でしょうがないんです」

「そうだな、まあ夏休みだから手伝ってやるか」

「ありがとうございます」

「じゃあ、私も」

「ゆう、ありがとう、助かるよ」


 学校では、10階層まで限定だけど、一応は今までどおり週に1回ダンジョンに入って、わずかではあるけれど素材を狩りとって、学校に報告して戻ってきたら買取所に持って行く。


 普段は、格闘場で訓練、終わって何もない日は皆でミーティング、俺はさゆりさんとゆうと、時々須藤さんの日々。


 そしていつものように月曜日。大谷さん達が

「ねえねえ、これ見て、変態袋マンがまた現れたんだって」

 この前見た俺達の画像に、また、昨日日付のスレが続いていた。



 #変態袋マンが今度は6階層にあらわれた

 #『僕が変態袋マンだ』 って叫んでた

 #『皆安心してくれ、僕が皆を守ってやる』って

 #なんか3人でポーズを決めてた・・・変態ポーズ?

 #モンスターいなかった、きっと変態袋マンが倒したんだ

 #あのポーズ変 

 #変

 #やっぱ、変態

 #えー、なーんだ、ただの変態 

 #変態ポーズ

 #変態パーティー



「変態袋マン達3人のポーズ見てみたいな」

「6階層で会えないかなー」と楠さん

「ふ~ん」

 俺達じゃないけど・・・・・・


「今回は画像がないからわからないけど、すっごく強そうだって、守ってくれるって、安心だね」

「そうだね」

 へ~ 変態袋マンが現れたんだー、よくこんなはずかしい格好でダンジョンの中を走り回れたよな~

 俺じゃないけど



 #きっと、あれだよ、6階層だから余裕なんだよ

 #変態袋マンがいれば安心

 #でも変態

 #変態

 #!“

 #$%&‘$

 #$%(‘))(&&&’‘()“!

 #$%&



 ずーっとコメが続いている、何度も言うけど俺じゃないけど。

 学校から帰って部屋にいると、玄関がガチャガチャ、


「ただいま~」ゆうが俺の部屋にやってきて

「変態袋マン」また、ボソっと

「俺じゃないけど」

「うん、でもさー、かっくんも有名人になっちゃったね」

「なってない、俺じゃないもん」

「えーっ、でも、本物の変態はかっくんだよ?」

「だから、俺は変態じゃなくて変態袋マン!」

「そう、変態袋マン、だよね」

「あっ、またっ!ゆう!」またゆうにいじられた

「フフフ」


 俺は全面的にこの名前を否定したい!なのに2人は何も思っていなくて、こうやってゆうは俺をからかう。


「でも、偽物が現れるって、すごいね~」

「まあ、そうなんだけど、でも、あんな変態の恰好してまで目立ちたいのかな~」

「まあ、かっくんが思っているより、かっこいいって思っている人が多いってことよ」

「そっかなー」

「そうよ、だからかっくんもそんなに気にしないの」

「・・・うん・・・」なんか納得いかないけど、

 ゆうがよくわからない慰め方をしてくれて、

 ゆうがそう言うなら。


 その後も何回かこの変態袋マンが豊島ダンジョンに出没し、その度にネットで大騒ぎしていた。

 俺はあることを思いついた・・・・・・

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