お別れ

「行っちゃうです?」

 

 微精霊Cが僕を見て寂しそうに言う。

 

「あぁ、僕は勇者だからね……責務を果たさないと」

「そう、ですよね……」

「また来るさ、それまで頑張って鍛錬に励め」

「えっと……」


 微精霊Cは、何か言いたげな顔をしている。

 恐らく精霊王が何か入れ知恵したのかもしれない。


「間違っていたらすまないけど、連れて行くことはできないよ」


 当たっていたのか、微精霊Cはそう言われて俯いている。

 精霊王の頼み、ましてや自分の命が掛かっているのだ。

 必死になるのも当然だろう。

 

「だけど、君の命は必ず救って見せる……僕なんかよりもっと優秀な奴を連れてくるからさ……」


 そう言うと、彼女は僕の服の端を小さな手で掴んでくる。


「……私は……です……」

「ん?」


 か細い声で言うので樹木や風の音でよく聞こえなかった。


「最後に私と戦ってください」

「今はそんな余裕は……」


 その刹那、彼女は剣を抜いて鋭い踏み込みを見せる。

 真剣なのに迷いがない踏み込み、昨日の彼女の動きとは違い、何か信念を持っていいる感じだった。

 

 彼女の剣を錬成した剣で弾き返す。

 そして力負けした彼女は、後ろに飛ばされると同時に何かを僕に投げつける。

 それは光っていた。

 視界がチラチラして視界がフラッシュバックする。

 しまった、視界が……。

 初見殺し、完全なる不意打ちだった。

 

「暴風」


 瞬間の僕の周りに突風が吹き荒れた。

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