第267話 ゴーレムの能力

氷柱弾キャノン!!」

「アガァアアアアッ!!」



マオが氷柱弾を放った瞬間、ロックゴーレムは人面の口元の部分が砕け、内部から炎を放つ。炎というよりも爆炎という表現が近く、正面から近づいた氷柱弾は爆炎に飲み込まれて蒸発した。


並の魔術師の中級魔法を越える威力を誇る氷柱弾が一瞬で蒸発した事にマオは驚き、一方で水に濡れて弱体化していたロックゴーレムの体色が元に戻る。それを見たマオはロックゴーレムの胸元の魔石に視線を向けた。



(まさか、あの胸の魔石を利用して水分を蒸発させた!?あの爆発も魔石の力なのか!?)



ロックゴーレムは炎を吐き出すだけではなく、全身の肉体の温度を上昇させて水分を蒸発させる事もできるらしく、マオは冷や汗を流しながらロックゴーレムと距離を置く。



(あんな爆炎に巻き込まれたらいくら赤毛熊のマントでも防ぎきれない!!)



赤毛熊のマントは熱に強いといっても氷柱弾を蒸発させる程の爆炎を受ければひとたまりもない。マオはロックゴーレムから距離を置こうとしたが、この時にロックゴーレムにも異変が起きた。



「ゴアッ……!?」

「えっ?」



マオがまだ何もしていないのにロックゴーレムは膝を崩し、魔石の輝きが消えていく。その様子を見たマオは疑問を抱き、今ならば攻撃を仕掛ける好機だった。



(なんだかよく分からないけど、今なら当てられる!!)



動きが鈍ったロックゴーレムに対してマオは三又の杖を構え、今度こそ破壊するために氷柱弾を形成する。ロックゴーレムはマオの様子に気付いていないのか顔を伏せたまま動かない。


動きを完全に停止させたロックゴーレムに対してマオは違和感を抱きながらも、作り上げた氷柱に風の魔力を送り込んで回転を加え、ロックゴーレムの頭部に目掛けて放つ。



「喰らえっ!!」

「ッ――!?」



二発目の氷柱弾に対してロックゴーレムは避ける暇もなく頭部に的中し、粉々に砕け散った。頭を失った胴体は仰向けに地面に倒れると、それを見たマオは呆気なく倒れたロックゴーレムに唖然とする。



「……倒した?」



頭を失ったロックゴーレムを見てマオは自分が勝利したのかと思ったが、あれほど苦戦した相手があっさりと倒れた事に違和感を抱く。



「本当に死んでいるのかな……」



恐る恐るマオは頭部を失ったロックゴーレムに近付くと、この時に彼はロックゴーレムの胸元の魔石に視線を向けた。先ほどまで赤々と光り輝いていたが、何故か今は色が薄まっていた。


魔石の色合いが薄くなっている事にマオは不審に思い、もう少し詳しく調べようと近づいた途端、死んだと思われていたロックゴーレムの胴体が動き出す。



「ッ……!!」

「うわっ!?」



頭を失ったにも関わらずにロックゴーレムの胴体が動き出し、近づいたマオを捕まえようとしてきた。それに対してマオは反射的に後ろに仰け反り、三又の杖を地面に構えて氷板スノボを作り出して背中から倒れ込み、後ろに移動する。



「くっ、頭を失っても動けるなんて……えっ!?」



氷板のお陰でマオは距離を取る事に成功したが、彼に逃れられたロックゴーレムは起き上がると、胸元の部分に人面が浮き上がった。


マオは先ほどロックゴーレムの背中側に回り込もうとした時に後頭部に人面が浮き上がった事を思い出し、どうやらロックゴーレムは肉体の至る箇所に人面を浮き上がらせる事ができると知った。



「ゴァアアアッ!!」

「しつこいな……くそっ!!」



胸元の部分に人面が浮き上がったロックゴーレムは、額の部分に移動した魔石を輝かせて口元を開いた。それを見たマオは先ほどの爆炎が襲い掛かると思い、咄嗟に三又の杖を構える。



(まずい!!攻撃を止めないと!!)



もしも氷柱弾を溶かす程の爆炎を受ければ赤毛熊のマントを纏うマオでも命はなく、彼はロックゴーレムが攻撃を繰り出す前に口元に杖を構えて魔法を放つ。



(狙うのは……あそこだ!!)



ロックゴーレムが攻撃を放つ前にマオはに狙いを定め、一瞬だけ躊躇したが生き延びるために仕方なく攻撃を行う。



「氷弾!!」

「ゴアッ――!?」



魔石に氷弾が的中した瞬間、ロックゴーレムの身体が硬直した。魔石に氷弾がめり込んで亀裂が走ると、それを見たマオは慌てて氷板を操作して距離を取る。


内に膨大な魔力を秘める魔石が壊れた場合、魔石の内部に秘められていた魔力が暴走する。秘められた魔力が火属性の場合は爆炎の如く魔力が放出され、ロックゴーレムの肉体ごと吹き飛ぶ。



「うわぁあああっ!?」



氷板からマオは降りたマオは地面に伏せると、吹き飛んだロックゴーレムの残骸が彼の元に降り注ぐ。どうにかマントのお陰でマオは身を守る事ができたが、ロックゴーレムが存在した場所は爆発の影響でクレーターができあがり、ロックゴーレムは原型すら残さない程に砕け散っていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る