第219話 王
「まあいい、今日は気分が良いからこれくらいにしておいてやる。じゃあな、
「……失礼します」
ラギリは立ち去ると兵士達も後に続き、この時にリオンは彼等の表情が冴えない事に気付いた。どうやらラギリは兵士達を無理やり従わせているらしく、大方良からぬ事をさせようとしているのだろう。
兵士達に同情しながらもリオンはジイを連れて玉座の間へと向かう。しかし、玉座の間に辿り着くと騎士達が立ちふさがった。
「リオン王子、ようやくご到着ですか」
「ようやくだと?どういう意味だ?僕は陛下に呼ばれて……」
「陛下はご立腹です。御多忙の中、リオン王子に会う時間を割いたというのに遅刻された事に大変怒っております」
「ち、遅刻だと!?待て、それは理由が……」
「何であろうと国王様は貴方にお会いするつもりはありません。どうかお引き取りを……」
玉座の間に立つ騎士達の言葉にジイは困惑するが、リオンは先ほど遭遇したラギリを思い出す。どうやらラギリが絡んできたのはリオンが国王と会わせないようにするためであり、まんまと嵌まってしまった。
「父上は時間に厳しい御方だ。ジイ、ここは退くぞ」
「し、しかし!!」
「お引き取り下さい。これ以上に文句を告げるようならば陛下にお伝えします」
「……分かった」
抗議しようとするジイをリオンは抑えると、彼は立ち去ろうとした。しかし、去り際に騎士達に報告を行う。
「父上に伝言を頼む。兄上の意思はしかと受け継いだとな」
「……?」
「ちゃんと伝えておけ」
「はっ……分かりました」
リオンの言葉に騎士達は疑問を抱くが、伝言を残すとリオンはその場を立ち去った。ジイは彼の後に続いてどうしてラギリの事を報告しないのかを問い質す。
「リオン様!!どうしてラギリ王子の事を陛下にお伝えしないのですか!?」
「伝える必要はない。陛下は確かに時間に厳しい方だが、だからと言って久しぶりに帰ってきた息子を追い払う程の薄情者ではない」
「えっ!?それならばどうして……」
「あの騎士達は兄上の配下だ。どうやら俺が城を離れている間にも着々と勢力を増やしていたようだな」
「まさか!?ではあの者達は虚言を……!?」
「いいや、そもそも父上からの呼び出しが嘘だったのだろう。父上は今は玉座の間にはいない、いるとしたら……あそこだな」
部屋へ戻らずにリオンは城内の庭園に赴くと、そこには騎士達が並んでいた。リオンが現れると騎士達は驚いた表情を浮かべ、彼等を通り過ぎてリオンは庭園へと足を踏み込む。
「リオン王子!?いつお戻りに?」
「先ほど帰って来たばかりだ。ちゃんと連絡は送っていたはずだが、届いていないのか?」
「そ、そうでしたか……陛下、リオン王子がお戻りになられました」
「おお、リオンか……よくぞ戻ってきたぞ」
「へ、陛下!?」
庭園に並んでいた騎士の言葉にジイは驚き、一方でリオンは予想が当たって笑みを浮かべる。リオンはラギリが偽の呼び出しと玉座の間に入らせないようにしたのは自分と国王を会わせないためだと気付いていたが、もしも本当に玉座の間に国王が居たのならばそんな大それたことはできない。
仮に玉座の間にリオンが辿り着いた時、無理やりにでも彼が玉座の間に入り込めば国王にラギリの隠蔽工作が露見する。しかし、最初から玉座の間に国王がいないのであれば咎められる事はない。むしろ勝手に玉座の間に入り込んだリオンを罰せる口実ができる。玉座の間に入る事が許されるのは国王が許可を出した者だけで有り、いくら王子と言えども勝手な侵入は許される事ではない。
リオンは玉座の間に父親がいない事を察すると、玉座の間以外に彼がよく足を踏み入れる場所へ訪れた。その場所こそが庭園であり、この場所はリオンの亡くなった母親もよく足を運んでいた。母親の話によればこの庭園は国王とよく二人で過ごしていたらしく、国王とリオンの母親の思い出の場所ともいえる。
「おお、そこにいるのはリオンか……久しぶりじゃな」
「父上、只今戻りました」
騎士達が左右に分かれると庭園の奥から老齢の男性が現れ、リオンを目にすると彼は嬉しそうに歩み寄る。彼こそがリオンの父親であり、この国の王である「アルバス」だった。
アルバスは数か月ぶりの息子との再会を喜び、同時に彼は急に戻ってきたリオンに疑問を抱く。これまでリオンは魔法学園で勉学に励んでいるという報告を受けていたが、どうして急に戻ってきたのかと不思議に思う。
「リオン、お主は今は魔法学園で勉学に励んでいると聞いていたが、どうして連絡も無しに急に戻ってきた」
「父上、事前に連絡は伝えていたはずですがどうやら何者かに父上の元に連絡が届かないように邪魔をされていたようです」
「……ラギリか」
リオンの言葉にアルバスは頭を抑え、彼はもう一人の息子であるラギリがリオンと自分の関係を悪化させようとしている事は気付いていた。
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