第26話 ゴーレムで金策!
ルーテ達は町外れにある坑道跡の入口まで来ていた。
「着きました!」
「ねえルーテ……ここって本当に入っていい場所なの……?」
恐る恐る中を覗き込みながら問いかけるイリア。
「はい! ダンジョンなので自由に探索可能です! 早速入りましょう!」
ルーテはそう答え、入口に設置された木の柵を乗り越えようとする。
「面白そうなのです! ミネルヴァも行くです!」
「――ま、待って二人とも。どう見ても入ってはいけないと思うわ……!」
一人だけ取り残されそうになったイリアは、慌てて二人の進行を止めた。
「……何を言っているんですかイリア。入ってはいけないダンジョンなんて存在するはずがないでしょう?」
「ときどきあなたの言うことが分からなくなるわ……」
だが、ダンジョンを目の前にしたルーテに諦めさせることなど不可能である。
「不安ならやはりここで待っていますか?」
「うぅ……そ、それは……」
「ダンジョン探索は楽しんでするものです。無理をして僕に付いてくる必要はありません。――ああ……待っていてください経験値の皆さん!」
興奮した様子で話すルーテ。完全に自分の世界へ入り込んでしまっていた。
「…………おっといけない。今日の目的はお金稼ぎでしたね」
「いっぱいお金を稼ぐです! 世の中は金なのです!」
「ミネルヴァ……あなた、どこでそんな言葉を覚えてきたの……? はしたないからやめなさい」
イリアは呆れた様子でミネルヴァのことを諫める。
「自信を持ってください。今のイリアはイリアが考えている以上に強くなっていますよ!」
「そういうことを言っているわけじゃないのだけれど……」
「それに、いざという時は僕が守りますしね」
「るーちゃん…………!」
結局イリアはあっさりと陥落し、三人でダンジョンへ挑むことになるのだった。
ちなみに、『メラス地下坑道跡』は現在立ち入り禁止である。
*
――それから少しして。
「ふんふふんふふーん」
「声を出すとモンスターに気付かれて襲われますよ?」
「………………………………」
鼻歌交じりに先頭を歩いていたミネルヴァは、慌てて口を塞いでルーテの後ろに隠れる。
「近くに魔物がいるの……?」
緊張した面持ちで問いかけるイリア。
「はい。…………見てください。あそこに『ジュエルゴーレム』達が居ます」
ルーテは通路の先にある広間を指さして説明する。
そこは薄暗い坑道の中であるというのにも関わらず、鮮やかに光り輝いていた。
「キラキラしていて綺麗ね…………」
「あの光は全てジュエルゴーレムの身体から発せられているものなんです」
「え……? あれが……全部……?」
「はい。ジュエルゴーレムは、身体を構成する宝石によって色が変わるんです。――分類上は全て同じモンスターとして扱われますが、ドロップアイテムがそれぞれ違います」
「……なるほど。色々いるってことは分かったわ」
「ちなみにここから確認できるのは…………ダイヤモンド、ルビー、トパーズ、サファイア、アメジスト、エメラルドの六種類ですね。――ドロップアイテムの値打ちが一番高いのはあそこに居るダイヤモンドの個体ですが、偶に出現する『シルバーゴーレム』と『ゴールドゴーレム』の二種はそれを更に上回ります。――見つけ次第、優先的に狩ってください」
「……分かった、頑張るわ」
「お金の匂いがしてきましたね……! ふふふふ……!」
「お、落ち着いてルーテ」
説明しているうちに気持ちが高ぶり、目を光らせながらモンスター達の前へ飛び出そうとしたルーテだったが、イリアに服の袖を掴まれる。
「あなた、そんなにお金好きだったかしら……?」
「いえ……僕が好きなのは稼ぐことです! お金に関しては、必要な分以外イリアにあげても問題ありませんよ!」
「それはそれで危ういわね……」
ルーテは、ゲームでお金や経験値を稼いでいる時に至上の喜びを感じることができるのだ。
「ごーれむ……なんかピカピカしてて美味しそうなのです!」
「…………止まりなさい。あれは宝石だから絶対に食べちゃだめよミネルヴァ」
待ちきれなくなったミネルヴァは、よだれを垂らしながらゴーレム達に向かって行こうとするが、イリアは彼女の子とも首根っこを掴んで引き止める。
「えー? キラキラのお菓子じゃないですか……?」
「まったく……あなたは一体何を聞いていたの……? お願いだから二人とも冷静になってちょうだい」
暴走する二人を相手にしていたイリアは、戦闘前であるというのにも関わらずやや疲れ気味だ。
「相手は魔物なのよ? せめて役割分担とか、作戦くらいは決めて欲しいわ」
「――ごめんなさい。そういえば伝え忘れていましたね。……とりあえずミネルヴァの実力を見たいので、イリアと僕はサポートに徹しましょう!」
「あの……そもそもミネルヴァって戦えるのかしら……?」
「もちろんです! ラスボスですからね!」
「らすぼす……?」
「はい! 最強であると言っても過言ではありません!」
「………………?」
いまいち腑に落ちない様子のイリア。
「さいきょーのミネルヴァに任せるです!」
「あ! 待ちなさいっ!」
ミネルヴァはその手からすり抜け、嬉々としてモンスター達の方へ走っていくのだった。
「お金! 経験値! お金! 経験値! お金! 経験値!」
「る、るーちゃんも待ってっ!」
――かくして、ゴーレム狩りが幕を開ける。
*
「……あん? なんか騒がしくねェか?」
「気のせいだろ。ここに人なんか来やしねえさ」
「――やっぱり、僕が見回りしてこようか?」
「ひっぐ……ぐす……うぇぇぇん……」
そんなルーテ達のすぐ近くに、とある怪しげな集団が潜んでいた。
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