第94話 毒味の意味が無い近衛騎士
帝都の城に着くと大宴会だった。真っ赤な建物に極彩色の着物を纏った踊り子達が踊りまくり、音楽を奏でていた。
マーマーミャーミャーが大合唱。勘弁してくれよ全く……
殿下のすぐ後ろを立って歩き、クリスティーナは殿下をエスコートさせている。興味は音楽の方だった。
「凄いな」
「そーですねー
あまりキョロキョロするとみっともないですよぉーどーどーとしましょーよ、どーどーと」
料理が運ばれて来て、一緒にやって来た見ず知らずの少女がそれを青い顔をしながら食べようとしたのでゲンコツを落とす。
「誰よあーた?
それ、殿下の料理でしょーが」
少女はマーマーミャーミャー泣きそうな顔で何か言って深々と頭を下げる。
「何してるネ?
毒味役、何か失礼シタヨ?」
言葉が通じねーので困っているとヤクトゥーがやって来た。
「毒味?」
「ソーヨ?
その子は毒味役。毒入ってると、その子死ぬ」
「アンタの国は来賓に毒を盛るのか」
フォークで出された魚の身を食べると、普通に美味しい。
「毒ないよ」
ほらと殿下に渡す。
殿下は複雑そうな顔をして一口食べた。
「この魚美味いねー」
私の前にも、同じ魚。
私やクリスティーナの前にも同じように青い顔をした少女が立っていた。
「帰っていーよ。
ヤクトゥー、通訳」
マーマー言うと少女は驚いた顔をして此方を見た。ヤクトゥーは困った顔で笑うだけだ。
「彼女仕事、毒味ネ。
仕事取るの、ダメヨ」
「じゃー隣座っててー」
めんどくさいので隣に座らせてクリスティーナと談笑しながら食事。料理が運ばれてくるが、量も多いし、色鮮やかなクソ重食事。
重たすぎる。
「脂っこいですわ」
「全くですわ」
箸が進まん。
隣に座る毒味ちゃんは何も食べてないので皿の半分を分けた。
「食べてー」
箸を押し付け脇に注がれている飲み物を手に取ろうとしたらクリスティーナがにっこり笑ってその手を押さえてきた。
「お酒ですわ」
「あーね」
酒には弱いから飲むなとクリスティーナに真顔で言われてから飲んで無いのだ。
「酒以外の飲み物ちょうだーい」
マーマー語が分からないからそのまま言ってみるが勿論毒味ちゃんには伝わらない。
「これも飲みなー」
取り敢えず、毒味ちゃんが水の入ったコップと水差し持って来ていたので私の酒と交換してやる。毒味ちゃんが何やらマーマーミャーミャー言っていたがめんどくさいので全然箸の進んでない食事を口に放り込んでやる。
「はい美味しいー」
それから次々とアホみたいな量の食事が運ばれて来る。その都度私達が先に食べて、半分は毒味ちゃんに分ける。
そんな感じで食事をしていたらドラが鳴り響く。なんじゃ?と見ていたら剣を抜いた女が1人大扉から入って来た。
何か綺麗な服を着てフロアの中央に来ると流れていた音楽が止まる。それから男が1人立ち上がりマーマーミャーミャー言い出した。
ヤクトゥーの同時通訳曰く我々を歓迎するとかなんとか。ちなみに我々の国以外にも何人かの使節団が来ているが今いる中で1番強い国が私達の国で、上座に最も近い。
殿下はこの国の王様なのか何なのか知らん連中に挨拶していた。
音楽が流れ始めると、それに合わせて女が剣を持って舞い始めた。剣舞には興味ない。
私は目の前の何かの肉を食べる。何の中か知らんが甘辛いタレが美味しい。パンが欲しいが無い。
「おー、このスープ美味しい」
出されたスープを飲むとあっさりしてて実に美味。
「私のもあげますわ」
クリスティーナはニコニコと私にスープを差し出してくるので有り難く頂戴する。
普通に美味。
二杯目のスープを飲み干した所で音楽が止まり、剣舞も終わっていた。
「パン食べたいなー
くどい」
なんて話していたら剣舞をしていた女が目の前にやって来て頭を下げる。
それから何やらマーマーミャーミャー言い始め、ヤクトゥーが慌てて此方に通訳して来た。
「今の剣はドウデシタ?」
「えー?
見てなかったから知らないでーす。
私踊り興味ないのでー」
それより、お茶とか下さいと言うとヤクトゥーが青い顔をしつつマーマーミャーミャー告げる。
女は訝しげにヤクトゥーを見る。多分嘘言ったんだろうなー
「お茶は今持ってクルヨ」
毒味ちゃんに何かを言伝ると、毒味ちゃんは頭を下げて去っていく。
それから女はまだマーマーミャーミャーと喋り出す。
「何処が良かったか、と言ってルヨ」
「あーた、嘘言っちゃダメでしょー
踊りなんか知らないのでーまー楽しそうに踊ってて良かったねーって感じでー」
ヤクトゥーがマーマーミャーミャー告げると、女はヤクトゥーにくって掛かる。
「本当のこと言えばいーのに」
ばかだなーと笑っているとヤクトゥーが観念したのか私をチラチラ見ながらマーマーミャーミャー話出す。
女は驚いた顔をし、それから何やらふるふる震えて顔を真っ赤にしてマーマーミャーミャー叫ぶと私に何か言っている。
「なんてー?」
「剣で勝負しろト」
「宴の席でー?」
冗談でしょ?と聞くと何処からかやって来た高官がヤクトゥーに何か言う。ヤクトゥーは驚いた顔をして此方を見た。
「なにー?」
「皇帝陛下ガ良しとの事デ……」
「じゃーやりますかー」
よっこいせ、と立ち上がりヤクトゥーが腰に下げていた剣を手に取る。
「はーい、いつでもどーぞ」
ヤクトゥーをみるとヤクトゥーが何かを言う。すると、女は私の方に踊るように剣を打ち込んでくる。
右左右右。リズム良く打ち込まれる。周りの音楽に合わせてトントントンと。
まぁ、そんなもの見なくとも動きでわかるのだが。
暫く剣を受けていたら動きが鈍くなって来たので、そこにつけ入ってトンファーキック。
女は吹っ飛んでいった。
「運動にすらならん」
ヤクトゥーに剣を返して毒味ちゃんの持って来たお茶を一口。
「お茶美味い」
「あら、本当に?」
クリスティーナも一口飲むと、同じものを持って来てと、ヤクトゥーに告げる。
そんなことをしているとムキムキな男がマーマーミャーミャー言いながら手を叩いて此方にやってくる。
何言ってんのか分からね。ヤクトゥーはへへーと頭を深く下げるだけだ。
「3行」
「よくやったト。
女の身デ、目を見張ル。
この後、一手お願いシタイ」
キレそう。
「殿下ー?」
「怪我だけはさせないように」
「りょーかい」
腹ごなしになると良いが……
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