第119話 マオとバルトの対立
「このっ……離せ!!」
「うおっ!?このガキ……調子に乗りやがって!!」
自分の腕を振り払ったマオに対してバルトは怒りを抱き、彼が杖を持っているのを見てバルトも杖を取り出す。お互いに杖を構え合う形となり、それを見たミイナも魔法腕輪を取り出す。
(この人、いったい何なんだ!?)
いきなり自分の胸倉を掴み、更にはミイナを突き飛ばしたバルトに対してマオは怒りを抱く。その一方でバルトの方はマオが胸に付けている「月の徽章」を見て悔しそうな表情を浮かべ、自分が身に着けている「星の徽章」を見て歯を食いしばる。
魔法学園では高い評価を残した生徒には星の徽章が与えられ、この徽章は学年の進級に関わる重要な代物である。生徒は年内に自分の学年と同じ数の星の徽章を得る事ができなければ昇給できず、徽章を獲得できなかった生徒は進級する事もできない(但し、一年生の場合のみ進級の試験を受けられる)。
既にバルトは上の学年に進級するために必要な星の徽章を取り揃えており、まだ次の学年に昇給するまで10か月ほどの猶予があるにも関わらずに彼は星の徽章を3つも揃えていた。だが、彼にとっては星の徽章よりも価値のある月の徽章を身に着けたマオに嫉妬心を抱く。
「お前の噂は耳にしているぞ……一年生の癖に二人目の月の徽章の持ち主だってな!!」
「え、二人目……?」
「惚けやがって!!」
自分の他に一年生の中にもう一人の月の徽章の持ち主がいると初めて知ったマオは驚いたが、興奮した様子のバルトは自分が取り付けている星の徽章を掴み取り、床に叩き付けた。
「こんなもん、いるかよ!!」
「な、何をしてるんですか!?」
「うるせえっ!!こんな物をいくら集めても意味ねえんだよ!!俺が欲しいのは……!!」
バルトは星の徽章を捨てるとマオが身に着けている月の徽章を睨みつけ、その様子を察したマオは彼が求めているのは星の徽章などではなく、自分の持つ月の徽章である事を察する。
月の徽章は学園長が認めた生徒にしか授けられず、この月の徽章を持つ生徒は星の徽章がなくとも進級が許可される。それどころか他の生徒が禁止されている教室や訓練場の立ち入りなども許可され、現在マオとミイナが使用している空き教室もマオが月の徽章の生徒という事で特別に使用が許可されているに等しい。
自分の実力に絶対の自信を持つバルトは自分こそが月の徽章を持つに相応しい生徒だと常日頃から思っていた。それにも関わらずに彼は自分よりも年下でしかも一年生のマオが月の徽章を持っている事に激しく嫉妬し、彼は杖を構えるとマオに宣言した。
「決闘だ!!俺はお前に決闘を申し込む!!」
「えっ!?」
「決闘……!?」
唐突なバルトの宣言にマオは驚きを隠せず、話を聞いていたミイナも驚いた表情を浮かべる。一方で興奮が収まらぬバルトはマオに杖を突きつけ、自分の決闘を受けるかどうかを問い質す。
「どうした!!お前が本当に月の徽章を与えられる程の魔術師なら一般生徒の俺なんかよりも優れているという事だろう!?そんな俺と決闘するのが怖いのか!?」
「お、落ち着いて下さい!!急に決闘だなんて……」
「うるせえ!!ガキだろうと容赦はしねえぞ!!」
マオの返事を待たずにバルトは杖を上空に掲げると、その構えを見たマオは信じられない表情を浮かべる。バルトが使おうとしている魔法は中級魔法の「スライサー」と呼ばれる魔法で間違いなく、風属性の魔力を渦巻状に構成して相手に放つ攻撃魔法で間違いなかった。
バルトが使用する「スライサー」はマオの「
「や、止めて!!」
「うおおおっ!!」
「待って!!」
暴走したバルトを止めるためにマオとミイナがそれぞれ動こうとした瞬間、屋上の扉が開け開かれて何者かが飛び出す。その人物はバルトの背後に迫ると、彼の腕を掴んで強制的に魔法の発動を中止させた。
「いい加減にしなさい、バルト!!」
「ぐあっ!?」
「えっ!?」
「……誰?」
バルトを後ろから抑えつけたのは彼の同級生である「リンダ」であり、マオを魔法学園に招いた女子生徒だった。彼女は怒った様子でバルトの腕を掴んで後ろから抑えつけ、無理やりに彼から杖を奪い取る。
リンダに取り押さえられたバルトは床に押し付けられ、彼は悔し気な表情を浮かべるがリンダの方が力が上なのか抵抗できずに抑えつけられる。その様子を見てマオとミイナは安堵するが、そんな二人にもリンダは鋭い目つきを向けた。
「貴方達も杖と腕輪を外しなさい!!」
「は、はい!!」
「にゃうっ……」
彼女の言葉に慌ててマオとミイナは杖と腕輪をしまうと、それを確認したリンダはバルトを手放す。バルトは急に現れたリンダに対して不機嫌そうな表情を浮かべるが、彼の杖はリンダに取り上げられて抵抗はできない。
※1話分余ってたので投稿しました。
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