私の趣味が誰にも理解されません、助けてセイちゃん
『腹を空かせる夕暮時、私は一人部屋でモヤシ炒めを食べている』
『私がこんな貧相な夕ご飯を食べているのは端的に言ってお金がないからだ』
『一瞬で空になった皿をテーブルの上に置くと、部屋を埋め尽くす勢いでそびえたつ本の山が私の目に映る』
『大きさもページ数もバラバラであるこの本たちだが、友人いわく一つ共通点があるらしい』
『どの本のタイトルも胡散臭いものばかりであるとのことであった』
『この一週間でよくもこんなに買ったものだと、どこか他人事のように呟きながら台所に行き、モヤシ炒めを入れていた皿を洗う』
『そう言えば先週の夕食は豪勢に外食をしたな……なんてことを思い出す』
『友人は私のことを愚かだと言った』
『まがい物の夢に惑わされ挙句の果てに毎日腹の虫を空かしているじゃないかと』
『そんな友人に私は言った』
『今までのように暮らしていれば今のような貧困を味わうこともなかっただろう……しかし、それでは私の心はそのうち枯れてしまっていただろう』
『私はもう自分の心にときめくような夢を与えられないのだ。ちょっとでも気を抜けば無気力に毎日を過ごす肉体だけが生きている
『だから今の私には自分の外から夢を持ってくる他、幸せに生きる道はないのだと思う』
『たとえまがい物の夢だとしても、腹を空かせて肉体が悲鳴をあげていたとしても、今の私の心はこんなにも穏やかなのだから』
配信後、某SNSにて
「趣味が理解されないのは……辛いね、リスナーさんも強く生きて」
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