12 勇者の生き残り

 僕はの事を思い出す

 僕の幼馴染の一人で二つ前の勇者、エレナだ。

 彼女は14歳の時、聖剣の所持者になった。

 しかし選ばれたことで彼女は戦地に駆り出されてしまった。

 幼く、ただの少女だった彼女は僕との別れに、


「私、必ず生きて帰ってくる……約束……」

 

 小指を出して言う彼女の手は震えていた。

 彼女は優しい少女だった。

 僕も行きたかったが、勇者のお供が出来るのは熟練された騎士か魔導士だけだった。

 

「必ず、僕も君の近くに行くから、それまで生きて待ってて……」

 

 その言葉に彼女は嬉しそうに涙を浮かべている。


「うん、絶対……生き残って待ってる……」

「あぁ、必ず君を守ってみせる」


 そしてエレナは戦地へ赴き、そして帰ってくることはなかった。

 国からは、戦場で魔王軍に敗退したと報道された。

 王にそのことを聞いたが、実際の所、彼女の死体は誰も見ていないらしい。

 その際あのクソ王は魔物の餌になったのではないかと言った時は本気で殺してやろうかと思うくらい追い込んだ。

 まぁ、おかげで条約を結ぶ際に事が優位に運んだのだが……。

 

「なぁ、聞きたいんだけど……エレナって紅い髪の少女って知ってるか?」


 もし、生きているのなら会いたい。

 僕もそうなのだが、彼女の両親は健在なのできちんと生きてることを知らせておきたいのだ。


「あぁ、エレナか……」

「知ってるのか!?」

「えっと、お主……あんな奴と知り合いなのか?」


 怯えた表情のウルスラ……彼女は滅多に怯むことはないのに、エレナの事を聞くと怯えたような顔になる。

 

「もしかして、魔王軍にいるのか?」


 ウルスラはこくりと頷いた。



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