日米首脳電話会談

「派手にやったじゃないか。

 よくあのお嬢様を黙らせたもんだ」


「私一人では無理でしたよ。

 黙らせたのは彼女の周囲の人たちのおかげです」


「とはいえ、彼女の考えは合衆国の戦略であり利益に沿っている。

 総理は彼女を黙らせたのだから、彼女の戦略と利益を引き継ぐと見てよろしいのかな?」


「当たり前ではないですか。大統領。

 我々は同盟国であり、その危機に対して共に手を携えて戦う事を約束しましょう」


「それを最初に言った彼女を黙らせた事に対して、後ろめたい気持ちがないと言えば嘘になるがね」


「大統領。

 我々は共に国の代表であり、国民のために、国益の為に働いているはずです。

 そんな国民に、『一人の少女を人殺しに仕立て上げて国の繁栄を達成した』と歴史に残せますか?

 彼女を殺人者にしてはいけません」


「……それが彼女の周囲が君の味方になった理由か」


「彼女が化物になるのを恐れていたのは貴国もでしょう?

 ちなみにロシアも恐れていた。

 彼女がどう動くかでロシア国内の動向が左右されるのだから。

 彼女を旗頭にしたクーデターの動きだってあったそうですよ」


「それはこっちでも聞いている。

 ウォール街のお偉方には彼女のせいで大損した人間が何人か居るだろうからね。

 なかなか愉快な冗談だと知らなければ言うだろうな。

 『エレメンタリースクールの女の子がアメリカ・日本・ロシア政府を相手に暴れていた』というのだからね。

 しかも、その目は予知に近く、手は適切ときた。

 こっちでは月の女王様と呼ぶものもいるよ」


「ハインラインの小説ですか」


「無慈悲な夜の女王なんて今の世界には似合わない。

 樺太の独立は合衆国としても許容できない。

 ついでにいうと、貴国とロシアの同君連合もだ。

 あのお嬢様に国を持たせたら世界秩序がどう変わるか分からない。

 その変化が合衆国及び貴国にとって脅威となりかねない」


「我々も望みませんよ。

 大陸に手を出して痛い目にあったのは半世紀ほど前のことです」


「もう少し前にもベトナムで同じ教訓を得たというのにな」


「ははは……」

「HAHAHA……」


「大統領。

 私がこの手を血で汚すのはお約束しましょう。

 ベトナムの二の舞にならないとお約束できますかな?」


「ああ。

 第二のベトナムなんて真っ平御免だ。

 イラクの独裁者を倒して、あとはイラク人に任せるよ」


「それを聞いて安心しました。

 あのテロにおいてこちらで捕らえた容疑者から得た事件の全貌の公表は、日米同時発表という形で」


「もちろんだ。

 独裁者が核を得ようとした計画の成れの果てがあのテロだった。

 今、あの国に大量破壊兵器が無くても、それを以て我が国及び貴国を攻撃しうるという事が証明された。

 この事実を公表した上で、国際社会に訴えた上で国連のお墨付きを得て……」


「来年の春に向けてのタイムスケジュールを確認させてください。大統領」


「公表後に国連安保理に報告して決議をもらう。

 その後その決議を以て多国籍軍を編成しという所だな」


「秋の国会で、この問題は大きな話題になるでしょう。

 国際社会に訴えるためにも、国内を黙らせるためにも、貴国の要人と会談をしておきたいですね。

 こちらは副総理にこの問題の窓口となってもらうつもりです」


「イズミカワか。

 分かった。

 どちらにせよ、北樺太問題で見届人が必要だろう。

 うちの国務長官を出す」


「ありがとうございます。大統領。

 こんな生臭い話を、正しくても小学生としていた事が間違っていた。

 その当たり前の言葉に耳を傾けてくれた事に感謝を」


「私もこの椅子に座った以上、国益のためにそれ相応のことをする覚悟はある。

 だが、今の世界を動かすのは国民であり、彼らの民意だ。

 たとえ正しくても、巫女の託宣では無いのだよ」


「ええ。

 だからこそ、彼女にカサンドラになってもらわねばならない。

 とはいえ、その末路までカサンドラにする必要はないというのが難しいですな」


「早く大人になってしまえばいいと願わずにはいられないよ。

 そうすれば、彼女はいずれ恋をしてその力をパートナーの為に使うだろうからね」


「お姫様の魔法を解いて普通の女の子にですか。

 我々は12時の鐘ですな」


「せめて、ガラスの靴を残してあげるぐらいの事は許してやろうじゃないか」



────────────────────────────────


Q ポッポ失脚できね?

A その後であのカンが出るんだぞ!!

  そして忘れ去られる前なんとかさん……


ここから何度も何度もこの物語が終わるまで晒され続けるお嬢様の致命的弱点。

未成年だからこの舞台に立てない。



やはり連続更新は腕に負担がかかるが、ここで遅らせるのもあれだからなぁ。

ちと無理してもここは書く必要が合ったので、足りないところとかは随時補足予定。


ここはテーマがあって、


『人は善意にて裏切り者になる』

『時代に逆らう事の難しさと時代に乗っている人へ敵対する場合の難しさ』


を書けたらと思っている。

感想の沸騰ぶりにびっくりだが、ここで沸騰しては身がもたないぞ。

あの郵政政局が残っているのだから……

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