第15話 白の探し物④
ただでさえ隙のない連携に次ぐ連携だったのに、増援が来てしまったことでさらに攻撃の手が強まる。少女はあっという間に花凛から引き離された。しかも増援は近距離戦闘だけでなく、弓を使った中距離の攻撃まで仕掛けてくる。
少女は今までかすり傷程度は負っていたが、攻撃のほとんどをギリギリで避けていた。攻撃の瞬間の風を切る音や威圧感、鉄の匂いや殺気から背後や横から迫り来る刃を捉えては、反射神経を駆使して躱していたのだ。
しかし時間が経つにつれ徐々にその動きも鈍ってきた。その上、近距離のみならば場所の問題で一度に来る攻撃の数には限界がある。
さらに、弓での攻撃は射程範囲内ならばどこからでもできる。それに矢が直ぐそばまでこなければ、矢が自分のどこを貫こうとしているか正確な位置がわからない。近接戦闘の隙間を縫って飛んでくる矢を避けることはそれに意識を割かなければいけない上に難しいかった。
「うぐっ……っ」
矢の一本が少女の背中を貫いた。その衝撃で体勢が崩れる。少し離れた場所で援護に努めていた者達も、近距離で攻撃と捕獲の機会を狙っていた者達もやっとできたその隙を見逃さなかった。
なんとか足を踏ん張って転ばないよう堪えようとしていた少女の肩と太ももを正面から矢が射抜く。一本目の矢に背中を射抜かれてから二本目、三本目の矢に肩を射抜かれるまでの間は、二秒にも満たなかった。
そして今度は、後ろによろけた少女の目の前にいた援軍の一人が少女の横腹のあたりを刀で切り裂いた。
「がはっ」
その斬撃は小さな体に深く刻まれ、口から鮮血があふれる。着ている服は次々に鮮やかな赤に染められ、徐々に白が赤に飲み込まれていく。
このくらいの傷ならいつも負っていた。だからまだ大丈夫だと分かっていた。このくらいなら回復する。手を離せばもう血は止まっているはずだ。少女はそう思っていた。
(……!)
手を離した傷口からは未だ血が溢れ出ている。そして塞がる気配もない。
(きずがふさがらない)
少女の顔から余裕は消え、周囲にいる存在全てに殺気をばらまいていた。震える足に力を込め、左手には瓦礫を握り、右手は深く斬られた腹を押さえ、その目は軍服集団を睨みつけていた。その姿はまるで追い詰められた手負の獣そのものだ。
「さっきお前を斬った刀には血液の凝固を阻止する薬が塗られているの。まだ試作段階なんだけどねぇ。ありがたく思いなさい。お前が逃げ出したと聞いて、急いで仕込んできたのよ?」
「……っ」
「現に傷は塞がっていない。いい加減諦めたらどう?」
増援としてやってきた班の長らしき女が少女に降伏を促す。試作段階でも、薬がそれなりに効果を発している様子を見れたこともあり、その表情はかなり満足気であった。
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