第269話 マリアの教え
「ゴルァアアアッ!!」
「嘘っ!?」
ロックゴーレムは洞窟の岩壁に拳を叩き込むと、亀裂が走って岩壁の一部が剥がれ落ちた。岩壁を破壊して引き剥がした岩石をロックゴーレムは持ち上げ、マオに目掛けて投げ放つ。
慌ててマオは氷板から飛び降りると投げ放たれた岩石は彼の頭上を通り過ぎ、そのまま地面に墜落した。もしも岩石を受けていたマオの命はなく、彼はロックゴーレムを完全に怒らせてしまった事を理解した。
(さっきの奴より小柄だけど、動きが速い!!)
先ほど倒したロックゴーレムは大柄で動きは鈍かったが、今回現れたロックゴーレムは体型はマオとそれほど変わらず、その分に動きも速かった。岩壁を破壊して岩石を軽々と投げ飛ばせる程の膂力を誇り、しかも先のロックゴーレムと違って自らが積極的に動く。
「ゴオオッ!!」
「うわっ!?」
ロックゴーレムはマオの元に駆けつけると拳を振りかざし、容赦なく攻撃を繰り出す。マオはロックゴーレムの繰り出す拳を躱しながら距離を取ろうとするが、ロックゴーレムは彼から離れずに拳を振りかざす。
(一発でも受けたらまずい!!)
先ほどのロックゴーレムの怪力を見せつけられたマオは攻撃を掠っただけでも危ういと判断し、どうにかロックゴーレムの攻撃を躱す。この三年の間にマオはバルルやミイナを相手に「体術」の修行も行っており、冷静にロックゴーレムの動作を見て攻撃を躱す。
(大丈夫、さっきの奴より動きが速いと言ってもこれなら避けられる)
焦らず冷静にマオはロックゴーレムの動きを見抜き、攻撃を躱して反撃の隙を伺う。バルルやミイナのような格闘家とは違い、ロックゴーレムの攻撃は力任せに拳を振るだけで動きは読みやすい。
攻撃を躱しながらもマオはロックゴーレムの隙を伺い、相手が焦れてマオを捕まえようと両腕を広げる。その瞬間を逃さずにマオは三又の杖を構えた。
「ゴアッ!!」
「そこっ!!」
マオは左右から腕を伸ばして自分を捕まえようとしてきたロックゴーレムに対し、三又の杖を突き出してロックゴーレムの腹部に構えると魔法を放つ。三つに分かれた杖の先端から風の魔力が加わって回転力を増した氷弾が三発分撃ち込まれた。
「ゴガァッ!?」
「まだまだ!!」
攻撃を受けて怯んだロックゴーレムに対してマオは三又の杖の先端部を回転させ、ガトリング砲のように氷弾を乱射した。一発一発は大した威力ではないが、次々と腹部に氷弾を受けたロックゴーレムは後退する。
「ゴアアッ……!?」
「おおおおおおっ!!」
ロックゴーレムが仰け反るとマオは氷弾を乱射しながらも後退し、この時に彼は小杖を取り出す。右手で氷弾を放ちながらも左手で小杖を手にしたマオは杖を上空に構え、この時にマオは再び目を閉じた。
(あれを試す好機だ!!)
何十発も氷弾を受けた事でロックゴーレムは動きが鈍り、今ならばマオは
――魔力量が少ないマオはどれだけ魔力操作の技術を極めたとしても、一度に作り出せる魔法の規模は限界が存在する。だからこそマオは複数の氷塊を生み出してそれらを結合させて攻撃を行ったり、あるいは氷に風の魔力を加えて威力を強化させるという手法を生み出した。
しかし、どちらの方法もマオには大きな負担が掛かり、この先にそんな無茶な戦い方を続ける事をマリアは危惧した。マオの編み出した戦法を否定するわけではないが、マリアはもっと効率よく魔法を強化する方法を授けた。
『今から貴方に教えるのは本来は「技」や「技術」と呼べる代物ではないわ。だけど、強いて名前を付けるなら私はこれを「変換術」と呼んでいるわ』
『変換術……?』
『貴方は魔力を回復させる術はもう身に着けたわね。だけど、戦闘に使った事はあるかしら?』
『えっ……戦闘で?』
マリアに教わった精神鍛錬によってマオは自力で魔力を回復させる手段を身に付けた。しかし、戦闘の途中で魔力を回復させた事は殆どない。
『何回か魔力が切れかかった時に使った事はあると思いますけど……』
『魔力が切れかかっていない時に使った事ないのね?』
『え、そりゃまあ……』
マオは魔力を回復させるときは常に魔力が切れかけた時だけだったが、マリアはマオに魔力を自力で回復させる手段を教えた本当の理由を話す。
『勿体ないわね。魔力が切れた時にだけ魔力を回復させるなんて……』
『ど、どういう意味ですか?他に使い道があるんですか?』
『あるわ。この方法を教えれば貴方は自分の限界以上の魔法を使う事だって可能よ』
『えっ!?』
これまでにマオは魔力量の問題で一度に作り出せる魔法には限界があった。しかし、マリアの教える方法を用いれば彼は限界を超えた魔法が使えるという。
『この技を人に教えるのは私も初めてよ。だけど、貴方なら使いこなせる。それだけの技術を貴方は既に持っている』
『技術……』
『さあ、構えなさい。私はバルル程甘くはないわよ』
『えっ』
この後、マオはマリアから想像以上の訓練を受けた。日頃からバルルの厳しい訓練を受けていたマオだったが、マリアの訓練はバルルの時よりもきつく厳しい鍛錬を課せられた――
※マリアは普段は優しいですが、指導の時は割とスパルタ教育です(笑)
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