デザイナーメモ 桂華院家

桂華院家


 元になる家は基本的には無し。

 桂華院彦麻呂の父は某最後の元老で、内務省警察畑にしたのはゾルゲ事件に関与させるため。

 同時に、彼の功績で本家に廃嫡された彼が残ってしまい、桂華院家と東側との繋がりになってゆく。

 ここでの誤情報『日本は対ソ戦を決意』によってソ連のシベリア方面の転進が遅れ、スターリングラード戦の敗北に繋がるが、ドイツももう攻勢を続ける力は残っていなかった。

 ゾルゲ事件で立場を確立した彦麻呂は公爵位と断絶した桂華院家を継ぐという形で表舞台に出て、終戦工作に関与。

 マリアナ沖海戦前に発生した時の首相暗殺事件から始まった宮中クーデターにクーデター側として関与し、捜査の意図的な妨害に務めたのだ。

 これによる政府内部の混乱で連合艦隊は出撃できずにマリアナ諸島は陥落。

 空襲が始まり終戦工作が一気に加速する。

 連合軍もマリアナ諸島を抑えたがそこから先に進めずノルマンディー上陸作戦の失敗と、フィリピンを巡る前哨戦だったパラオ沖海戦で超巨大台風に米艦隊が突っ込んで大損害を受けたことからドイツ戦を優先させたい連合国との講和の機運が高まる。

 終戦時に陸軍がどう動くのか分からなかった為に、彦麻呂は警視庁を動かして危険人物を逮捕拘束し、特別警備隊を武装して皇居を警護する事で終戦の元老として名を連ねる事になる。

 この時に製造していた財閥から密かに供与された九七式中戦車改三両が警視庁前に鎮座し、機関銃を構えた警官の姿に都民は「2.26の復讐」と噂したという。

 また、この時に陸軍から突っ込まれた戦車を「これは戦車ではありません!特車です!!」の言い返しでごまかした事が警視庁特車隊の編成と戦後に発足した警察予備隊こと後の自衛隊の流れに繋がるから世の中はわからない。

 1944年10月に日本は連合国と講和と同時にドイツに宣戦布告。

 実質的な降伏だが、国体の保持だけでなく戦力も保持しての降伏で陸海軍はそのまま欧州に派遣されて、45年8月のドイツ降伏まで欧州の地にて血を流すことになる。

 彼は、警察人脈を駆使して戦後日本のフィクサーとして暗躍する事になる。

 満州戦争と国共内戦が勃発した時に内閣直下に軍事力が無いこと、現役大臣武官制の欠点を是正しようとした彼は、内務省下に軍事力を置くことを画策する。

 警察予備隊と海上保安庁の設置提案は当時日進月歩の勢いで発達していた空軍戦力の管轄争いまで絡んで陸海軍と激しく対立。

 この暗闘は連合国の行政介入による陸海軍の解体と内務省の解体という形で喧嘩両成敗に落ち着くが、内閣府に国家公安委員会が作られてその下に警察予備隊・海上保安庁・航空自衛隊が置かれてやっと軍部の暴走が止まることになる。

 これらの活動を彼が行えたのは、彼の妻の実家が製薬会社だった事が挙げられる。

 警察官僚時からのコネで裏社会で流通していた芥子系の気付け薬を、後にメタンフェタミン系の気付け薬として売り出して戦中に巨万の富を得て政界工作の資金としたのだ。

 麻薬取締法で規制されても、満州戦争やベトナム戦争時の麻薬蔓延の惨禍から、統制された流通による被害者の抑制を主張。

 黙認という形での独占販売権を握り、桂華グループの基盤を作ることに成功する。

 ベトナム戦後に麻薬の取締が本格化するに伴って、桂華製薬は医療関係とともに専売が解かれた樟脳に参入。主力商品となる。

 ベトナム戦後に枢密院を舞台に戦後政治に関与する。

 参議院が開放されて華族の多くが枢密院に移るが、大政翼賛会が解散した後の日本政治の保革対立に介入。

 安保闘争は強硬路線を貫き、特車隊や帝都圏治安警察機構(通称帝都警)による弾圧の政治的支柱として彼らの暴走を支えることになる。

 それは同時に左派の伸長を呼び込み、保守合同に奔走。立憲政友党、略して立政党の設立に漕ぎ付けることに成功。

 この立政党は長きにわたる長期政権を築いて日本の経済的繁栄に寄与することになる。

 だが、彼の栄光はここから下り坂を迎える。

 70年安保の鎮圧と兵部省設置に伴う軍再編問題から始まり、昭和の文豪を精神的支柱にした帝都警及び自衛隊の一部将兵の決起事件で責任を問われて引退に追い込まれたのだ。

 その後は余生を穏やかに過ごし、バブル絶頂期の89年に死去。

 彼が存命であれば、瑠奈の父は自殺しなかっただろう。


 桂華院清麻呂は桂華院家の現当主であり、庶子の兄を差し置いて家を継ぐ事になった。

 彼の母が桂華製薬の中心になった事で家業の製薬事業に専念し、桂華グループの発展に寄与する。

 製薬事業から化学事業に入り戦後桂華化学工業を設立。

 石油化学製品を製造販売する為にタンカーを保有する事を目的とした桂華商船、その海上保険を担当する桂華海上保険、商品の保管管理を担当する桂華倉庫と販売を担当する桂華商会を設立。

 桂華製薬を中核事業としたこれらの企業群は順調に拡大してゆく。

 清麻呂の妻は財閥系で、岩崎財閥の一族出身で岩崎銀行をメインバンクにしている。

 バブル期に当然のように貸出の増大をメインバンクから勧められたが清麻呂はこれを拒否。

 これが桂華院グループを救うことになるが、父みたいな派手な動きができなかっただけと当人は自嘲して言っている。

 バブル崩壊時、東側と関連が噂され庶子の兄が興した極東グループを吸収したが、その内情は不良債権の塊だった。

 この不良債権処理をメインバンクと協議していた間にあれよあれよと話が進み、彼の知らない所で極東グループの不良債権処理が終了した事で、彼は瑠奈に目を付け始める。

 特に極東銀行を舞台とした北海道開拓銀行の合併や一山証券買収など余りに巨額な案件が彼の知らぬ所で動いていたなんて看過出来る訳がなく、当初は瑠奈を隠れ蓑にした大蔵省の護送船団が動いたとしか認識していなかった。

 その結果一族内部でも瑠奈に対して不和が発生。

 公安からの提案という名前の脅迫を受けることになり、はっきりと瑠奈が主導していた事を悟る。

 その瑠奈がらみの金の流れを追っていたのが、一人息子である桂華院仲麻呂だった。




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仮想戦記ちっくに作ってみた。

どこかで見たようなのはたぶんそのせい。


最後の元老

 彼がもうちょっと生きていたら太平洋戦争はなかったと思っている。

 けど、彼の孫がソ連のスパイになるとは思っていなかったんだろうなぁ。


スターリングラード戦

 ドイツはここを辛勝したけど南方軍にもう余力は無く、ソ連軍はハリコフからロストフを狙ってカフカスで独軍を殲滅しようとしたのだろう。

 そうなると時期はずれるけど、クルスクでドイツは負けてという流れになると思う。


首相暗殺事件

 実際に計画されていたらしい。

 なお、このあたりは仮想戦記『レイテは燃えているか』(秋月達郎 コズミックインターナショナル)のオマージュ。


台風に米軍が突っ込む。

 これも架空戦記ネタ。

 なんの本だったか忘れたので情報を知っている人は情報提供お願いします。


特車隊

 元ネタ『機動警察パトレイバー』

 彼らは警視庁警備部の所属。ここ大事。


帝都警

 元ネタ『ケルベロス・サーガ』

 だから、ケルベロスの蜂起を鎮圧したのが特車隊といういろいろ脳汁出る設定に。


昭和の文豪

 三島由紀夫の楯の会事件。

 自分で作ってなんだが、この国何やっているんだろう?

 彼自身はきっかけに過ぎなかったが、彼の決起に帝都警が呼応したという形。


製薬会社

 元ネタ映画版『犬神家の一族』。

 小説だと犬神家は糸偏長者。


岩崎財閥

 言わずとしれたあの財閥。

 多分化学系か銀行系のコネがある。

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