それぞれの思い

 ピトリ国女王に対し、反帝国同盟を願い出たが断られてしまったムルカとルルーはピトリの王宮をあとにし、ギン達が待つ王都の広場へと向かっていき、ギン達と合流する。


 最初にルルー達に声をかけたのはブライアンであった。


「おっ、旦那、ルルー、どうだった?」


 ブライアンの問いに対しルルーが結果を報告する。


「結論から言うと同盟は断られたわ」

「何だそりゃ?まさか既にこの国は帝国の手に落ちたのか?そういやあいつらをやたら見かけたな」


 ブライアンの言葉を聞いてヨナが一言入れる。


「落ち着きなよブライアン、もしこの国が帝国の属国になっていたらあたしらも簡単には入国できないだろう」

「あ、そっか。だけどどうして同盟を断ったんだ?」

「うん、実は……」


 ルルーはピトリ女王が帝国に魔族の情報を提供しており、帝国がその情報をもとに魔族討伐をしていることをギン達に話した。


 その話を聞き、ブライアンが反応を示す。


「魔族退治をするのはいいけどよ、あいつらは人間とも戦っているんだぜ、それは見過ごすのか?」

「女王もさすがにそこまでは肯定しなかったわ。だけど彼らも彼らなりのやり方で世界を守ろうとしていると考えているようだわ」


 ルルーの言葉に対し、ヨナが女王に対する不満を漏らす。


「こう言っちゃあなんだけどさ、女王様はあんまり世界の情勢が見えてないんじゃないの?あたしからすりゃあ帝国はいろんなものを奪うでっかい盗賊みたいなもんだとしか思えないよ」


 ヨナの発言にウィル、ミニルが同調する。


「俺もそう思うぜ。あいつらは奪う事しかしてねえじゃねえか」

「私もそう思う。あの人達のせいで戦争に巻き込まれた人も多くいるのよ」


 ヨナ達の発言を聞いて、ルルーが女王の強い言葉を伝える。


「でも女王は帝国が支配欲や我欲に溺れるようなことがあれば、私達と共に帝国を討つと宣言したわ」


 ルルーが放った女王の言葉を聞いてギンは自らの考えを述べる。


「ピトリ女王は帝国にこの世界の命運を託す。そういう覚悟なのかも知れない」


 その言葉を聞いてエイムがギンに尋ねる。


「どういうことですかギンさん?」

「さっきのルルーの話のなかにウイブ教団が魔族の台頭を知ったとあった。ピトリにはそこまでの軍事力がないから帝国に託した。そういうことなのかも知れない」


 ギンの言葉を聞いて、ヨナが違った考えを話す。


「でもさあギン、あいつらが他の国を攻めているのも事実だし、領地拡大の野心だってあるんじゃないの?」

「女王もそこは肯定していない。だがそれでも帝国に託すという苦渋な思いだと感じた」


 帝国の真意が見えないギン達。だが帝国との更なる衝突の時が近づいていた。

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