57話

 これなら戦えるか……。

 彼女は一瞬驚いた顔をしたが、更に速度を上げてくる。

 まだ上がるのか!?

 徐々にスピードが上がっていき、次第に追いつけなくなってくる。

 怒涛の攻撃を必死に受け流す。

 息をつく間もない。


 どのくらい時間が流れただろうか……。

 数分…いや、数秒しかたってないだろう。

 受け流し続ける。

 彼女の攻撃を受け流して受け流して受け流して受け流して、彼女は後ろに下がろうとする。


 好機……いや……。


 彼女が後退する好機を見逃す。

 否、彼女は両方備えていた。

 僕が攻撃に転じれば、負けていた。


 後退した彼女の頬から汗が滴り落ちる。

 流石の彼女でも息を切らしている。 

 魔法を解除する。

 彼女ももう一度あのスピードを行使するのは厳しいだろう。


「もう終わりだ、君も限界だろ?」

「まだ、私は……」

「仕方ない、これは使いたくなかったけど仕方ないか……」


 ナンバー7と書かれたボックスを取り出す。


「≪≪出てこい、レイン≫≫」


 澄んだ蒼色の盾が現れる。


「へぇ、そんなの隠してたんだ……それにしても盾?」

「あぁ、君相手ならこれが一番かなって……レイン、起きてるか?」


 声を掛けるが反応しない。


「おいレイン、出番だ……って聞こえてるか?」


 ………おかしいな?


「おーい、レインちゃーん」

「……ヤダ」


 辛抱強く、声を掛けると幼い声で返事が返ってきた。 

 

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