第345話 コウガの正体
「う、ぐぅっ……!?」
闇属性の魔力に包まれたマオは口元を抑え、体内の魔力が掻き乱される感覚を抱く。まるで身体の中に毒を流し込まれた気分になり、立っていられずにマオは膝をついてしまう。
これまでも吸魔石や吸魔腕輪で魔力を吸い取られて気分を害した事はあったが、魔操術を極める事で体内に魔力を押し留める事で奪われる魔力を抑え込む事はできた。しかし、今回の場合は外部から流れ込む闇属性の魔力のせいで体調を崩す。
(駄目だ、この魔力は跳ね除ける事ができない……!?)
自分の魔力ならば自在に操る事はできるが、外部から取り込んだ魔力はマオの魔力ではないので魔操術でも操る事はできない。もしも自分の適正属性の魔力ならば自分の魔力に変換させる事もできたかもしれないが、マオは闇属性の適性は持ち合わせていない。
(このままだとまずい、早く離れないと……)
身体が動けるうちにマオは逃げようとしたが、周囲は闇属性の魔力の霧によって覆われ、自分が何処にいるのかも分からない状態だった。それでもマオは何とか立ち上がって黒霧から抜け出そうとした時、何者かが彼の首根っこを掴む。
「ふんっ!!」
「ぐはっ!?」
後ろから首を掴まれたマオは苦しげな声を上げ、彼は首元を圧迫されながらも自分を掴み上げた人物に顔を向けると、そこにはコウガの顔があった。彼は黒霧の中でマオの元にまで迫り、彼の首を掴んで無理やりに立ち上がらせる。
「手こずらせやがって……だが、これで終わりだ」
「な、何で……!?」
黒霧の中でコウガが平気そうに立っている事にマオは信じられず、並の人間ならばこの黒霧に入るだけでも危険な状態に陥る。闇属性の魔力は生命力を奪うため、魔力を扱う事もできない人間ならば昏倒してもおかしくはない。
――しかし、コウガは普通の人間ではなかった。彼は純粋な獣人族ではなく、巨人族の血を継ぐ存在だった。獣人族の中でも肉食獣型の獣人は生命力が強く、しかも巨人族の血を継ぐ彼は魔法の耐性を持っていた。巨人族は魔法耐性が優れた種族であり、生命力と魔法耐性の能力を受け継いだコウガは闇属性の魔力を取り込んでも普通の人間のように簡単には倒れない。
黒霧の中での行動はコウガの肉体にも負担を与えるが、それでも他の人間と比べれば数分程度では身体を動かす事ができた。コウガは数分もあればどんな相手でも仕留める自信はあった。
「大した小僧だ……まさかマリアを殺すために用意したこいつを使う羽目になるとはな」
「学園長を……!?」
「おっと、くだらない長話をするつもりはない。死ねっ!!」
「ぐふっ!?」
コウガはマオの腹部に膝蹴りを叩き込むと、マオは苦痛の表情を浮かべて吹き飛ぶ。この際に彼は黒霧から放り出されるが、闇属性の魔力を既に体内に取り込んでしまったマオは身体が動かせない。
(駄目だ、闇属性の魔力が抜けきらないと魔法は使えない……!?)
闇属性の魔力が消えるまではマオは魔法を封じられ、黒霧から脱出しても彼は身体が麻痺したように動かない。そんな彼をコウガは見下ろし、剛魔拳を振りかざす。
「死ねっ!!」
「くぅっ!?」
倒れたマオに目掛けてコウガは剛魔拳を振り下ろした瞬間、突風が発生してマオとコウガの周囲に散らばっていた黒霧を吹き飛ばす。
「スラッシュ!!」
「何!?」
「この風は……先輩!?」
突風を発生させたのは十数メートルほど離れた距離に立つバルトであり、彼は杖を使って風の斬撃を放つ。コウガに目掛けて放たれた風の斬撃は黒霧を吹き飛ばし、そのままコウガを切り裂こうとした。
コウガは咄嗟に後ろに下がって斬撃を回避すると、マオとコウガの間に風の斬撃が通過する。そのお陰で二人の周囲に広がりかけていた黒霧は完全に吹き飛び、それを見たバルトはコウガに声をかける。
「俺の後輩に手を出すな!!」
「ちっ……仲間が居たか」
「せ、先輩……気をつけて、この男は……」
バルトに気付いたコウガは面倒そうな表情を浮かべ、風の魔法で黒霧を吹き飛ばした彼に狙いを変える。マオはバルトにコウガの危険性を伝えようとした時、バルトは笑みを浮かべた。
「おい、デカブツ!!お前の相手は俺だけじゃないぞ!?」
「何を言って……むっ!?」
「炎爪!!」
コウガはバルトの言葉に疑問を抱くが、直後に背後から気配を感じて振り返ると、そこには両手に炎の爪を纏ったミイナが迫っていた。彼女はコウガに目掛けて両手の爪を振りかざすと、慌ててコウガは剛魔拳で炎爪を受け止める。
「ていっ」
「ぐうっ!?」
「ミイナ!?」
ミイナの攻撃を受けたコウガは後退し、先ほどの黒霧の影響で彼自身も体調不良を引き起こしていたので咄嗟に反撃も回避もできなかった。その間にミイナはマオの元に急ぎ、彼に青色の液体が入った薬を差し出す。
「マオ、これを飲んで」
「これは……」
「魔力回復薬、これを飲めばすぐに元気になるはず」
「させるか!!」
マオに薬を渡そうとするミイナを見てコウガは慌てて彼女の元に向かう。マオが復活すれば彼に勝ち目はなく、なんとしても薬を奪い取ろうとするがミイナはそんな彼に炎爪を放つ。
※すいません!!投稿が少し遅れました!!
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