擬態する魔物

 ルドルフ、ルードが兵を指揮し、城外へと他の領主達に現在の状況を伝えに向かった中、ギガスがギン達に言葉を発する。


「では先程も言った通り、反帝国同盟に所属する国には正式な使者を送ろう」


 ギガスの言葉にルルーが反応をする。


「よろしくお願いします。我々も対魔族の協力体制を強めるよう各国に働きかけます」

「まずは魔族共の動きを抑える、全戦力が帰還次第、我らも魔族討伐軍の編成を急ぐ」

「はい」


 ギガスとルルーがやり取りを終えると、魔術師の1人がギガスに接近する。


「陛下、少しよろしいですか?」


 魔術師の接近にギガスより先にエンビデスが反応をする。


「お前は確か、ルホール地方の魔術師では、ルドルフ達と共に参ったのではないのか?」


 その魔術師からある違和感を覚えたエイムがギガス達に叫びだす。


「気を付けて下さい!その人、人間じゃありません!」


 エイムがそう叫ぶも、魔術師より魔法が放たれ、ギガスに直撃し、ギガスは腹部中心より出血し、その場に倒れる。


「へ、陛下ーーーー!」


 カイスが叫びながらギガスに駆け寄り、ギガスに声をかける。


「大丈夫ですか⁉陛下!」

「う、ううう……」

「陛下に治癒魔法を!早く!」


 カイスの呼びかけにルルーは駆け付け、ギガスの出血具合を見て絶句する。


「……!」

「どうした⁉早くしろ!」

「ダメ、これほどの出血は止めるだけで精一杯よ」

「何だと⁉」


 ルルーがギガスの治療にはもはや自身の魔法でも完治は不可能であることを告げると、エンビデスが魔術師に尋ねていた。


「貴様、一体何者だ?エイムは人間ではないと言っていたが」


 その魔術師の方向とは別の方向から声がし、ギン達も反応をする。


「ふっふっふっ、魔力を消耗し、魔力の感知の精度が落ちていると思いましたが、少し接近し過ぎましたかね」

「この声は……」


 ギンが目にした先には以前戦ったブリックとピッキーがいて、声を出す。


「ブリック、ピッキー!何故お前達がここに?」

「ふふふふ、あなた方が衝突したという情報を得ましたので、勝利した方をそのまま始末しようかと思いましたが……」

「あんたらが会談なんてしちゃうもんだから、少しだけ予定を変えたんだよ」

「予定を変えただと」


 ギンがそう言い放つと先程の魔術師が人間の姿から、獣人と言っていい魔物の姿になり、剣らしき武器を装備していた。


「この俺の能力を使えば、情報集めなど造作もない。もっとも、魔力の擬態は難しいからこの城からは離れなくてはいけなかったがな」

「お前は一体⁉」

「俺の名はアルド、魔族一の剣豪であり、擬態能力の使い手だ」


 新たに現れた魔物、アルド。魔族との全面戦争の前哨戦が始まるのか?

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