右の道

 ギン達が真ん中の道を進んでいる間の同時刻にルルー、ムルカ、ヨナ、傭兵達は右の道を進んでいた。


 ルルーが地図を持ち先導し、常に警戒しながら森の中を進んでおり、ヨナが声をかける。


「ルルー、大丈夫?今の所、襲撃はないけど、いきなり来たら大変だよ。あたしが前面に立とうか?」

「大丈夫よ、ヨナ。私にだって攻撃の魔法はあるんだし、それにこうやってずっと戦いに身を置くようになってから感覚も養われたから危険を察知したらすぐ知らせるわ」

「すごいねルルーは、もしかしてあたしより傭兵に向いてんじゃない」

「ふふふ、それはどうかしら」


 ヨナの言葉に笑顔で返答するルルーにムルカが声をかける。


「ふっ、それならばルルー、プレツに戻れば神官戦士団に入団してみるか?私が司祭様に推挙するぞ」

「もう、ムルカ様まで、ご冗談はよしてください。私には体術や剣術の心得はないのですから遠慮させていただきます」

「はっはっは、そうかそれは残念だな」

「ムルカ様、両親の勧めがあったとはいえ、私は苦しむ人々を救う為にミッツ教団に入信したのです」


 冗談交じりではあっただろうが、ムルカはルルーを神官戦士に推挙すると言ったが、ルルーはやんわりと断り、さらに自らがミッツ教団に入信した理由を話した。


「もちろん、神官戦士の役割も重要ですが、私は聖職者として治癒の魔法の素質を開花させてそれを活用していこうと思いました」

「そうだな多分平和になれば貴殿のような者の役割がより必要となるな」

「はい、その為にもこの和平は成功させましょう」


 ルルーとムルカのやり取りを聞いて、ヨナがルルーに声をかける。


「そうだね、治癒魔法の事もそうだけど、あんたみたいな奴がいれば戦争で傷ついた人達の救いになると思うよ」

「ヨナ……」

「あの時、あたし達が2度と過ちを犯さないような道を一緒に探そうと言ってくれた事や、あたしの為にペンダントをくれた事、あたし一生忘れないから、きっとそういう優しさがいろんな人に必要だよ」

「ヨナ、そうね、きっといろんな人の為に私が、私達ができる事はまだあるわ。だから生きて帰りましょう」


 ルルーの思いやりに救われたヨナは戦争で傷ついた人達の為にもルルーの思いやりは必要だと感じている。それを強くルルーに訴え、ヨナの言葉にルルーは笑顔で返答をする。


 そして無事に森を抜けた。

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