第242話 最強の師弟

「よく頑張ったね、あんた達!!後の事は任せな!!」

「し、師匠……」

「子供達は私が守るわ。貴女は遠慮なく、戦いなさい」

「あいよ!!」



バルルとマリアが現れた事でマオ達は安堵するが、傷ついた彼等の傍にマリアが赴くとバルルは吹っ飛んだガーゴイルと向かい合う。彼女は既に魔法腕輪を装着し、更には両手には腕手甲のような武器を装着していた。


ガーゴイルは吹き飛ばされた際に地面に倒れたが、特に怪我は負っていなかった。ガーゴイルはあらゆる魔法耐性を誇るため、マリアの魔法が直撃しても損傷は負っておらず、それどころか興奮した様子で鳴き声を上げる。



「キェエエエエッ!!」

「うわっ!?」

「くそ、またか!?」

「にゃうっ……」



ガーゴイルが鳴き声を放つと超音波のように周囲に拡散し、マオ達は両手で耳を塞塞ぐ。それを見たマリアは面倒そうに杖を振りかざし、無詠唱で彼女は風の防護壁を作り出す。



「貴方達はこの中にいなさい」

「うわっ!?」

「こいつは……ウィンドカーテン!?」

「……耳が痛くなくなった?」



風属性の防護魔法を発動させ、風の膜がマオ達を取り囲んだ途端にガーゴイルの放つ鳴き声が小さくなった。どうやら風の膜で超音波を防いだらしく、一方でバルルは両耳を抑えた状態でガーゴイルに向かう。



「ちっ、何時聞いてもこの鳴き声は慣れないね……おらよっ!!」

「アガァッ!?」



至近距離から鳴き声を聞いているにも関わらずにバルルは眉を少ししかめる程度で動きを止めず、足元の土を蹴り上げてガーゴイルの顔面に飛ばす。大口を開いている状態で土が入り込んだせいでガーゴイルは咳き込む。


鳴き声が中断した事でバルルは両耳から手を離すと、拳を振りかざす。この時に彼女は力を込めるように腕の血管が浮き上がり、目を見開いて渾身の一撃を叩き込む。



「爆拳!!」

「グギャアッ!?」



バルルが全力でガーゴイルの顔面に拳を叩き付けた瞬間、彼女の肘の部分から強烈な爆炎が発生して拳が加速する。ガーゴイルは避ける暇もなく顔面に強烈な衝撃を受け、本物の石像よりも頑丈なはずの顔面に亀裂が走る。



「おらぁあああっ!!」

「アアアアッ!?」



顔面を殴り飛ばされたガーゴイルは吹き飛び、地面に転がり込む。その光景を見たマオ達は驚きを隠せず、ガーゴイルの硬さを嫌という程知っている一番衝撃を受けた。



(す、凄い!!僕の氷刃でも殆ど傷つかなかったのに……)



ガーゴイルとの戦闘ではマオが通じた魔法は最大加速させた「氷弾」と「氷柱弾」のみであり、鋼鉄さえも切り裂く威力を誇る氷刃を当てても掠り傷程度しか与えられなかった。しかし、バルルは殴り飛ばしただけでガーゴイルの顔面に罅割れが入った。


彼女の扱う爆拳という魔拳は何度か見た事があるが、この爆拳は相手に攻撃した際に至近距離から爆炎を放つ技だとマオは思っていた。しかし、今回の彼女は見た事もない武器を両腕に装備しており、肘の部分から爆炎を発生させて攻撃を加速させていた。



「おらおらおらっ!!」

「ガハァッ!?グエッ!?ギャウッ!?」



拳がめり込む度にガーゴイルは悲鳴を上げ、肉体に罅割れが広がっていく。これ以上に攻撃を受けるのは危険だと判断したのか、ガーゴイルは背中の翼を広げてバルルに襲い掛かる。



「シャアアッ!!」

「危ない!?師匠、そいつの……」

「おっと」



ガーゴイルの翼に気をつけるようにマオが注意しようとしたが、その前にバルルは跳躍してガーゴイルの放った翼を回避した。ガーゴイルの翼は空を飛ぶための物ではなく、攻撃用である事はバルルも承知済みだった。



「あんたらの相手は若い頃から何度もやってきたからね。当然、弱点も知り尽くしているさ!!」

「グエッ!?」



避けた際にバルルはガーゴイルの胸元に蹴りを叩き込み、先の戦闘でガーゴイルの肉体は罅割れていた。そのために普通の打撃でも罅割れが広がって損傷を与える事ができる。


胸元の部分を攻撃されたガーゴイルは慌てて距離を取り、翼を折り曲げて自分の身を守る。それを見たバルルは両腕を重ね合わせると、開手した状態で繰り出す。



「爆破!!」

「ギャアアアアッ!?」

「うわっ!?」

「相変わらず荒々しい戦い方ね……」



両手を開いた状態でバルルはガーゴイルに腕を伸ばすと、両手から爆炎が発生してガーゴイルを吹き飛ばす。爆発を受けたガーゴイルは後ろに押し込まれて倒れそうになり、この際に折り曲げて胸元を隠していた翼が元に戻る。



「これで終わりだよ!!」

「グギャッ……!?」



耐性を崩したガーゴイルにバルルは踏み込むと、彼女は止めの一撃を繰り出すために拳を全力で振りかざす。それを見たガーゴイルは咄嗟に両腕を交差して胸元を守ろうとしたが、それよりも早くにバルルは拳を突き出す。



「爆拳!!」

「ギャアアアアッ!?」



彼女の拳がガーゴイルの胸元を打ち砕き、校庭にガーゴイルの悲鳴が響き渡る。胸元に打撃が撃ち込まれた瞬間にガーゴイルの肉体全体に亀裂が走り、その場で粉々に砕け散った――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る