闇夜のコウモリ

 ニリの街でいよいよ、ミックサック団の公演が始まろうとしていた。ギン達は未だ途中で別れたブライアン達と合流できないではいたが、とりあえず今いる者達だけで観劇をする事とした。


 そして進行役らしき女性が姿を現すが、その女性にウィルが反応を示す。


「あれはミニルじゃねえか⁉」

「へー、ミニルが進行役をするんだね、中々の大役だよ」


 ウィルとミニルがやり取りをしている中、ミニルが進行役として声を発する。


「皆さま、本日は港町ニリの広場にお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまよりミックサック団による舞台、『私にとって今は』を開演いたしますのでご観覧お願いします」


 そう呼びかけ終えてミニルが姿を消すと、ギン達にとって見覚えのある人物が舞台上に姿を現す。


「ギンさん、あれってリーザさんですね?前と雰囲気が違うような気がするんですが」

「以前の役どころは魔術師だったが、今回はさっき貼ってあった貼り紙を読んだ感じ、貴族の娘という役どころのようだな」

「そうなんですね、楽しみです」


 ギンとエイムがやり取りをしている中、ギンの言うように貴族の娘を演じているリーザが突然1人の場面だが声を発する。


「ああ、どうしてなの。私やお父様達が一体何をしたというの」


 リーザの1人語りに違和感を覚えたヨナが思わず疑問を口にする。


「ねえ、何で1人なのに、セリフをしゃべっているの?あれじゃあ単なるでっかい独り言にしか聞こえないよ」

「ヨナ殿、この手の芝居の表現の1つで、あえて主人公に説明させるという手法が存在するのです」


 ジエイがヨナにリーザの演技の手法を説明しているとリーザは現在の自分が演じている主人公の心情を吐露する。


「お父様は、別の貴族に嫉妬され、あらぬ罪をなすりつけられ領地没収、屋敷も追放される事になり私達は辺境に追いやられてしまう。ああ、これから私達どうなるの?」


 リーザが演技を続けている中、突如舞台上にコウモリらしき生物が現れ、リーザに向かって行く。


「きゃああ」


 異変を察知したギンとジエイは舞台まで向かおうとするが、どこからか声が聞こえる。


「そうはいきません」


 魔法が観客席に放たれ、エイムが魔力障壁を張って魔法の放たれた範囲を守る事に成功するが既に舞台上のリーザはコウモリに抓まれていた。


 そして魔法が放たれたと思われる地点に魔物がおり、ギンはその魔物の名を呼ぶ。


「あれは、ブリック⁉」


 コウモリや魔法を駆使し、リーザを連れ去ろうとするブリック、その狙いとは?

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