命がけの説得

 遂にブロッス帝国の本城にある城門前までたどり着いたギン達であったが、城門前にはトーラスが魔導騎士団を、そしてエンビデスが魔導師団をそれぞれ従えていた。


 2人を目にしたギンは和平の話がしたいと懇願するがトーラスに一蹴される。更にエンビデスもギンを畳みかけるように言葉を放つ。


「ギンよ、ギガス陛下亡き帝国が一時分裂状態になったことはお前達も知っているはずだ」

「その分裂状態を解消する為にカイスを皇帝に祀り上げ、再度反帝国同盟を結んでいた国家に戦端を開いたのか⁉」

「そうだ、陛下の遺したこの帝国をなくすわけにはいかんのだ。だから多少未熟でも関係性が親族に近いカイスに皇帝になってもらう必要があった」

「だがギガスやお前が帝国を興したのは魔族に対抗する為だったはずだ、再度俺達と戦う事は目的から外れるはずだ!」


 ギンはエンビデスの言動に矛盾を感じ、それを言及するがエンビデスはその言葉を一蹴するように自らの考えを話す。


「全てを支配すればそれは可能だ、帝国に反抗する勢力を潰していけばな」

「ギガスの死から、それは間違いだった事にお前も気付いたはずだ!そんなお前が何故……」

「もはや我らの間に言葉は不要だ、陛下の遺した帝国を守る。それが今の私の使命だ」


 ギンの言葉を遮りエンビデスは自らの意志を貫く姿勢を見せ、臨戦態勢に入る。


「あいつら、何故……」

「ギン、やっぱり前に俺が言ったように帝国との戦いは避けられねえ、こいつらも口では理想が大事って言いながら、結局自国の利益しか考えちゃいねえ」

「ウィル、帝国内には確かに保身の為にカイスを皇帝に祀り上げた奴はいただろう、だが俺はこいつらまでそうだとは思えない」

「だが、どうするんだ?あいつら俺達の話に聞く耳を持っちゃくれねえぞ」


 ギンとウィルが互いの考えを話していると、プラナがギンに声をかける。


「兄さん、私にもトーラス殿と話をさせて」

「プラナ⁉」

「トーラス殿とは何年も共に魔導騎士団でカイス様をお支えしてきたわ、私がトーラス殿の本心を聞き出してみせるわ」

「プラナ、分かった。みんな俺とプラナがトーラスと話せるように援護してくれ」


 ギンの懇願を聞き、仲間達が反応する。


「ああ、任せてよ。でもエンビデスのほうはどうすんの?あいつだって妨害してくるよ」

「私に任せてください!」

「エイム、あんた?」

「私がエンビデスさんと話してみます、私に魔導書をくれたんです。本当は私達と同じ思いなら、私が話してみます」


 エイムもまた、エンビデスの説得に自ら志願する。ギン達にとって命がけの説得が始まろうとしている。

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