第2話

 私は剛士には嫌だと伝え、彼自身も長距離の運転で同意してくれて適当な言い訳をして無理、と伝えると電話してくれたのだ。だがそこは立ち下がらないあの義父母。


 私が二人目を出産する前にとかなりのもうプッシュ。娘の時は実家へ里帰りしたが母の調子が良くならないからと二人目はこっちで産むと決めた。剛士が育休を取ってくれたそうだ。でも1ヶ月しか与えられなかった。もっと取れるらしいけど取ると自分の立場が無くなる、と。まぁ世間的にも取るのは恥ずかしい、剛史の会社同様出世が厳しくなるとかよく聞く。


 こちとら二歳のよちよちのオムツ取れてない娘がいてさらに生まれたばかりの赤ん坊と産後体ズタボロの母親だけなのよ。

 そりゃ実家に里帰りしない、もちろん義父母からも戻ってこちらで産めば良い、穂乃果の世話も赤ん坊の世話もするからとは言ってくれたが断ったのも自分達だ。


 なんとかゴリ押しして剛士は一週間の育休から1ヶ月の育休に伸ばしてくれた。

 私は専業主婦だし彼氏が戦力がいないからそこは彼の出世、給料、我が家のライフラインを考えてのことだ。1ヶ月さえ乗り切ればなんとかなる。


 しかしまぁ土日しか休みがなくて土日の休みでさえも疲れたと寝てしまう彼がどう育休を使って娘を世話して家事をしてくれるのだろうか。自分のことや家事は自分がやるとして、穂乃果の世話だけは頼みたいところだ。



 そう、戻ってこいと言われてるのももともと義父母と私たち夫婦は敷地内同居をしていた。結婚してすぐ。


 私は結婚してからすぐ家を建ててどこかで住むかと思っていたがもう勝手に義父が家を敷地内に建てていたのだ。新築といっても私たちに断りもせず自分達の勝手ながらの家を。思い憧れていたアイランドキッチン、それぞれの個室、キッチンの材質とか家具とか照明とかカーテンとか考えるのが楽しみだった。なんなら自分の中でも妄想して家電家具屋さんでウハウハしていた。


 なのに結婚が決まった半年後に勝手に家を建てた、そこに住めですから。

 剛士も知らなくて驚愕してたけどまぁいいか。と。そのわけは建築費用は全て義父の退職金で払ったそうだ。地元の知り合いが作ってくれたものだから安くなったと。

 キッチンはとても小さく独立型、カウンターなんてないし、リビングの様子はわからない。書斎は広め。間仕切りで分離できる将来は子供部屋となるだろう大きな部屋。もちろん私の部屋はない。

 そしてなぜかもう置いてある家具家電。義父母たちがチョイスしたという中古の食器棚、テーブル、椅子、ソファー、カーテン。中古ともあってテイストもバラバラ。あとお手入れの大変な飾りの照明は昭和製のものだった。


 揃えてくれたのは本当にありがたいとしか言えないが、選ぶ余地もなかった。


 それらを丸々コミコミで毎月剛士が義父に家賃として支払えば他の場所でマンションで暮らすくらいの家賃だし、ローンもしなくていいから普通に家を建てるよりマシだと言ってそのまま入居する形になった。最悪だ。いや、まだ住むところがあるだけいいのか? 文句は言っちゃダメだ、と、わたしは言い聞かせた。


 それにまだ敷地内同居は良いわよ、私なんて完全に水回りも同じの完全同居よ、と高校時代の友達が言っていた。


 だからそれよりはマシ、大丈夫と思ってたけどダメだった。

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