かつての嫌な奴

 正直、僕はこいつが嫌いだ。

 魔導士で偉いかなんか知らんが、王宮時代いつも上から目線で僕に嫌味を言ってくる奴だった。


「僕の邪魔をするな!!」


 邪魔と言われても僕達の行く手を阻むのだから、むしろこいつの方が邪魔だった。


「なんで、精霊王を殺そうとする?」

「決まっている、実験するためさ」

「実験?」

「あぁ、精霊には無限の可能性がある……交配・魔力の根源・素材……どれをとってもいい実験材料だ」


 聞くに堪えない言葉……むしろ、腹が立ってきた。

 動物はおもちゃじゃない。

 生態系の上で殺すのは仕方がない。

 生きていくために必要な事だ。

 しかし、これは違う。


 明らかに私利私欲にして何より、僕の家族の故郷だ。


「お前、精霊を実験に使ったことは?」


 そういうと、彼は汚い笑みを浮かべた。

 本当に汚い、人であるか疑わしいほどの汚い笑みだった。


「あぁ、あるぜ……捕らえた精霊を人と配合して生み出したのを」


 そこで彼の言葉は止まる。

 僕が口を魔石で塞いだからだ。


「聞くに堪えん、貴様は後でゆっくり苦しめて殺してやる」


 そう言って鼻だけ残し、彼を覆う。 


「さて……」


 他にも数名いたが、撤退しているのだろう。

 モンスター達は統率が取れなくなり、互いに喰らいあっている。

 これで、少しすれば残り一体になるまで殺し合うだろう。

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