第7話 霧の正体

 重い霧が辺りに漂っている。休憩を終えたリベル達は森へと足を踏み入れていた。

「地図によると、この先に資材小屋と鉱山があるらしい」


 聞いていた通り遠くの方が薄暗く、見えない。用意した魔道具を使った方が良さそうだ。


「思ったよりも暗いね……普通のランプだと見えないかも」

 クレアは鬱陶しそうに顔の前で手を振って空を仰いでいる。


 霧が深くて昼でも道が暗い。村の人たちもこれほど濃い霧は見たことがないという。

「これなら、何とかなると思う」


 カバンから魔道具を取り出す。起動すると辺りが白く切り取られるように照らし出される。

「これなら、日差しが弱くても先に進めると思う」


 灯光の魔導具を進行方向へ向け、道を外れないように歩いていく。

「あっ、あれだ」

 道に沿ってしばらくすると、光の範囲の中に特徴的な樹木が現れる。暗いので輪郭がぼやけているが、太い幹を見ると頑丈そうなロープが巻いてある。間違いなく目印の木だ。


 目印があるということは、鉱山入口にある資材置き場まであと半分くらいまで来たようだ。この辺りから先へ進もうとした人は意識を失ってしまうらしい。


「うーん、魔力はこの霧から出ているようだけど……それ以外には何も分からないかぁ。このまま進んだら、私たちも眠ってしまうだろうし……どうしようか?」

 クレアはそう言いながら、木の周りを歩き回る。


「この先の霧にはもっと、たくさんの魔力が込められているよ。だから、このまま入るのは危ない気がするよ!」

 ペンダント改め、『エリサ』も普通の霧ではないことを感知したようだ。


「これがうまく使えたら良いんだけど……」

 霧のことを聞いてから考えていたものがある。狙い通りに機能してくれれば……


 魔道具を2つ取り出し、部品を使って繋げる。そうして繋げられた装置からは温かい風が吹き出す。当たった部分から霧が薄くなっていく。


 魔道具を前方へ向け、それを顔の前に構えて慎重に霧の中を進む。

「良かった、上手くいきそうだ。霧にどんな仕掛けがあるかは分からないけど、霧自体を避けられたら何とかなるかなと思って。これは送風の魔道具と灯火の魔道具を組み合わせてみたんだ」


 魔道具で霧を排除しながら進んでいく。それでも次第に肌に当たる空気の湿度が高くなってきた。視界も悪い。足元と二、三歩先しか見えない。


「ここから立ち去れ人間。これ以上進むなら命の保証はしない」

 霧のひときわ濃い方角から険しい声がした。

 誰かいるらしい。こちらを警戒しているようだ。


「僕たちは奥の鉱山に用事があるので、この道を通り抜けるだけです。あなたはこの霧が何なのか、知りませんか?」


 この声の持ち主は何か事情を知っているかもしれない。出来れば話を聞きたいのだが……


「そう、あなたは私たちに害を為すつもりは無いのね……でも駄目。貴方にそのつもりが無くてもあの時もそうだったから」

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