意外な方角
リーザが目の前で連れ去られた事をエイムとルルーに伝えたギン達の前に、ミックサック団の団長が現れ狼狽する姿を見せていた。
「リ、リーザが魔族に連れ去られたっていうのか。な、何故なんだ⁉」
「多分魔族にとってリーザさんに何かしらの利用価値があるものと思われます」
「頼む!何とかしてすぐに助け出してくれ!」
ルルーにリーザの救出を懇願するよう促し、その状況を見たギンがエイムにアルドからむしり取った毛を渡す。
「エイム、この毛は魔族のアルドからむしり取ったやつだ、これで奴の魔力は追えないか?」
「追えますが、私の意識が飛んでしまえばその瞬間魔法の効果は切れてしまいますよ」
「それでもおおよその距離、そして方向が分かれば大分違うはずだ」
ギンの発言を聞いてエイムはウィルに尋ねる。
「ウィルさん、この毛を置ける台のような物をお借りできますか?」
「ああ、それなら……」
ウィルが説明しようとすると、どこからか声が聞こえる。
「それならこっちの台を使えばいいぜ、お嬢ちゃん」
「え?は、はい」
「親父、何でここにいるんだよ?」
声の主の正体はウィルとミニルの父親であるボガードであり、ウィルの問いに答える。
「ここは俺が運営しているドックだぞ、俺がいるのは当たり前だろ」
「もうとっくに今日の作業は終わっているはずだろ」
「騒がしかったから、念の為にここを開放していたら案の定、人が流れてきたんだ。もっとも魔族の野郎どもは目的は達成したらしいがな」
ウィルとボガードがやり取りをしている中、エイムは毛をボガードが勧めてくれた台の上に置き、呪文の詠唱を始める。
「古より天と地を司りし者の眷属よ、我が力を糧に我の望みに応えよ。かの物体に宿りし力の根源が在りし地を我に示し給へ」
呪文の詠唱を終えるとエイムの周りが眩く光り、周囲の人間は目を覆う。やがて光が消えるとエイムはギン達にアルドのいる方角と距離から予測できる位置を話す。
「このニリから南東の方角、そして距離からするとアルドはピトリまで移動しています」
「どういう事だ⁉まさか魔族の根城はピトリにあるというのか?」
ギンの疑問に対しルルーが答える。
「多分それはないわ、あの時もピトリの女王陛下は魔族が突如ピトリ内に出現した事で帝国に協力を要請していたっておっしゃっていたから」
「そうすると奴らの狙いはブリックが言ってた
「もしそうだとすると急いでピトリに向かわないと、リーザさんの救出もそうだし、きっとピトリだけでは魔族に対抗できないし、帝国もすぐには動けないはず」
ピトリに魔族がいる理由は不明だが、手がかりがピトリにしかない以上ギン達はピトリに向かう事とした。
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