映画批評 『帝都護衛官劇場版 おてんばお嬢様の即興劇!』

「お嬢様が頑張っているのに、俺達が後ろで隠れるのは駄目だろうが!」


――世界よ刮目せよ!これが最強お嬢様だ!!!――



 2003年春にドラマ『帝都護衛官』の映画版、『おてんばお嬢様の即興劇』が公開された。

 この映画版はドラマ版の地味さと打って変わって銃弾が乱れ飛ぶ派手なガンアクションの大興奮エンターテイメント映画に仕上がっている。

 あらすじは、お嬢様が世直しと称して悪を叩いていることに気付いた、彼女を護衛する主人公の帝都護衛官達がその行動を阻止しようとあがく前半部から、お嬢様が大規模テロ組織の標的にされたことを機に、対立していたお嬢様と主人公達が共闘する後半部へ続くというストーリー。

 何よりも見所なのが、そのお嬢様役である桂華院瑠奈公爵令嬢の華麗なガンアクションにある。

 特別出演のため、彼女の学校が休みとなった冬休みのみでの撮影だったが、ミス一つ無く全て完璧に仕上げた事で映画関係者の度肝を抜く。

 圧巻なのが、お嬢様の9ミリがことごとく敵弾を撃って弾く所で、この圧倒的な射撃芸が見どころになっている。

 このお嬢様の射撃シーンは特別音楽が用意され、まさに無敵時間の如く敵を倒す倒す倒す。

 かと思えば、防弾布を張られた護身用傘を剣に見立てた剣術も見せて、護衛官に護衛の必要性を考えさせるぐらいこのお嬢様は隙がない。

 それだけではなく、米国で撮られたラストのビル爆破からの脱出はスタント無しでやってのけ、その圧倒的な運動量と華麗なアクションが観客を魅了する。

 忘れてはいけないが、話の軸は帝都護衛官(岩沢プロトップ俳優)と桂華院家の女性護衛(桂華歌劇団トップスター)と北海道出身の俳優の掛け合いだが、これも楽しく面白く、そしてスリリングに魅せてくれている。


「何でそれだけ銃撃戦くぐってきたのに、そんなに平然としているんだよ?」

「これぐらいできないと、お嬢様の護衛なんて務まりませんわ」


 一方でこのドラマは社会風刺としての一面を強く見せつけているのも見逃せない。

 不逮捕特権と二級市民犯罪だ。

 お嬢様がヒーローよろしく悪を討つ事は本来ならば犯罪行為である。

 だが、当のお嬢様は不逮捕特権に守られており、その罪を帝都護衛官は問う事ができない。

 この不逮捕特権は昭和中期から今日にかけての大規模不祥事に必ず絡み、最後に巨悪を取り逃がす元凶として多くのドラマや映画で話題になってきたことである。

 それを、ダークヒーローの主柱として逆用したことが、今回の映画の真骨頂である。


「教えてください。

 私のしていることは悪だとしましょう。

 では、私が裁いた悪に気付かなかった、見逃していたあなた達は善なのですか?」


 二級市民問題は北日本人民共和国の併合から始まった彼ら元北日本政府国民の蔑称で、同じ権利を与えられているはずなのだが、経済的差別や弱者として犯罪の温床になりまだ問題がくすぶっている。

 その彼らを中心とした犯罪組織を叩くという事で、今の日本の影をまざまざと見せつけているのがこの映画のすごいところである。


「あんた達はいいさ!

 俺達には何もない!!

 金も!国も!!誇りすらもだ!!!

 だから奪ってやるんだ!

 この国から全てを!!!」


 今回の悪役に抜擢されたロシア系ハーフの青年俳優の叫び声に彼らは共感しただろう。

 それこそが、この映画が単純な娯楽作品でないという事を証明している。

 この青年俳優と桂華院瑠奈公爵令嬢との一対一のガンアクションは終盤の山場の一つであり、そこで危機に陥った彼女を助けに帝都護衛官が登場する時、お約束通りに助かるだろうと分かっていた人でも思わず手に汗握ってしまう緊迫感がある。


「ーーーー♪」


 もちろん桂華院瑠奈公爵令嬢の有名な持ち歌である、『ミカエラのアリア』は彼女の生歌として一番の見所で使われている。

 娯楽性があり、社会性があり、芸術性があるこの映画は、撮らせてくれと頼み込んだ監督の新たなる世界を魅せてくれる。


「あのお嬢様、本当にお嬢様なのか?」


 周りも主役たちを引き立てる。

 特に、銃撃戦はドラマ版と同じく本物のPMCを起用。

 桂華院瑠奈公爵令嬢は今回のアクションにおいて米国政府の計らいで銃を取得し、同盟国としてお嬢様を助けるという形で在日米軍が協力している。

 また、電話越しの声の出演だけだが、米国大統領が彼女と話しているというスケールの大きさに、既に米国でも話題が沸騰しているらしい。

 米国ではあまりに華麗でかっこいいお嬢様に子どもたちが真似をしたら困るとレーティングが無駄に上がったという伝説まで作ってしまった。

 この二時間欲張りセットの娯楽映画は見なければ話題に置いていかれることは必至である。

 世界よ。

 もはや、お嬢様の進撃は止められない!!!



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筆が乗ってついつい書いてしまった。

今は反省している。


ちゃうんや。

ちょっと別の小説の為に『LAWMAN』(伊藤明弘 ジェッツコミックス)を探したのだけど、その隣に『ベル☆スタア強盗団』(伊藤明弘 ドラゴンコミックス)があって……



瑠奈の射撃術

 某映画のほむほむVS巴マミ戦のマミの方。

 考えたらこれも梶浦音楽だな。

 もちろん日米露の関係者が頭を抱えたのは言うまでもない。

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