第53話 べルギア公爵

公都ニースアの”深淵のダンジョン”のスタンピードをジン達一行が防いでトロンのギルマス、グラシアさんと公都のギルマス、ケビンさんを公爵様が待機している広場まで連れて行き公爵様にスタンピードを鎮圧して無事公都の人民を守る事が出来た旨伝えた。


「公爵様、レンブラント王国のSSランクの冒険者ジン殿とお仲間の魔法師殿達のお陰で一人の犠牲者も出さずに2万頭の魔物達を殲滅しました」


「ケビン、一時はどうなるかと思ったがレンブラント王国からの助っ人が来てくれたか!ジン殿というものか?彼はあのマジックアイテムの乗り物に乗っているのか?一目会いたいので呼んで参れ」


ケビンとグラシアがジン達をジョゼフ公爵の前に呼んで来た。


「お初にお目にかかります、私はレンブラント王国王都のダルゼの冒険者ジンと申します。こちらが家族同様の仲間のSクラスの魔法師、イリーナさん、イリアさん、イザベラさん、ヒューイとドールです」


「おおよく来てくださった、儂はジョゼフ・ラウセ・ベルギアと申す。貴殿の国王とは周知の中で友好条約を結んでいる仲じゃ」


「この度は本当に助かり申した、騎士達3000人と冒険者1000人ではとても2万もの魔物を相手にする事は不可能であった、貴公達が来てくれたお陰で公都の民も無事で本当にありがとう、明日お昼前に城にお招きするので是非皆様と来て下され。お待ちしておる」


そういうと、騎士団を引き連れて、城に戻って行った。


「ジン君、そういう事なので明日は僕とグラシアも伺うので一緒に城に上がろう!本日はギルドの手配で皆さんの宿を用意しますのでとりあえずはご一緒に夕食を奢らせてくれ」


グラシアとケビンがジン達をギルド近くの定食屋に連れて行き、フルコースの夕食を振る舞ってくれた。


「それにしても、ジン君、僕は神級の魔法って初めて見たけどあの魔法【インフェルノ】の威力は凄まじかったな!あれで魔物の半分以上が灰になってしまったんだからね」とケビン。


「ほんとよね、ジン君もだけどヒューイちゃんと皆様の魔力もすごかったわ!我が公国にも一人でもいてくれたら良かったのにね」とグラシアが言う。


公国の冒険者事情などを聞いて食事を和やかに終えた。


宿は以前ジンとヒューイが泊まったことのある”せせらぎの宿”をケビンが用意してくれて、ジンとヒューイがツイン、イリーナとイザベラがツインでイリア叔母さんがジングルの部屋に入った。


一旦、部屋に入って、シャワーを浴びて、ジン達の部屋に集まり、紅茶とケーキで今日のスタンピードの話をした。


明日はジョゼフ公爵に招かれているので、全員礼服にドレスアップして行かないとならない。




よく朝、早めに朝食を済ませて、着て行くドレスを選び戦争が始まっていた。


イリーナ、イリア、イザベラは滅多に着ないドレス姿だ!


ヒューイもドールも一応ドレスを着て行く。


ジンも礼服を着て、グラシアとケビンについて行く。


10時半ごろグラシアも珍しくドレスを着込んでケビンと一緒に迎えに来

た。


皆んなで徒歩でお城まで向かった。


城門の兵士には話が通じているのだろう、丁寧な対応で侍従長を呼んでくれた。


侍従長に従って、ケビン、グラシアの順でついて行く。


部屋には既にジョゼフ公爵と奥様、息子さん2人がおり、ジン達を迎えてくれた。


「この度はお招きくださいましてありがとうございます」とケビンが丁寧に挨拶をして、改めて、公爵ご夫妻と息子さん達にジンと仲間のイリーナ達を紹介した。


「ジン殿、昨日はスタンピードから我が街を守ってくれて本当にありがとう」と再びお礼を言われた。


そのあとは、公爵の好きな剣技の話になり「我が国は此処におる騎士団長のロバートがAクラスの冒険者でトップの技量だが、お主は既にSSクラスだと聞かされておる、儂に是非その剣技を見せてもらえぬか?」


「わかりました、私とヒューイとで剣の模擬戦をいたしましょうか?」


「いや、ロバートにもSSランクというものがどれ程高みのレベルかを知ってもらうためにロバートに一手ご教授願いたい。ロバートもいいな?」


「はい、公爵様SSランクの方から教えていただけるなど、願ったりでございます。是非、ジン殿よろしくお願い申す」


「わかりました、それでは訓練所に移りましょうか?」


皆が競技場に移動して、貴族達や騎士団総勢で見学することになった。


「それでは私ケビンが審判を務めさせて頂きます」


「始め!」


ロバート騎士団長は使い慣れた真剣を持ってジンに立ち向かって行く。


ジンも模擬刀では失礼なので『煌剣』で持って対応する。


ジンは身体強化もかけずロバートの斬撃を受けてあげる。

Aランクでも上位のランクの方だろ、割と鋭い太刀筋でジンを攻めるがジンはかなり余裕で捌いている。


ある程度打ち合って、ロバートの胴に軽く峰打ちで刀を当てて勝負あり!


ロバート騎士団長が丁寧に「ご指導、ありがとうござった、大変勉強になり申した」と礼を尽くした。


「ロバートさん、貴方は間違いなくSランクに近いAランクの方です。さらに精進すればSランクにもなるでしょうから頑張ってください」と伝えた。


公爵から「ジン殿とヒューイ殿の戦いも見てみたいのでやってはくれぬか?」と急遽ヒューイと模擬戦をすることになった。


ヒューイはドレスなので、一旦下がりスラックスになって『神龍剣』を帯同して現れた。


ケビンが「それでは、始め!」と合図をすると、二人の姿は消えて刀同士が当たる火花と音だけが聞こえる状態だ。


二人の動きが見えているのは恐らくドール一人だろう。


10分も掛かったであろうか、二人の姿が見えた時にはヒューイの胴に『煌剣』が添えられている姿だった。


「ジン殿の勝利」とケビンが言って、模擬戦が終了した。


「ジンの動きはまるで光速で全く見えないわね、それを相手するヒューイちゃんも凄いわ!」とイザベラが感心していた。


昼食にはジョゼフご夫妻がジン達と仲間イリーナ達のところに来てにこやかに談笑して、ご機嫌な様子だった。


「ジン殿、今後も時々は我が国に来て騎士団長以下を鍛えてくれ、友好の印にこの短剣を出せば、この国の全てでお主は思いのまま通れるし宿も無料で泊まれるぞ」


「ありがたく頂きます。レンブラント王国とも隣同士なのでこれからはもっと、度々訪れて騎士団長様とも懇意にさせて頂きます」


「おお、そうしてくれ、果実も美味しいので是非頼む」と公爵がご機嫌でパーティーがお開きになった。


グラシアさん、ケビンさんとギルドに戻り、改めて皆の冒険者カードにスタンピードの殲滅の履歴を打ち込んでもらい、報酬の白金30枚をもらった。


ギルドのマスター室でお茶をご馳走になって、改めてケビンからお礼をいわれ、二人と挨拶をして、公都ニースアを後にした。


午後になってしまったので次に向かうロデスには夜遅くなる感じだ。


『空飛ぶ車』でニースアを出てロデスに向かって街道を走って行く。


1時間ほどしたら【サーチモニター】にホーンラビットの群れ20匹を捉えたので、ヒューイとジンが出て、20匹を【結界】で囲い空気を抜いて倒れ込んだところを、ヒューイが放血して【次元ストレージ】に回収した。


その後は何事もなくロデスの手前2キロ辺りの平原で車を止めて、夕食にする。


夕食は、チャンベルで買い込んだ魚介類でお好み寿司をすることになった。


酢飯とノリに山葵を用意して、マグロに似た赤みの魚、烏賊、蛸、エビ、キュウリ、干瓢を大皿に出して、自分の好みでトッピングしてノリを巻いて醤油につけて食べる。


ジンが皆んなに作り方を示して、食べる。  久しぶりの寿司だ。

お茶は緑茶を出した。


結構お寿司も好評でチャンベルで買い込んだ生魚もどんどん消えて行く。


皆が満足して寿司パーティーを終えた。


「ジン君、お寿司には緑茶が合うわね!とイリーナがいう。


「私も初めて飲むお茶だったけど美味しかったわ!」とイリア叔母さん。


その後ロデスに着いて、ジョゼフ公爵様から貰った短剣を見せてすんなり街に入り、町の広場の片隅に『空飛ぶ車』を駐車させて、シールドを掛けて皆ベットの中に入った。



翌朝早めにドールが車を始動させてデイマール王国との国境に向かい、午前8時ごろには出入国を簡単に済ませてランスの街に向かって『空飛ぶ車』を走らせて行く。


ランスには10時頃着いて、冒険者ギルドに行って3人の女性達の魔法スキルを磨くため、クエストを眺めて、ワイバーン3匹の討伐依頼がちょうどあったので、それを受付に出した。


受付で大凡の場所を聞き、あとは<タブレット>の【MAPing】で正確な位置を車に入力してドールがワイバーンの居る所に車を近づけた。


3人はそれぞれ【シールド】をして、イリーナが3匹の翼を先ず【ファイアアロー】で射って飛べなくしたあと、イザベラが【エアカッター】で1匹の首を切り落とし、イリアが【アースアロー】で首と胴体に土の矢を放って葬り、イリーナが【アイスアロー】でワイバーンの頭を射抜き3匹を簡単に葬って【次元ストレージ】に回収した。


それぞれ、敢えて別々の魔法で刈り取って、彼女ら3人も多種の魔法を瞬時に放って敵を倒せるようになっていた。


ギルドに戻り、素材置き場に3匹のワイバーンを納品して、清算金金貨120枚を受け取り、イリーナのカードに入金した。


その後トロピアに向かって走り出し、昼食は車の中でスパゲティを食べながら移動した。


トロピアには夕方着いて、ジン達は図書館の敷地に『空飛ぶ車』を止めて一夜を過ごすことにした。


図書館の係員がここの敷地は関係者以外止めないでくれと苦情を言って来たのでデイマールの王様から頂いた『王家の短剣』を見せて、明日の早朝には王都に向かうからと言って止めて貰った。

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