意外な訪問者
かつてはトッポックス領主に仕えていた兵達が、領地接収の際にそのまま代官の指揮下に取り込まれ、代官が屋敷より出ていき、ヨナにグラッス国王を欺いた逆臣を討つ機会を与えて欲しいと懇願し、ヨナはその申し入れを受け入れる。
「じゃあ、また必要な時に指示を出すから、それまで休んでいて」
「はっ!では失礼します」
兵がそう言って部屋から出ると、ウィルがヨナに兵について尋ねる。
「いいのか?あいつら1度はお前の親父さんを見捨てたんだぞ、また俺達の旗色が悪くなったら寝返りはしなくても逃げ出すかもしんねえぞ」
「父さんを見捨てたことはあたしに責める資格はないよ。あたしもそうしたからね」
「それはお前に事情があったからだろ!」
「あいつらもそうだよ、それに逃げるつもりならわざわざここに戻って来やしないよ。だからあいつらが力を貸してくれるならあたしはそれを信じたい」
ヨナが強く言い放つとウィルは黙り、更にジエイがウィルに対し言い放つ。
「自らの過ちに気付いたからこそ、こうしてヨナ殿や領主殿の力になりたく戻って来たのでしょう。ならばヨナ殿が領主の娘としての器を示さねばならないでしょう」
「まーーー、お前達がそこまで言うなら、俺は言う事はねえけどさ」
ウィルがそう言うと、ヨナは傭兵に声をかけている。
「今度は領民の人を呼んできてよ」
「分かりやした」
そう言って傭兵は外でヨナと話すことを希望している領民を呼んでくる。
しばらく待っていると領民の女性がヨナに声をかける。
「お久しゅうございます、ヨナ様」
「……もしかして、ニー?」
「はい、ニーでございます」
ニーと名乗る女性の事が気になったミニルはヨナに尋ねる。
「ねえ、ヨナ……様、こちらの方は誰、どなたですか?」
「彼女はニーっていって、あたしの侍女だった人だよ」
「このような事を申してよいか分かりませんが、正直ニーはヨナ様はもう2度とグラッスへお戻りにならないと思っておりました」
「それは……」
ニーの言葉にヨナが戸惑っていると、更にニーは言葉を続ける。
「グラッスではお辛い記憶の方が多いので、プレツの方と国を出た時にはこのような日が来ると思ってはいませんでした」
「ニー、あたしはグラッスが帝国と戦争をしようとすることは間違いだと思っているからそれを止めたい。それにトッポックスも父さんとフランツに返してあげたい」
「ヨナ様、ご立派になられて、それだげでニーはうれしゅうございます」
この日ヨナは思った。父以外にも自分の事を考えてくれる人がこの国にいることを、そしてそれがよりヨナの思いを強くする。
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