ep9 森の妖精主エルフォレス
寝台の上、静かに眠る森の妖精主エルフォレス。
乱れているようで整った鮮やかな新緑の長髪。
決して触れることを許さない透き通ってしまいそうな白い肌。
慈しみに満ちた口元と長いまつ毛。
無数の天使の羽根で形作られたような白色のドレスの如き衣を纏った躰。
コーロはそのあまりに神秘的で美しい姿に目を奪われた。
「こ、これが、本物の妖精...森の妖精主......」
レオルドはコーロ達の様子を見て一呼吸置くと、寝台に眠るエルフォレスを横に、語り始める。
「ここは魔物の森の最も奥深いところにある、妖精主の神殿だ。普通の人間や魔物じゃあ辿り着けねえ場所だ。
さっき通ったゲートは選ばれた者しか通さねえからな。それはこのエルフォレスの魔力によるものだ。
だが、エルフォレスが息絶えたなら、それも無くなる。つまり、害意を持った者の侵入も可能になる。
いいか?そこにヘンドリクスの討伐軍と勇者様が来てみろ。この森も、神殿も、戦場になるだろう。
さっき魔物どもがウヨウヨいただろ?今アイツらは森の結界内に避難してるんだ。
普段は結界の外でも静かに暮らしてたんだけどな。だが今はいつ攻められるかわからねえ。
それに、アイツらも気が立っている。森に迷い込んだ人間を襲いかねねえからな。
そうなれば、その瞬間から戦争が始まっちまう。それで今は、森の奴ら全員ここに篭ってるって訳だ」
レオルドはここまで話すと、再びエルフォレスの方に目をやった。
コーロはただ黙って聞いていたが、ミッチーが口を開いた。
「それでレオルドさん、ダークウィザードに頼みとは、一体何なのですか?」
レオルドは、コーロ達の方に視線を戻し、答える。
「ああ、長くなっちまったが、ここからが本題だ。
兄ちゃんはダークウィザードなんだよな?その力でオレ達を助けてくれ!
勇者の強大な聖なる力に対抗できるのは、魔王かダークウィザードぐらいなもんだ!
このままじゃあ魔物の森はおしまいだ!」
話を理解しきれないコーロは、
「お、俺が...ですか!?」
ひどく困った様子で答えた。
「他に頼める奴もいねえ!もう時間もねえんだ!」
「あの、てゆーかその、俺......」
「頼む!」
興奮するレオルド。
狼狽するコーロ。
すると、静かなはずの寝台から、突然諭すような優しい声が発せられる。
「レオルド。お客様が困っておりますよ?」
「え?」
「え?」
「エルフォレス......!?」
寝台の上、静かに眠っていたはずのエルフォレスが、その美しい上半身を起こし、瞑っていた両の目を開いた。
「どうも。珍しいお客様方。わたくしが森の妖精主エルフォレスです」
「...エルフォレス!?大丈夫なのか!?」
「あら、レオルド。そんなにわたくしを心配していたのかしら?」
「死にかけてたんじゃないのか!?」
「ログインしていただけです」
一同は叫ぶ。
「どこに???」
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