第43話 魔光
「魔力、操作……」
「あんたがマカセの授業で見せた下級呪文は見事だったよ。だけどね、杖先に魔光が灯るようじゃまだまだだね」
「魔光?」
バルルの言葉にマオは自分が下級魔法を扱う際、杖の先端が青色の光を灯すを思い出す。バルルによると魔光が出るようでは完璧に魔力操作の技術を身に着けた事にはならないらしい。
「魔光は魔法に変換できなかった魔力の事さ。分かりやすく言えばあんたが
「そ、そうだったんですか?」
「一流の魔術師なら魔光なんて一切出さずに魔法を作り出せる。よく見てな、あたしの魔法を」
マオの前でバルルは小杖を取り出すと、彼女は意識を集中させるように目を閉じる。そして次に目を開くと彼女は呪文を唱えた。
「ファイア!!」
「うわっ!?」
小杖から炎の塊が出現すると、教室中に伝わる程の熱気を放つ。昨日にマオが見た同学園の生徒の中には彼女と同じ魔法を使った生徒もいたが、バルルの作り出した炎は子供達の比ではない程の大きさと熱を誇る。
前にもマオはバルルが魔法を発動させたのを見た事あるが、以前の時はマオと同じように彼女の杖は光り輝いていた。但し、マオの魔光は青色に光るが、バルルの魔光は赤色に光っていた。二人の色が違うのは得意とする属性が「氷」と「火」の違いのせいである。
「どうだい?あたしの魔法?」
「す、凄いです!!でも、前の時はもっと小さかったのに……」
「あの時はあたしも久しぶりに杖で魔法を使ったから気が抜けててね。だけど、あの時に使った魔法と今のあたしが使っている魔法は同じ物だよ」
「えっ!?でも、前の時と全然違うじゃないですか!!」
マオの記憶では前に魔法を見せて貰った時はバルルの作り出した炎は今現在の作り出した炎の半分にも満たない。しかし、バルルによれば前の時も今も同じ魔法を使っているらしく、どうして前回と今回では魔法の効果に大きな差があるのかを説明した。
「前の時はあたしの杖から魔光が出ていただろう?だからあの時の魔法は未完成だったんだよ」
「未完成……」
「ほら、あんたも魔法を使ってみな。今日はずっとこいつで練習をしてたんだろう?」
「え、でも……」
「いいからやってみな」
バルルの言葉にマオは戸惑いながらも小杖を構え、先ほどの薬のお陰で魔力は十分に回復していた。そして彼は緊張した様子で小杖を構えると、いつも通りに魔法を発動させようとした。
「アイス……わっ!?」
「へえっ、もう成果が出ているじゃないかい」
いつもならば魔法を唱えた時に杖の先端が青く光り輝き、氷の欠片が生み出されるはずだった。しかし、今回はいつもよりも一回りほど大きい氷の欠片が出現した。
マオは杖先に出現した氷の塊を見て驚き、今までは数センチほどの大きさの氷の欠片しか生み出せなかった。しかし、今日一日の訓練を通してマオの「魔力操作」の技術が磨かれたのか、杖先には10センチを超える氷の塊を作り出す事に成功する。
「ど、どうして?いつも通りに魔法を発動させただけなのに……」
「今日の訓練であんたは吸魔石から魔力を吸い取られないように頑張っていたんだろう?それはつまり、吸い込まれる自分の魔力を留めようとした……つまりは自分の魔力を操作して抵抗したという事さ」
約半日もマオは吸魔石を利用した訓練を続けた結果、彼は自分の魔力を操作する感覚を掴みかけ、その成果が魔法の効果に繋がっていた。昨日までのマオは魔法を発動する時は無駄に魔力を消耗していたが、今日の訓練で魔力の消費量が改善されてしかも前よりも大きな氷を作り出す事に成功した。
但し、完全に魔光を発さずに魔法を発動できるようになったわけではなく、杖の先端からは僅かに光が放たれていた。それを見たバルルは腕を組み、マオがまだ「魔力操作」の技術を身に着けたわけではない事を告げる。
「まだ杖が光っているようだと駄目だね。明日からも吸魔石を使った訓練を続けな、慣れていけば魔光を生み出させるはずだよ」
「は、はい!!分かりました!!」
「おっ、急に元気が出てきたね。そうだ、その吸魔石はあんたに貸してやるよ。暇がある時はそれで練習しておきな。但し、あんまり練習しすぎてまたぶっ倒れないように気を付けな」
「え、いいんですか?」
バルルは机の上の吸魔石を指差し、マオに持って帰って学生寮でも練習するように促す。この吸魔石は恐らくは学校の備品と思われるが勝手に持ち歩いていいのかと思いながらも、魔法の練習が何時でもできるならばとマオは有難く借りる事にした。
吸魔石は直に触れなければ魔力は吸収される事はなく、布で包んでおけば持ち運びもできる。今日の授業はこれまでにしてバルルはマオを学生寮に帰らせようとした。
「今日はここまでだね。といっても明日からも吸魔石の訓練を一人で続けるんだよ。あたしはもう一人の奴を探しに行くからしばらくは来れないからね」
「えっ!?明日も?それに探しに行くって……」
マオは明日からも一人で訓練を続ける事を伝えられて戸惑い、しかもバルルはマオと共に授業を受けるはずの生徒をまだ見つけていない事が発覚する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます