第9話 密着カラオケの罠、そしてお節介を焼く
転校から数日が過ぎて気づけば中間試験となり、気の抜けない日々が過ぎてゆく。
最後の試験が終わり、やっと解放された生徒達は遊びたい気持ちが爆発する寸前だった。
それは
「ねーねー、試験終わった事だし、打ち上げ行こう!打ち上げ!」
「そうそう、カラオケでパーティしようよ!」
そこに男子が乗らない訳がない、次々と参加者が増える中、
***
カラオケルームに入り、ドリンクをオーダーして落ち着いた所で
「ねね、
「みんな好きだよ?」
「そういうんじゃなくて、恋愛的によ。もちろん男の子で!今居るメンバーだってそこそこランク高いよ?」
「あはは、恋愛ってよくわからないかなー」
小学生の頃から知っている男達を好きになるなんて出来る訳がない。
そことなく穏便に話を逸らそうとするが、女子達は全く引かなかった。
さらには、よりによって親友だった
肩と肩が触れ合うどころか重なりあう程で、少しバランスを崩せば、
実際、場所移るべきかと考える程に
そんな状態で、女子の一人が耳打ちしてくる。
『彼は親友が死んだと聞いてショックを受けたの、それで幸福値が危険域で
そんな事を言われた
だが、性転換した事は
そんな状況下で
「俺、
周りの人達も
その場には、誰も歌っていない音楽だけが流れ、全員が固唾を飲んで黙り込んだ。
ここで断れば間違いなく
「じゃあ……、お試しで付き合ってみる?」
「まじで!?いいの?やったああああ!」
「四方君おめでとう!」
「やったな、四方!」
まさに勢いだけで咄嗟に告白に答えてしまった、
いいのか?これでよかったのか?他にいい方法が無かったのか!?
更にはクラスメイトの目的が薄っすら見えてしまった。
つまりは最初から仕組まれた事だと言う事に。
「あのさ、上の名前は思い出す人がいるから、下の名前で呼んでいいかな」
「うん……」
その気持ちが分かる
すると
複雑な心境の中、
「じゃあ、
「はい」
「
「はい」
「いや、俺の方も下の名前で呼んでよ、
「じゃあ、
「俺、もう死んでもいいかも」
結果は兎も角、これで幸福値が上がればいいかと思うしかない
のらりくらりとお試し期間を進展のないまま乗り越え、自然消滅すればベストだと考えた。
だが、周りは告白程度では収まらなかった。
「じゃあさ、付き合った記念に、キスしてみよっか」
「いいねそれ!」
「
「「「キースッ!キースッ!キースッ!キースッ!」」」
関係のない外野が勝手に盛り上がって変な事言い出した。
面白がって悪ふざけの域に入ってるとしか思えず、
「おい、
その時、変な
待ってくれ!人前でなければキスするという意味ではない、断じて違うからやめてください、お願いします!と、脳内で自分に言い訳と土下座をかまし、変な想像をしてしまった自分が恐ろしくなり、少し顔色が悪くなる。
この
「
黙って走る
「あの、
「俺んち、ここから近いからさ」
それなに、カラオケから徒歩5分もかからずに到着したのは独身向けワンルームマンション。
ここまでずっと手を繋いだままで、少し汗ばんだ手が
部屋に入ると、
「コーラしかないけどいいかな?」
「うん、ありがと」
「ちょっと洗い物させて」
「あ、後でやるからいいよ」
「気になるから今する。エプロン借りるよ」
「……」
この地域はごみの分別がある事を知っていた
実のところ
「食材全くないね、買って来る」
「あ、俺も行くよ」
スーパーに入ると
問答無用に次々と入れるから、
あっという間にレジの列に並ぶ。待ち時間に『荷物は俺が持つよ』とカゴを受け取る
代金を払う場面では、
出し遅れた感の
そして『後で払うから』といって、袋詰めを受け持った。
「あらぁ、彼氏やさしいわねぇ~」
「え、あ、あう……」
レジのおばさんがほっこりした感じに余計な事を言う。
それからマンションに戻り、
お米はあったのでご飯を炊き始め、おかずは2皿に分けて冷めるまで置いて冷めたらラップをかけるつもりだった。
そうすると、
その
「これ、
暫くして
(半年くらい会ってないけど元気かなぁ?)
そうこうしている間に、
すると
「うわあああああ、
胸元に顔を埋めると言っても、エプロンがあるから大したサービスになっていないだろうけど、そこは我慢してもらう事にした。
そうして、余計な事を言ってしまう。
「思い出すのが辛くないなら、また作ってあげる。野菜はちゃんと摂るんだよ?」
「うん、サンキューな、嬉しいよ」
「じゃあ、今日は帰るね、バイバイ」
「あ、途中まで送るよ」
夕日が
見送りの最中、
そのせいで罪悪感がずしりと音を立てて
その事を察した
自然消滅ではなく、幸福値が戻り再び家族と暮らし始めるまでは続けようと。
そして、全ては罪悪感から来る感情なのだと自分に言い訳をした。
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