龍石

 中に入っていたのは、魔力を帯びた石だった。

 その石は龍の核とされている石だが、実際は違う。

 龍は、魔力をその体内で生成して吐き出すことで魔力の膨張を抑えるそうだ。


「はい、これ」

「いいよ、別に」


 僕がお金を渡そうとすると、彼女は断ってくる。


「そういうわけにはいかない」


 フィオナの大切な資産だ、それ相応のものを渡さなければつり合いが取れない。


「頼む、受け取ってくれ」

「……わかった」


 僕の言葉に、彼女は頷きお金を受け取ってくれた。


「それじゃあ、帰るぞ」

「ちぇ~、久々に暴れられると思ったのに」


 暴れる気だったのか、君は……。


「え~、今日は止まってってよ~」

「それは出来ないんだ、すまない」

「なんで?」


 答えることは出来ないでは彼女は納得しないが、正直に話せば彼女にも危険が及ぶ可能性がある。


「理由は言えない、だけど片付いたら皆で遊びに来るよ」

「絶対だよ?」

 

 僕の言葉を察してか、彼女は笑顔で見送ってくれた。


「これで、いいのか?」

「ありがとうございます」


 そう言って受け取るラナーク達はどこか嬉しそうだった。


「そう言えば、何に使うんだ?」

「そ、それは……」


 目があちらこちらに動いている。

 何か隠してるな。


「何をする気だ?」

「ちょっと作ってみたい物があってね、その素材が欲しかったの」


 作ってみたい物というのは気になったが、これ以上問い詰めるとエレナにデリカシーと言われどうなので黙ることにした。

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