第271話 培った技術
「はあっ……疲れた」
倒したロックゴーレムから魔石を拾い上げたマオは一先ずは布で覆って鞄にしまう。この魔石がロックゴーレムにとっては心臓その物であり、魔石を抜き取られたロックゴーレムはただの岩石の塊と化した。動かなくなったロックゴーレムを見下ろし、このような化物を一人で倒した事にマオは我ながら驚きを隠せない。
(強かったな、本当に……でも、勝ったんだ)
赤毛熊のような俊敏さはないがロックゴーレムの怪力は赤毛熊を誇り、その外殻の硬さも尋常ではなかった。少なくとも3年前のマオではどうしようもできなかった相手かもしれない。
マリアに教わった変換術と収束術は習得までに大分長い時間は掛かったが、それでも実戦で使用できる
魔操術を極めていた事でマオはこの二つの技術を覚える事ができた。マリアによれば才能がある魔術師でも数年を費やして覚えるはずの技術をマオは数か月程度で覚える事ができた。これも魔力量が少ないという才能を持つマオならではであり、彼は他の魔術師よりも成長が早い。
(さてと、魔石も回収したし……早くこんな場所から離れよう)
ドルトンが必要とする魔石を手に入れたマオは早々に火山から離れようと元来た道を戻ろうとした時、不意に彼は遠くの方から人の話し声を耳にした。
(あれ!?この声は……)
声が聞こえたマオは慌てて近くの岩に身を隠して様子を伺うと、一組の男女が姿を現わす。その内の女性はマオが良く知る人物だった。
「ふうっ……相変わらずここは暑っ苦しいね」
「……そうだな」
姿を現わしたのは現在は王都を離れて任務に就いているはずのバルルと、巨人族の男性だった。男性の方は並の巨人族よりも頭一つ分小さく、それでもマオの倍近くの体躯を誇る。
バルルが巨人族の男性と共に現れた事にマオは驚くが、どうして彼女が火山にいるのかと気にかかる。マオは咄嗟に姿を現わして声をかけようかと思ったが、ここにいる事が彼女に気付かれると色々と面倒な事になりそうだと思って見を隠す。
(どうして師匠がここに……)
岩陰からマオは様子を伺い、決して気付かれないように音を立てずに大人しくする。幸いにもバルルも巨人族の男性も火山の熱気に当てられたせいか注意力が散漫となっており、マオの存在に気付かずに通り過ぎた。
「ゴンゾウ、あんたがいてくれて本当に助かったよ。あそこまで行くのにあたし一人だときつかったからね」
「気にするな、それにしてもまさかあれを取りに戻るとは……」
巨人族の男性は名前はゴンゾウというらしく、どうやら二人とも火山に訪れた目的は何かを回収するために訪れたようだが、それが気になったマオは後を尾ける事にした。
(師匠、どうしてこんな所に……何かを取りに来たみたいだけど)
こっそりとマオは二人の後に続き、火山の火口付近まで移動した。流石に火口は麓と比べると熱量が違い、先を歩く二人もマントで身を包む。
「くっ……こんな所にいると肺が焼けちまうよ。さっさと回収して戻るよ」
「同感だ」
「…………?」
二人の目的の物はどうやら火山の火口にある事にマオは気付くが、その目的の物が未だに想像がつかない。いったい二人が何をしに来たのかと思いながらもマオは後を続くと、火口の方から思いもよらぬ存在が現れた。
「ゴオオッ!!」
「ゴアッ!!」
「ちっ、出てきやがったね!!」
「ロックゴーレムか」
火口付近にてロックゴーレムが出現し、それも同時に二体も現れた。マオが戦った二体よりもどちらも体格が大きく、火口に近付こうとするバルルとゴンゾウの前に立ち塞がった。
ロックゴーレムが現れたのを見てマオは咄嗟に三又の杖を取り出し、二人の援護の準備を行う。もしもロックゴーレムに襲われた二人が窮地に陥ったら助けようと考えた彼だが、その考えは杞憂に終わる。
「ゴンゾウ、やっちまいな」
「ああ」
「「ゴォオオオッ!!」」
バルルに言われてゴンゾウは前に出ると、ロックゴーレムは自分達よりも巨大な彼を見ても怯まず、坂道を駆け下りて突進してきた。しかし、そんなロックゴーレムに対してゴンゾウは両腕を伸ばすと二体の頭部を掴む。
「ふんっ!!」
「「ゴガァッ!?」」
「おお、相変わらずの馬鹿力だね」
「っ……!?」
マオが苦戦したロックゴーレムを2体まとめてゴンゾウは地面に叩き付け、その衝撃だけでロックゴーレムの頭部に亀裂が走る。更にゴンゾウは2体を持ち上げると、もう一度地面に放り込む。
「ぬんっ!!」
「「ゴギャッ!?」」
二体のロックゴーレムは再び地面に叩き付けられ、その際の衝撃で全身に亀裂が広がった。この時にゴンゾウはロックゴーレムの胸元に埋め込まれた魔石を握りしめ、力ずくで引き剥がす。
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