第268話 回収失敗
「はあっ、はあっ……し、死ぬかと思った」
ロックゴーレムの残骸を見下ろしながらマオは全身から汗を流し、もしも逃げるのが遅れていた爆発に巻き込まれて死んでいたかもしれない。
「……粉々に砕け散っちゃったよ」
残骸を確認したマオは深々と溜息を吐き、先ほどの爆発のせいで魔石も吹き飛んでしまい、回収には失敗した。グマグ火山に訪れた目的はロックゴーレムを倒して魔石を回収する事だったが、マオはロックゴーレムを倒す事はできたが魔石の回収に失敗してしまった。
最後の攻撃で魔石を狙わなければロックゴーレムが爆発する事はなかったが、その時はマオがロックゴーレムの放つ爆炎の餌食になって死んでいた。そう考えると最後の攻撃は仕方なかったが、このまま王都には戻れない。
(他にロックゴーレムがまだ残っているかもしれない。どうにか今度は魔石を傷つけずに倒さないと……)
次のロックゴーレムを探し出して今度こそ魔石を破壊せずに回収する事を決め、マオは再び探索を再開しようとした。しかし、先の戦闘のせいかマオは頭痛を覚えて膝をつく。
「流石に疲れたな……薬を飲もう」
本来であればゆっくりと休むべきところだが、このような危険な場所で身体を休める余裕はなく、マオは薬を取り出して飲み込む。手持ちの薬も大分減ってしまい、帰りの事を考えるとこれ以上に薬は無駄にできない。
(帰る時のために魔力回復薬だけは残しておかないと……それにしても熱いな、何処かで涼しめる場所はないかな)
体力と魔力を取り戻す事ができても火山の熱気にいい加減に我慢の限界を迎えたマオは洞窟に視線を向け、ある事を思いつく。
(そうだ、あそこなら休めるかも……)
先ほどはロックゴーレムに襲われてマオは洞窟の中に入れなかったが、彼は再び洞窟の中に入り込む。この時にロックゴーレムが岩壁に擬態していないのか注意しながら先に進み、ある程度奥まで進むと杖を構えた。
外で氷を作り出したとしても熱気のせいですぐに溶けてしまうが、洞窟のような場所ならば出入口を密封すれば氷の冷気が漏れ出す事はなく、外にいるよりも涼しくなるはずだった。
「よし、ここならいいか」
杖を取り出したマオは最初に
本来であればマオの魔力量では作り出せるはずのない大きさの氷塊を作り出し、更に反対側にも同じ大きさの氷塊を作り出す。この時にマオは常に目を閉じており、相当な集中力を発揮させる。
「ふうっ……流石にきついな、けどこれで涼しくはなったかな」
通路の左右を氷塊で塞いだことで間に挟まれたマオは冷気が漂う空間で身体を休ませ、しばらくの間は休憩して体力を取り戻そうとする。だが、この時にマオは頭痛に襲われて頭を抑えた。
(いててっ……やっぱり、この技は頭が痛いな)
マオが本来は作り出せないはずの氷塊を生み出した原因は彼がこの2年の間に身に付けた「技」が関係している。この技を教えたのはバルルではなく、最近は姿を見せる事も減ったとある人物から直々に指導を受けて身に付けた。
(……よし、そろそろ行こう)
氷塊の放つ冷気のお陰でマオは身体を冷やす事に成功し、体力を取り戻した彼は魔法を解除して先に進もうとした。だが、マオは出て行こうとした時に洞窟の奥から物音が響く。
(何だ!?後ろか!?)
洞窟の奥の方から聞こえてきた声にマオは咄嗟に三又の杖を構えるが、先ほどランタンを失くしたせいで奥の様子が分からない。マオはランタンの他に灯りを点ける道具は持ち合わせておらず、一旦洞窟の外に向かう。
物音は徐々に近付いており、洞窟の外に抜け出したマオは三又の杖を構えて洞窟から現れようとする存在を待ち構える。しかし、しばらくすると物音が聞こえなくなってしまい、疑問を抱いたマオは杖を構えたまま洞窟に再び近付く。
(……何なんだ?)
洞窟の奥に何かが潜んでいる事は確かなのだが、マオはそれを確かめるために洞窟へと近づく。今度は岩壁の様子を伺い、ロックゴーレムが擬態していないのか注意しながら近付こうとした瞬間、洞窟の地面から岩石で構成された腕が出現した。
「ゴオオッ!!」
「うわぁっ!?」
洞窟の壁ばかりに意識を注意していたマオは地面から出現した腕に捕まってしまい、やがて地面からロックゴーレムが出現した。どうやら先ほどの物音はロックゴーレムが地中を移動する音だったらしく、足を掴まれたマオは咄嗟に杖を伸ばす。
「離せっ!!」
「ゴアッ!?」
ロックゴーレムに持ち上げられたマオは杖を突き出してロックゴーレムの顔面に至近距離から氷弾を放ち、攻撃を受けたロックゴーレムは怯むが即座にマオを投げ飛ばす。
「ゴアアアアッ!!」
「うわぁあああっ!?」
投げ飛ばされたマオは咄嗟に地面に叩き付けられる前に空中で氷板を作り出し、それにしがみつく形で勢いを弱める。氷板のお陰でマオは地面に叩き付けられる寸前で停止するが、一方でロックゴーレムの方は次の攻撃に移っていた。
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