第335話 真に恐ろしい男は……
盗賊ギルドが獣牙団を呼び寄せた事も把握しており、彼等を利用して城下町で騒ぎを起こして人々を混乱させ、王都の警備兵や冒険者の注意を反らす。その間に魔法学園に侵入し、マリアの姪であるミイナを誘拐する事がリクの計画だと知る。
ミイナを誘拐した後は彼女を洗脳して解放し、この時に魔法使いにとっては致命的な魔封じの腕輪をマリアに装着させる。この腕輪を装着された人間は魔法が封じられ、如何にマリアであろうと魔法の力を使えなければ簡単に殺す事ができる。だからこそ計画の要となるミイナは何としても誘拐しなければならなかった。
計画の全容を知ったマリアは事前にミイナには女子寮から離れないように注意し、生徒会に所属する生徒達にだけ学園内に侵入者が現れるかもしれない事を注意する。バルルは表向きは寮母として働いてもらい、もしも女子寮に獣牙団の傭兵が現れれば彼女が対処する様に頼む。
学園内にはマリアが雇った兵士も配置されているが、彼等は戦力としては期待していなかった。ただの人間の兵士では実戦慣れしている獣牙団の傭兵には敵わず、そもそも兵士達の中には盗賊ギルドと繋がっている者も居た。だからこそマリアは信頼する魔法学園の生徒達に学園の事を任せる事にした。
「マリア様!!先ほど黄金の鷹の方々が城下町の獣牙団の傭兵を一掃したそうです!!捕まえた傭兵を吐かせたところ、どうやら獣牙団の団長はネカと呼ばれる商人の屋敷に待機しているそうです!!そちらの方もすぐに兵士と冒険者を手配しました!!」
「そう……どうやら貴方達の命運もここまでのようね」
「そ、そんな……」
「ぐうっ……」
マリアの元に兵士が駆けつけ、連絡を行うと彼女は倒れているワンとゴーノに視線を向けた。盗賊ギルドの七影でありながらあまりにも呆気なく捕まった二人にマリアは拍子抜けしてしまい、エルマに指示を出す。
「この二人もスリンと同じように監獄に送りなさい」
「ここで始末しないのですか?」
「盗賊ギルドを完全に潰すにはこの二人にも色々と情報を聞き出してからよ。盗賊ギルドと繋がりを持つ貴族もいるのでしょう?その貴族の事も色々と話して貰うわ」
盗賊ギルドがこれまで組織として保ってきたのは国の貴族とも繋がりがあったからであり、恐らくは何者かが盗賊ギルドを裏から支援していた。その何者かの正体もマリアは既に気付いていた。
「王妃が貴方達が捕まったと知ればどんな反応をするのかしらね」
「な、何だと!?貴様、何処まで知っている……!!」
「お、王妃だと……!?」
マリアの言葉にワンは明らかに動揺を示すが、ゴーノの方は訝し気な表情を浮かべた。その二人の反応を見てマリアはワンが王妃と繋がりを持っている事に気付き、盗賊ギルドを裏から支援していたのは黒幕は王妃だと悟る。
(よりにもよって国を支えるべき王族が盗賊ギルドの支援を行っているなんて……でも、これでようやく尻尾は掴めたわ)
王妃が盗賊ギルドの支援者だと判明すれば彼女を失脚に追い詰められる。そうなれば王妃の実の子供である第二王子も王位継承者から外され、今は国外にいる第三王子のリオンが王位を継ぐ。
密かにマリアはリオンを支援しており、彼女としては裏で悪事を働く第二王子が国王の座に就くよりもリオンが王位を継承する方が国のためだと思っている。昔と比べて彼も友人を得た事で性格も丸くなり、立派な青年へと成長していた。
「この二人を連行しなさい。抵抗はもうできないと思うけど、念のために拘束しておきなさい」
「分かりました。マリア様はこれからどうされますか?」
「私は一旦は魔法学園へ向かうわ。大丈夫だとは思うけど、生徒達の身に危険が起きていないのか確かめておくわ」
「分かりました。獣牙団の団長の方は……」
「私が指示を出さなくても黄金の鷹と冒険者が既に動いているでしょう。そちらの方は心配する必要ないわ」
捕縛したワンとゴーノはスリンと同様に監獄に送り込み、マリアは魔法学園へと戻ろうとした。しかし、そんな彼女にワンは数人の兵士に抑えつけられながらも怒鳴りつける。
「マリア!!盗賊ギルドを舐めるなよ、貴様の命はこれまでだ!!」
「……往生際が悪いわね。貴方達に私は殺せないわ」
「それはどうかな……お前は何も知らない!!奴の恐ろしさをな!!」
「奴?」
ワンの言葉にマリアは眉をしかめ、誰の事を言っているのかと疑問を抱くと、ワンは最も自分が憎み、同時に恐怖を抱く相手の名前を告げた。
「お前の暗殺計画を立てたのはリクだ。だが、真に恐ろしいのは奴ではない……ニノだ!!奴程の男が簡単に捕まると思うなよ!!」
「……早く連れて行きなさい」
「は、はい!!」
マリアの言葉にエルマは即座にワンとゴーノを連れ去り、マリアはすぐに魔法学園に戻る事にした――
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