最終話 最強ダウナー近衛騎士の日常

「魔王軍は、戦車持ってたんですねー」

「当たり前です!

 サブーリン殿の国には電子技術もまだまだ劣りますが、そこはドワーフとエルフの技術があります!」


 目の前ではゴブリン軍の戦車を筆頭に自動車化された軍団が観閲行進をしている。不可侵条約を結んだのでそのお祝いパレードとして我が軍と魔王軍で祝賀パレードを実施しているのだ。

 もちろん、秋津皇国もいる。


「あの戦車は、我が軍の戦車より強いのですか?」


 秋津皇国の皇太子がツェペシュ2世に尋ねた。2人ともこのパレードの国家代表として我が王国に来ている。


「皇国の戦車よりは流石に弱いかなー

 でも、そこは量でカバーしてるよ?なんだっけな、ほら出たばかりの頃の主力戦車?あれくらいはあるよ」


 走っている戦車はどう見ても前世で言うところのティーガーみたいな四角四面な箱型でリベット留めなのに。

 兵士が持っている銃も初期の方のセミオートライフルだ。軍服も迷彩柄では無い単色だ。


「ふーむ、見かけはどう見ても共和国と帝国に負けそうなのに」

「まーそう見えてもしょうがないかなー?

 そう言えば、サブーリン殿は何故共和国を助けないので?

 共和国って王国だった土地でしょう?」


 共和国、確かに王国がかつて栄えていた場所にある国だ。確か800年前に民主主義、当時は市民主義と言っていたが、を掲げた一部の議会がそんなことを言い出して王家を追放し始めたのだ。

 細部は実に馬鹿馬鹿しいが、連中は実に根回しと手際が良かった。クリスティーナやコルネットですら防げなかったのだから。

 だから、私は当時の陛下の御子息達を連れて我が領地に案内し、そこで王国を建てた。それ以来、我が国は共和国と国交は勿論、交易も殆どしていない。

 陛下はギロチンで殺され、王国は共和国になった。勿論、私や一部の王立軍等はこれと戦おうとしたが、王が処刑され自動的に王に即位した殿下、陛下がこれを望まなかったので王家に賛同する派閥は我が領地に逃げ延びたのだ。


 そこから800年間、我が領地を中心に永久陣地帯を構築して少なくとも10年は完全鎖国の籠城戦出来る計画を発動させた。コルネットが本気の築城を計画し、クリスティーナがイギリス政治みたいな君臨すれども統治せずを出来る体制を整えた。

 議会は王が国民またはその代議人を招き、その者等によって国政を決めさせる。その決定を王が王の名を持って王国の政策として承認し、国民に広く知らしめる。

 国王は国民又はその代議人を国会に必ず召喚し、その者等に国政について話し合う場を設けなければならない。

 国民は王に忠誠を誓い、崇めなければならない。王は国民を護り、その忠誠に応えなければならない。

 この3つが我が国の憲法だ。その下に各種法律がある。あと、これは私個人が定期的に国王に助言しているのが憲法改正をするかどうか話し合えと国民議会に言い続けなさい、と言っている。勿論、数年で形骸化して来たのでその時の国王にブチギレさせた。その後、はしっかりと議論して改正する必要はないと言う結論を出させている。


「あの国は国王殺したからね。

 王国では無いよ。私が使えるのは陛下とその子孫だ。我が剣と中世は王家にのみ仕える。

 それが、私が出来るステンノ陛下への忠誠よ」


 因みに、私の騎士団は完全に独立分派して王立近衛竜騎士団として唯一世界に実働して残っている騎士団となっている。

 コルネットやクリスティーナも国民議会と陛下の相談役として政治産業軍事に至る凡ゆる所に意見を出している。

 私は軍によく招かれて騎士団団員と模擬戦したり演習では敵役をしたりと王立軍とは仲良くやっている。騎士団員も王立軍からの志願で来て毎年私がボコボコにしてる。


「サブーリン殿の忠義は実に素晴らしい。

 我々もそれを倣わねばならない」


 そして、ゴブリンエンペラー、今の魔王軍四天王の一人が感心した様に頷いた。


「我が先祖はサブーリン殿に敗れたと聞く。

 我が先祖の復讐が出来ないのは残念だが、我が軍最大の敵であるサブーリン殿が居ないのであれば貴国等の土地以外全てを取りに行こう」


 ゴブリンエンペラーの言葉に我々は他人事の様に笑って応援をする。

 世界大戦が始まるのだ。後2年後に。

 しかし、千年経った今でも鮮明に思い出せる。陛下の前に傅き初めて謁見した事を。陛下が崩御する際に言った言葉を。

 殿下もそうだ。殿下は殿下でイかれてはいたが現代まで確りと名が残り近代戦術と軍隊の母として各国軍の教範に名が乗っている。また、案の定と言うか言われて初めて納得したが殿下の死に際の告白で彼女、否、彼も私と同じ異世界人だった。クリスティーナやコルネットの前でそんな事をぶっちゃけたせいで、クリスティーナからも大事な話と称してクリスティーナもまた異世界人だと告白され、流れ的に私もじつわーと言う感じになった。

 エウリュアーレ殿下は本当に死ぬ直前に真実を知れて良かったと心の底から笑い、久方ぶりに聞く日本語でお礼と別れの挨拶を受け、私達も同じように返した。

 コルネットは異世界に興味が出てあれからずっと研究をしているがとっかかりすら掴めていないそうだ。まぁ、私達の断片的な情報を元にこの千年で宇宙開発を視野に入れた航空機の開発等をしており、航空機をこの征服戦争後に発表するつもりらしい。

 戦争は、申し訳ないがゴブリン軍は大陸の半分程で止まるだろう。戦車だけならRHA換算600ミリを貫徹できる徹甲弾を装備した戦車が基本だし、各国軍の戦術もゴブリン軍の人海戦術に対応した物をとっている。戦いが数なのは承知している。故にそれにどう対抗するかでこの千年間を過ごしたのだ。

 パレードも終盤だ。帰ったら漫画の続きを読もう。

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