第24話 リハビリの辛さって
これ、どーなってんねん?何で?あ、これ、アレやろ。手術で障害負うとか医療事故とか、そーゆうあかんヤツやない?
ネイティヴには鼻で嗤われる大阪弁で考えてしまう。関西弁も本当は色々だ。大阪に神戸に京都。それぞれ全て少しずつ違うし、大阪の中でもキタとミナミで違う。もっと狭く大阪市内でも年齢によって、また区によって微妙なイントネーションや語句やTPOで使い分けがある、らしい。が、大阪ネイティヴでないへっぽこにはそんな微妙な違いが分かる筈もない。でも下手な大阪弁を使うと
「それ、違う」
と突っ込まれるのだ。息子に。
東京生まれ育ちの癖に、小1から大阪だからってすっかり大阪人になりきってしまいおって(怒)面倒だっつーの。
でも普段から聞いてるとやっぱり方言は移る。それに、息子のママ友とかと話す時には相手に合わせながら語尾だけ大阪風にするくせがつく。へっぽこは静岡生まれの静岡育ち。でもその後、茨城に住んだり東京に住んだり。ダンさんは埼玉、お義母さんは京都弁風。それらが混じり合って、すっかりどこの土地の者だかわからないモノが出来上がった。
それはともかく、
これは何とかせにゃアカン。訴えるべきか?どーすべ。
でも頭が働かない。あれ?私ってこんなにバカだったっけ。いや、おっちょこちょいではあったけど、ここまで頭の回転悪かったか?
あ、これも手術のせいか!
いやいや、それは生まれつきやし(一人ボケツッコミ)
頭の回転については、真実は未だ分かりません。誰しも自分の外に原因を求めようとするものだし認めたくないのだ。馬鹿だとは。動かないとは。哀しくも自分だけは違うと思ってしまう。
で、始まるリハビリ。まだ頭には包帯を巻いたまま。
「先ずは、このタオルを畳んで下さい」
そう言って、フェイスタオルを渡される。
——はい?タオルを畳めって?
幼稚園児のお手伝いコーナーかい?
で、よくよく見ると、その小部屋はおままごと部屋だった。白いテーブルに椅子。洗濯物をかけられる屋内用ポールにハンガーが並んでかけられてて、縁側のような長椅子に掃除機の先の方だけが置いてある。奥には和室があり、座布団が重ねてあるようだ。
ここは、病院に入院してる子どもたちが遊ぶ場所なのかと思った。
しかし、何であたしがタオルを?
「さ、へのさん。タオルを綺麗に畳んでください」
作業衣を着た女性に促されて、しかたなく、ハイハイとタオルを畳む。いつもやってるように半分に折って、もう一つ半分に折って。
「はい。出来ました」
そう言いつつ、
一体何させんねん?
そんな顔で女性を見たら、
「次は両手を使って丁寧に揃えてください」
そう言われた。
見れば、へっぽこが畳んだタオルは右手だけでパタパタンと畳んでいたので、確かに雑で端が揃ってなかった。
仕方なくタオルを取り直して左手を添えて畳み始める。が。
——ん?なんか曲がるぞ。揃わない。
いやいや、嘘でしょ?これ、3歳児だって出来るよ?何で出来なくなってんの?
「では、次はボタンの掛け外しです。そこの上着を羽織って、ボタンをかけて下さい」
はいぃ?
「普通に出来ますけど?ホラ」
ひとりでできるもんだっけ。あのコーナーみたいだ。
スッスッスッとやってみせるが、また怒られた。
「へのさーん、右手だけじゃなくて、左手も使ってくださいね」
その口調は丁寧ではあるけど、扱いは幼稚園で園児に言い聞かせるような、老人ホームでおばあちゃんに向かって嗜めるようなそんな響きを持っていた(ようにへっぽこには感じられた)
ムカーッ。
「べ、別に右だけだって、出来ればいいじゃないですか!」
みっともなくも逆ギレする。大人が大人に対して(^_^;)
でも相手の女性は落ち着いたまま。そういう反応に慣れてるんだろう。でもこっちは初めてだし、普通に出来てたことが出来なくなってるショックがとても受け入れられない。
リハビリが辛いと感じるのは、身体ではなく心なのかも。
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