第270話 変換術と収束術
(あの地獄の特訓を思い出すんだ!!)
マリアから課せられた厳しい訓練の日々を思い出し、マオは右手の杖でロックゴーレムの動きを牽制し、左手の杖で魔法を作り出す。この時に彼は左手の小杖に多めの魔力を注ぎ、徐々に氷塊が巨大化していく。
(もっと大きく……!!)
魔力量が少ないマオでは一度に作り出せる氷塊の大きさはせいぜい1メートル程度が限界だった。しかし、彼は戦闘の際中に目を閉じて精神を集中させる。この時ばかりは攻撃を中断しなければならず、ロックゴーレムは氷弾の攻撃が止まった途端にマオに接近する。
「ゴオオッ!!」
「…………」
ロックゴーレムの声が近付いている事に気付きながらもマオは目を開かず、魔力を回復させる事に集中させる。毎日の精神鍛錬のお陰で彼はその気になれば数秒程で魔力を完全に回復させる事ができた。
距離が会った事と先の攻撃でロックゴーレムの動きが鈍っていた事も有り、数秒のっ時間を稼ぐ事ができたマオは小杖の先端から作り出した氷塊を更に巨大化させ、形を変化させた。魔力が回復した事で今までは1メートル程度の氷塊しか作り出せなかったが、魔力を回復させればより大きな氷塊を作り出せる。
「はぁあああっ!!」
「ゴアッ……!?」
小杖の先端に全魔力を注ぎながらマオは振り払うと、ロックゴーレムの元に一回り程大きくなった氷塊が迫った。それを見たロックゴーレムは咄嗟に受け止めようとした。
「ゴオオッ!?」
「無駄だ!!」
巨大化した氷塊を受け止めたロックゴーレムであったが、マオは更に氷塊を押し込んでロックゴーレムを壁際まで追い込む。岩壁に追い込まれたロックゴーレムは必死に氷塊を振り払おうとするが、マオの意思で動く氷塊からは逃れられない。
ロックゴーレムを追い込んだマオは目を閉じて魔力を再び回復させると、ロックゴーレムが動かない隙に次の攻撃を繰り出す。ロックゴーレムは氷塊に押し込まれた状態で動かず、その状態からマオは続けてマリアに教わった別の技術を試す。
『戦闘中に魔力を回復させて攻撃に変換する事には慣れた様ね』
『はあっ、はあっ……ど、どうにか』
『魔力量が少ない貴方なら魔力を完全に回復するまでそれほど時間は掛からない。でも、戦闘中の緊迫した雰囲気の中で変換術を何度も使えば精神が消耗して下手をしたら壊れかねないわ。だからもう一つの技術を伝授しましょう』
『えっ……』
『その技術の名前は「収束術」さあ、構えなさい。変換術の訓練よりも厳しくなるわよ』
変換術の修行がひと段落着いた頃にマリアは新しい技術の修行を告げ、その後にマオは休みなく地獄の修行を繰り返す事になる。
(今の僕ならできる……はず!!)
巨大な氷塊を押し込まれた事でロックゴーレムは動きが制限され、先ほどのように魔石を暴走させて氷塊を破壊させる方法があるが、その手段を取る前にマオは勝負を決めるつもりだった。
三又の杖を腰に差したマオは小杖を取り出し、今回行う技は小杖の方が都合が良い。性能面は三又の杖より劣る小杖だが、たった一つだけ長所があるとすれば一つの魔法しか作り出せない事である。
(これで終わらせる!!)
意識を集中させてマオは氷塊を作り出すと、形を変形させる。大きさに関しては氷弾とそれほど大差はないが、氷弾と違う点は魔力を注ぎ込める量が異なる。本来であれば魔力が大きいほどに作り出せる氷塊も大きくなるが、今回は氷塊の大きさを変化させず、代わりに強度の強化を行う。
(魔力を圧縮させろ!!)
マリアから教わった収束術とは魔力を圧縮させ、規模を変化させずに威力や性能を強化させる技術だった。例えるならばマオが普段から扱っている氷弾の場合、射程距離は数十メートルが限界で遠くに離れる程の威力は落ちる。
しかし、収束術で生み出した氷弾の場合は射程距離は倍以上に伸びて威力の方も格段に上がる。その代わりに魔力を圧縮させるのに時間が掛かり、相手をまずは足止めしなければならない。
(学園長のようにまだ上手くはできないけど……これならいける!!)
通常よりも魔力を込めた氷弾を作り出したマオはロックゴーレムに狙いを定め、巨大な氷塊に押し込まれたロックゴーレムに目掛けて小杖を突き出す。
「喰らえっ!!」
「ゴアッ――!?」
ロックゴーレムを押し込んだ氷塊越しに氷弾は発射され、強化された氷弾は巨大な氷塊を貫通してロックゴーレムの胸元を貫く。この際に氷弾が貫通した氷塊に亀裂が走り、やがて崩壊した。
氷塊が砕け散ると残されたのは胸元に風穴が空いたロックゴーレムだけであり、普通の生物なら絶命してもおかしくはないが、頭を吹き飛ばされても生きているロックゴーレムにとっては大した損傷ではない。しかし、マオの狙いはロックゴーレムではなく、その体内に埋め込まれている魔石だった。
「ゴアアッ……!?」
「……終わりだ」
氷弾の
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