魔物ゴズ

 ホセは自らが前面に立ち魔物を引き付け、プラナは後方から魔法で攻撃するように告げると、プラナはそれに応えると共に、マリンの為にもホセを死なせないと言う。


 その様子を見て獣人の魔物が言葉を発する。


「ふん、たった2人で我ら相手にどこまでもつかな、お前達行け!」


 魔物がそう言うとシルバーウルフ達がプラナとホセに襲い掛かろうとするがシルバーウルフの動きを見切り、プラナが火の魔法を放ち、魔物達を焼き尽くす。


 多少の撃ちもらしはあったものの、ホセがシルバーウルフの隙を突き、剣で斬っていき、見事に撃退をする。


「ほう、男の方はともかく、女の方は相当戦い慣れているな、いたずらにシルバーウルフを失う訳にはいかん、ならば……」


 獣人の魔物はそう言うとゆっくりと歩き出し、プラナ達に言い放つ。


「人間共よ、この俺が自ら相手をしてやろう、光栄に思うがいい」

「そうやって人間をみくびりやがって、後悔すんなよ」


 ホセがそう言って魔物に斬りかかろうとするが、プラナは制止の言葉を投げかける。


「待って下さい、その魔物にはむやみに斬りかかっては……」


 プラナの言葉が届かないホセは獣人の魔物に斬りかかるが、魔物は自身の携えていた剣を抜き、ホセの剣戟を受け止め、言い放つ。


「そういえば自己紹介がまだだったな、俺の名はゴズ、魔騎士であらせられるアルド様の従士たる存在だ。俺の剣で死ねることを光栄に思え」


 そう言ってホセの剣をはじき、ホセを斬りつける。ホセは剣をかわそうとするがかわしきれずに左足に剣がかすってしまい、負傷してしまう。


「ぐわーーーー!」


 叫ぶホセに対しゴズは言い放つ。


「上手く命拾いをしたようだが、かえって苦しみが増えたようだな、だが安心しろ今楽にしてやる」


 上手く足が動かないホセにとどめをさそうとするが、火の魔法が飛んできて咄嗟にゴズはかわす。


 その魔法を放ったのはプラナであり、ホセの前に立ちホセに告げる。


「辛いでしょうけど、そこを動かないでください!助けが来るまであなたは私が死なせません」

「何を……言ってるんだ、俺を守りながら戦う……なんて……無理だ……今からならあんただけでも逃げろ……」

「いいえ、きっと私の兄ならあなたを見捨てず最後まで戦うでしょう、それにあなたはマリンちゃんのお兄さんです、あなたを見捨てて逃げたらマリンちゃんに顔向けできません」

「だけど、俺はあんたを追い出そうと……」


 ホセはやはりプラナに対して言い放ったことに負い目を感じていることを言おうとするがプラナが言葉を遮り言い放つ。


「今はただ、あなたと子供達を守る。それが私の務めです」


 たった一人でも守りながら戦う、それはスップの兵団や兄であるギン達がきっと来る、そう信じるからだ。

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